オリエンテーション
次の授業まで15分ほどの休憩時間だ。
「オリエンテーションってなに?」
隣にちょこんと座っているミスズに聞いてみた。
「バカね~。これから学校の紹介をしてくれるのよ。どのように授業をとったらいいかとか、図書館の使い方とかおしえてくれんの」
「授業って決まってるんじゃないの?」
「うちの大学はリベラルアーツっていって選択制の授業が多いのよ。だから最初の1年は英語のクラスがあるけど、あとは自分で授業をとって単位をとっていくのよ」
「へー。結構面白いな。自分で好きな授業をとれるならなんか簡単そうだな」
「それが、先生よっては結構厳しいみたいよ。授業によっては3回欠席したら即『E』すなわち落第ってことね」
「それは厳しいな。まぁその授業を取らなきゃいいってことだろ」
「三年生になったらメジャーっていって自分の専攻を決めなきゃいけないんだけど、そしたらその分野の授業をとらないと卒業できないから、厳しい先生に当たる可能性もあるわよ」
「うげー。それはまずいな」
休憩時間も終了し、オリエンテーションが始まった。先生がハイヒールをツカツカと鳴らして教室に入ってきた。
「さぁみなさん、図書館に移動します」
先生につれられて、図書館に移動した。すると、ヒトミちゃんがはなしかけてくれた。
「10年勉強していたのですから、いろんな本をお読みになったとおもいますけど、なにかおすすめの小説ってありますにゃ?」
ヤスヒロは少し考えこんで。
「いや、本なんて読んだことないよ。1冊もない。毎日パソコンでゲームしていただけだよ」
「わたしはね。本読むの好きなんです。本を読んでる時間が落ち着くにゃ」
「ヒトミちゃんは本好きなのか。俺も大学生になったからには本を読まないといけないね」
「うふふ。ぜひ読んでみてください。図書館にはきっとお気に入りの本がありますにゃ」
図書館の内部へ移動すると。
なんかせわしく機械が【ウイーンウイーン】と動いていた。
『本を検索して貸し出しを押すと機械が地下の書架庫から自動で運んできてくれます』
大量の本を一般の書架に並べるには大きなスペースが必要だ。それを省いて効率的かつ保存も効きやすい書架庫に並べているらしい。
「おもしろいな。俺もすこしエッチな本とかいっぱい借りたいな。普通の本は読む気がしないけど」
「バカヤスヒロ。大学にエロ本があるわけねーだろうが。資料として借りたり、自己研鑽のために読む本が並んでるんだよ」
ウサギ耳が横やりをいれてきた。こいつ結構しつこくかまってくる。
「冗談で言っただけだよ。もちろん勉強するさ、アハハ」
「冗談っぽく聞こえなかったぞ、どうせエロ本しか読んだことないんだろ。バカ」
「くっ。ばれたか」
クラスのみんながくすくす笑っている。また俺の汚名が増えた、無駄なことでどんどん有名になっているじゃないか。これじゃあ単なるネタキャラだ。俺はネタで大学生になっているわけではない。
嘘か本当かわからないが、『命』かけて大学生やっているんだ。額の汗をぬぐっていると、先生が言う。
「はい、図書館オリエンテーションは終わりです。各自いったん解散。お昼休憩にします」
カツカツとハイヒールの音を鳴らしながら、先生は出て行った。
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