落ち着いた日々
イベントが終わりひと段落がついた頃、学校でも一旦の終わりを迎えようとしていた。
「今日から三者面談が始まるから、覚悟しとけよー」
一学期終わりのイベント、三者面談の期間だ。これが終われば夏休みが始まるという高揚感と共に、成績が返される絶望を味わえる珍しい期間である。
しかし、今の期間は早く帰ることができるということもありゲームの時間が増えるためありがたいと思ってしまう。
午前で授業が終わり、早速FTOを開く。
カプリス:やっぱり早く帰れるのは最高だな
ルーナ:そうですね!
マール:あの枕の使い道がなくなったのは残念だけどね
カプリス:まあ、昼食を食べる前に学校が終わってしまうからな
ルーナ:ゲームの時間が増えるのは嬉しいですけど、そこは残念ですね
俺は内心ほっとしているものの、二人はなんだか不服そうだ。
メサイア:おおー、お前ら!
二人とチャットしていると、見知った名前がチャット欄に出てくる。
カプリス:おーメサイア! なんだか久しぶりな感じだな
メサイア:最近忙しくてなかなかログインできてなかったんだよな
素材集めの最後の日以来、メサイアとは会っていなかった。それまで毎日のように会っていたため、数日会っていないだけでも久しぶりの感じになる。
ルーナ:素材集めのこと改めてありがとうございました
マール:お披露目会も来れたらよかったんだけどね
メサイア:俺も行きたかったんだけど急な用事が出来ちゃったからな
カプリス:今からでも作った家具見に行くか?
メサイア:いいのか!?
カプリス:もちろん
手伝ってくれているのに家具を見せない理由もない。俺たちはメサイアをギルドハウスへ案内することにした。
メサイア:色々とクセが強いな……
全ての部屋を見終わった後、メサイアはなんだか疲れているようなチャットを送ってきた。
カプリス:まあ、わかるぞ
マール:うんうん、カプリスのとかね
カプリス:いやいやって言いたいところだけど、クセが強いのは認めざるを得ない
メサイア:それもそうだけど、一番は枕だろ
カプリス:だよな!
俺の感性がおかしくなかったのだと証明された瞬間だった。
ルーナ:そうですか?
マール:ちょっと変かもだけどそこまで言われるほどじゃないでしょ
カプリス:いやいや、明らかおかしいからな
現実ですら全く見ないのに、ゲームで用意してくる人なんて初めて聞いた。しかも体験してるのが俺自身。明らかにおかしい。
メサイア:ああ、イチャイチャしてるのは知ってたけど、あそこまで行ってるとは……
マール:もっとイチャイチャしないといけないじゃない
ルーナ:結婚するためですから!
メサイア:あれ以上するなんてすごいなぁ
マールとルーナの強気な発言にメサイアは少し驚いている様子だった。
カプリス:メサイアもこう言ってるんだしもう少し抑えてもいいんだぞ?
ルーナ:いやです!
マール:いやよ!
カプリス:否定が早いって!
俺が送って数秒も経たないうちに返信が返ってきた。こいつら俺が何言うかわかってたんじゃないかってレベルで早いな。
メサイア:これで結婚してないって言い張るつもりか?
カプリス:言い張るも何も結婚してないしな
メサイア:結婚してないとは思えない仲の良さだけどな
マール:結婚はどちらか選ばないといけないしね
ルーナ:マールより私の方がいいと思うんですけどね
マール:そんなことないわよ!
メサイア:なるほどな……
納得したような相槌を打っている。これで俺の気持ちも少しはわかってくれたに違いない。
メサイア:大変そうだけど見てる分には面白いからなんの問題もないな!
カプリス:おい!
前言撤回。からかうのが大好きなだけの野次馬男だと言うことを忘れていた。
カプリス:それにしてもメサイアがこんな時間にいるなんて珍しいな
前にメサイアに高校生だと聞いていた。そのため、こんな時間にログインしても大丈夫なのかと心配になった。
メサイア:それはお互い様じゃないか?
マール:まあ普通はこの時間、学校なり仕事なりしてるものね
ルーナ:この時間にいないのは当然と言えば当然ですけどね
確かにそうなのだが、このネトゲ界隈は闇が深い。働かず、一生ネトゲをやっているような輩だっている。だからこそ、人のログイン事情というのは少し気になるものだ。
カプリス:まあ、俺らは普通に学校が早めに終わる期間だし、集まってやってるだけだからな
メサイア:おおー奇遇だな! 俺の学校も夏休み前だからって早めに終わってるぞ!
カプリス:なるほどな!
確かに、どこの学校も今は夏休みに向けて早めに終わっているか。
カプリス:それなら前言ってたオフ会ができるんじゃないか? 結構時間があるだろ?
マール:たしかに!
ルーナ:時間があって暇なくらいですよ
メサイア:ちょうどいいな! やるか!
本当にふとしたタイミングでオフ会のやる日が決まっていった。




