念願の家具
カプリス:それじゃあ、それぞれ必要な素材は持ったか?
マール:ええ
ルーナ:はい
カプリス:それじゃあ各々作り終わったらまた集合ってことでいいな
マール:りょーかいよ、いやー楽しみだわ
ルーナ:早く作りたくてうずうずしてます!
俺たちは言葉を言い残して、自分たちの部屋に向かった。
それにしてようやくベットとタンスだけのという殺風景な部屋からおさらばできる。
元からベットとタンスだけは設置されていたのだからもっと早くに色々な家具が作れるようになってよかったのではないかと思う。
まあそんなたらればを言っていても仕方ないな。早速作っていくか。
まずは最初から気になっていた聖剣だ。柄の部分は青く、所々に赤い宝石が埋め込まれている。そして剣の中心に金色の模様が刻まれている。なんでかっこいいのだろう。
このかっこよさに加えて能力向上が出来るのだから最高すぎる。
『竜殺しの聖剣を作製しますか?』
はい いいえ
もちろん「はい」を選択する。すると辺りが明るく発光しその光の中心から聖剣が姿を現した。
「おお……、これが……!」
思わず声が漏れてしまった。苦労して手に入れた分より嬉しさが際立っている。
殺風景な部屋に佇む聖剣。それも良いが、俺が作りたいものはまだ残っている。
次は中世ヨーロッパに存在していたであろうと感じさせる厳かな机と椅子。
アンティーク調の机と椅子でどこかで見たことがあるのではないかと錯覚できるほど創作の世界ではよく出てくる家具だ。
この椅子に座り、この机に肘をついて考え事をするだけでも絵になるだろうと感じさせる。
『教会の机を製作しますか?』
はい いいえ
『教会の椅子を作製しますか?』
はい いいえ
両方ともに「はい」を押して聖剣と同じように発光して現れる。
うん、めちゃくちゃ良い。これを部屋の隅に配置して完成だ。
今まで殺風景だった部屋に、たった三つの家具が増えるだけでここまで変わるのかと驚いてしまう。やはり家具は大事だなと思っているとチャットが飛んできた。
マール:何してんのよ!カプリス
ルーナ:カプリスさん遅いですよ
もうとっくに二人は終わっていたらしく、急かすようなチャットであった。
カプリス:ごめんごめん、思わず感動しちゃってさ
ルーナ:ということはできてるんですね?
カプリス:ああ、バッチリだ
マール:なら、最初はカプリスの部屋の紹介でいいわよね
カプリス:ああ、そうだな。それだとありがたいかも
そのチャットのすぐ、二人が俺の部屋の前に来た。
カプリス:ふっふっふ
マール:何よその奇妙な笑い方は
カプリス:俺の完璧に出来上がった部屋を見るがいい
ルーナ:様子が変ですよカプリスさん
二人に色々と言われているが今は関係ない。二人もこの部屋を見れば感激するに違いないのだから。
カプリス:これが俺の新しい部屋だ!
そうチャットを打ったあと、扉を開けた。当然、扉の向こうには先ほどレイアウトされたばかりの部屋が広がっていた。
ルーナ:うわぁ……
マール:うわぁ……
俺の部屋を見た二人は何故か幻滅したようだった。
カプリス:何でそんな反応なんだよ!
マール:だってこんな部屋中学2年生でもそうそう考えないわよ
ルーナ:これわざとやってます?
カプリス:なっ……せっかくのゲーム内なんだから厨二くさくてもいいだろ!
マール:別に悪いとは言ってないけど
そう言いながらも絶対悪いと思ってるやつだこれ。そりゃあ多少厨二くさいけど、これがいいところでもあると思うんだよ。
カプリス:どこがそんなに厨二くさいんだよ
ルーナ:迷うところもなく、真ん中においてある聖剣ですね
カプリス:でもこの聖剣かっこいい上に、能力まで上がるんだよ
マール:聖剣も多少悪いけど、置いてある場所が問題よ。何でRPGみたいな置き方にしてるのよ
カプリス:そりゃあ神々しく見せるためだよ
ルーナ:机の横とかに置いた方が本物の勇者感とか出そうですけど
それもありだなって思ってしまった自分が情けない。
カプリス:いくら言われてもこれだけは変える気ないからな
断固と俺はこの配置を変えることはない。聖剣が来ると決まった時からずっと真ん中に置くって決めてたんだ。
マール:これは結婚したら私がレイアウトしなきゃいけないわね
ルーナ:その役目は私ののだからマールには関係ないよ!
マール:いーや、私のよ!
カプリス:どっちかと結婚するのは確定なのか……
マール:当たり前じゃない!
ルーナ:そうですよ!
いまだに忘れられていない、結婚願望には驚かされる。まあ、結婚する気はないが、もし結婚するとなってもこのレイアウトは譲らない。
カプリス:まあ、今はこのケンカは置いといて、二人の部屋も見せてくれよ
このまま続けられても埒が開かないので一旦話を部屋のことに戻す。
マール:そうね
ルーナ:この話はいつでもできますし
俺の提案に二人はひとまず落ち着いたようだった。
マール:じゃあ私の部屋から案内するわ
俺はそんな自信満々なマールの後ろについて行った。




