学食
やっと午前の授業も終わりだ。長年引きこもっていた康弘は体力的な疲れを感じていたが、空腹がそれを勝っていた。
「飯だ。」
「おい、バカ。奢れよ。」
ミスズが語気を込めて言う。
「なんでだよ? 魔法かけた情けか?」
「あたりめーだ。バカ。誰のおかげで英語ができるようになったんだよ。」
「わたしもご一緒させてくださいにゃ。」
小さな猫耳のヒトミちゃんもついてくるという。
「ヒトミちゃんもくるならしょうがないな。みんなに奢るよ。」
よし、みんなで食堂へ行こう。少人数な大学にあって小さいながら欧州風のガラス張りの食堂に3人で入っていった。中にはもう新入生たちであふれ返っていた。
メニューをみると、パスタ、どんぶり物、麺類、カレーといったものが並んでいたが、品ぞろえは決して豊富でなく、量も少ない感じだ。きっと女の子が多いから、量が少ないのだろう。ヘルシー食なるものもメニューに並んでいた。
さっそくヒトミちゃんが。
「わたし、ヘルシーパスタがいいにゃ。」
「ところで『にゃ』ってなんだよ。猫なの?」
「テール族は猫の仲間なんだよ。『にゃ』っていってなにがわるいのにゃ。」
小さい猫耳をプルプルさせながら、メニューを指さしているのがかわいい。
「あたしは、ワンタン麺がいいな。」
「うさぎなのに麺たべるのか。野菜食えよ(笑)」
「うさぎじゃねーよ。バカ。ワンタンが好きなの。」
ウサギ耳をピンとたてて怒る仕草をする。
「じゃあ俺はカレー。」
ひきこもりのころ、いつもカップ麺やらレトルトカレーを食べていたから親しみがあるのだ。
三人で1つのテーブルを確保し、丸くなって頼んだ料理を運んでくる。
ひとみちゃんのヘルシーパスタ。なんか緑っぽい麵に青い粉が降りかかっていいて中にキノコが混ざっている。
「うーん、なんかヘルシーっぽいね。ナポリタンみたいのがおいしいと思うんだけどな。」
「これでいいにゃ。猫はたべものに文句言わないのだ。太ったらバランス悪くなるしね。」
「このワンタンちいさいな。食べ応えがないぞ。」
「うさぎには十分だろ。そもそも麺やスープはおいしそうじゃないか。」
「うさぎって呼ぶのやめろよ。バカ。まぁたしかにスープはまぁまぁだなぁ。」
「俺のカレー、なんかおしゃれ、いつも食べてるレトルトカレーよりもいっぱい具が入っている。」
グリーンピースや黒豆やら豆類がたくさんはいってる。結局これも『ヘルシー』カレーじゃないか。
食事も済ませて、気になるところを聞いてい見た。
「なんか耳のある子とない子がいるじゃない?」
ワンタン麺を平らげたミスズが言う。
「あぁ、テール族とヒューマン族ね。この世界には猫耳の女と、あんたみたいな人間の男女。二種類いるんだよ。」
「へー。男はみんなヒューマンなんだ。」
「そう。結婚して子供出来ても女の子の一部は猫族なんだよ。」
「なんか不思議な世界ね。なんでミスズはウサギ耳なの?」
「私が知りたいよ。まじでこれコンプレックスなんだからね。本当はもっと小さいんだけど、突然変異で耳がでかいのよ。あーまじ、うざったい。」
「かわいいにゃ。ミスズちゃん。お耳大きくてよく音が聞こえそうだにゃ。」
「あんたとかわんねーよ。背が高いか低いかと一緒だ。」
「いや案外、よく聞こえてるかもしれないぞ、飾りじゃないのは間違いない。バニーガールの衣装きたら、まじ本物に見える。」
「ぶっ殺すぞ、てめー卑猥な目でみやがって。」
「いやいや、そんな目でみてないよ。かわいいよ、ミスズちゃん。」
「うんうん、かわいいにゃ。ミスズちゃん。」
「ちっ。なんか気に食わないけど、がまんしてやるよ。」
その後、食事を平らげ午後の授業を待つのであった。
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