必修単位落とす
秋学期の授業は体育のかわりに保健の授業がある。体の構造だったり、組織の成分だったり、性差だったりを学ぶ、あの授業だ。特段学ぶ価値はないように見える授業だが、本学では全1年生が学ぶ必修授業である。
「なんか、保健の先生厳しいらしいよ」
ミスズが情報を根回ししてくれる。
「おまえ、バカだから単位落とすかもな」
笑いながら康弘をおちょくる。
「なめんな、性のことならお前より何倍も知ってるわ。エロ本何冊読んでると思ってるんだよ」
「バカ、エロ本のことなんか1つも出やしないよ。タンパク質とかアミノ酸とか人間の骨格の部分とか、そういうのがテストにでるんだよ」
「そんなもの簡単だ。無勉でチャレンジしてやる」
「バカが。うぬぼれやがって、落としたら、来年もやるんだぞ? 1年生と一緒にな」
クラスのみんなは必死にノートをとって暗記している。授業は大教室で行われていたため、出席をとっていなかった。それをいいことに康弘はすべての講義を欠席していたのである。
「誰か、ノートを見せてくれ。頼む」
必死の形相でクラスメイトに懇願する。それを見かねた皇女アマネちゃんがノートをコピーしてくれた。
「もう時間がないですが、これを見て勉強してください」
「ありがとう、皇女様。やはりウサギ耳と違って品がありますね」
しかし、残された時間はわずか。そもそも康弘には暗記という作業が苦手だった。いくらノートを見ても覚えられない。怠け者のニートに試練が訪れたのだった。
「だめだ、まったく覚えられない。当たり前だ。勉強なんてやったことないんだから。記号問題に賭けるしかない」
康弘は絶望の中、テストの始まる時間を待つばかりだった。
大教室に集まり、テスト用紙が配られる。座席は出席番号順であった。
「だめだ、近くに誰も知り合いがいない。必殺のカンニングをするしかない」
しかしながら、席と席の間に大きなスペースがあり、とても隣を見られるほどの距離はない。康弘は神に祈り、裏返ったテストをめくった。
テスト内容は、もちろん基本に沿った暗記物であったが、すでにノートの記憶は飛んでいた。
「くっそー。やけくそだ。」
わずかにある、選択式の問題にすべて『a』に記入し、あとは白紙で提出せざるを得なかった。頼みのミスズも知らん顔。
「来年も頑張れよ。覚えるだけの問題だ。簡単な努力だよ」
ミスズはこういうと颯爽と教室から出て行った。
後には頭が真っ白になり、来年も同じテストを受けなければならない康弘が誰もいなくなった教室にぽつんと取り残されていた。
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