学園祭の準備はじまる
本学の学園祭は10月に行われる、そのため各サークルは催しものために準備をしているところだ。皇女アマネちゃんが所属するダンスサークル『スムーザーステップ』もこの夏休みの間に練習を重ねているところであった。
フライングディスク部の練習の帰り、ふと部室が集まるD館を訪れると、アマネちゃんにばったりと出くわした。
「あら、ヤスヒロさん。元気ですか」
「アマネちゃん、ごめんね。仮入部以来、姿を見せなくて」
「いいですよ。私たちは部員の数も多いですから。少し、お時間あったらいいですか? 少しだけ相談があるんです」
「いいよ。ダンスはできないけど、話だったらいくらでも聞くよ」
「ありがとうございます」
誰もいない学食の隅に陣取り、コーヒーを飲みながら語ることにした。
「実は、学園祭で私を売りにするため、センターで起用しようという話がでているんです。」
「いいじゃん。目立つけど、やりがいあると思うよ」
「わたしはまだ初心者です。ただ、『皇族』であるという理由だけで、前に出されている気がするのです。わたしはみんな平等に扱ってほしいのです」
「そうだね、確かに違和感あるよね。踊りのうまい年長者が真ん中に立つべきだよね」
「そうです。ですから、康弘さんにお願いがあるのです。わたしには一定の取り巻きがいて、なかなかわたしの意見が通らないのです。有名人である、ヤスヒロさんが言ってもらえれば状況は変わると思うんです」
「分かった。部の人たちに一言いってみるよ。最初は端っこでやりたいってことでしょ?」
「はい。よろしくお願いいたします。お話を聞いてくれてありがとうございました」
康弘はダンス部の部室に乗り込んだ。
「すいません、仮入部しているヤスヒロと申します」
すると、部長が偶然部屋の中にいて、言った。
「おう、ひさしぶり。本入部する気になった?」
「いえ、別の話です。ちょっといいですか?」
「いいよ、何の話?」
「実はアマネちゃんの話なんですが、彼女、学園祭のセンターをやりたくないと言っております」
「あら、そうだったんだ。気が付かなった。ただ、部員の男子たちが推すのよね。彼女ことを」
「そうだと思います。ですから、彼女の中々言い出せなかったのだと思います」
「わかったわ。善処します。ありがとう」
部長と話をつけて、アマネちゃんの元へ向かう。
「善処してくれるってさ、よかったねアマネちゃん」
「ありがとうございました。これで気にせずダンスに打ち込めます。よかったら、一緒に踊りませんか?」
「え?いいけど、俺初心者だよ?」
アマネはグイっと康弘の腕をつかむとステップを踏みながら踊りだした。
「私のリズムを真似てください。結構楽しいですよ」
皇女様と手をつなぎ、一心不乱にステップを踏むヤスヒロ。鏡でみるとずいぶんと不格好だが、彼女のぬくもりが暖かく、リズムに乗る一体感がとても心地よかった。
「もしよかったら、また一緒に踊ってくださいね」
「ありがとう。楽しかったよ」
ダンス部も結構面白いと思いながら、帰路つく康弘。傾く太陽を背にチャリを漕ぐ姿は大学生活を謳歌しているそのものであった。
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