最後の水泳の授業
本日は、最後の水泳の授業。男子にとっては最後の宴。女子にとっては最後の修羅場。いずれにしても思い出に残るものだろう。
各自着替えて、プールに出ると、先生が出てきた。
「今日は最後の水泳です、ゲーム方式で水球をやります」
「えぇぇ。す、水球?」
「やったことないぞ」
「ハンドボールみたいにゴールに玉をいれるんだよ。水の中でな」
みんながざわつくなか、先生が促す。
「足のつく水面でやりますので、溺れる心配はありません。各自、楽しんでください。男子チームと女子チームに分かれてやります。女子の人数が多いのはハンデです。よい点数のチームに成績を加点いたします。頑張ってください」
男子チームと女子チームで別れた。各々ポジションを決めるためだ。
「ヤスヒロさん、ゴールキーパーお願いします。年長者なんで」
「賛成」
男子諸君の多数決で俺はゴールキーパーを務めることになった。
「いくら女子が多いって言っても、男子が勝つだろ。体力も違う。玉なんて1つもくるはずはない」
康弘は高をくくって、水の中に入った。
対して女子チームはなにやら円陣を組んでいる。勝つ気満々のようだ。
「狙いはあの10浪野郎だ!」
ヒトミちゃんが率先して言う。
「ミスズちゃんに玉集めますにゃ。がんがん狙ってくださいにゃ」
なにやら不穏な空気が流れる中各自プールの中に入り、ポジションに着く。
「ピー(笛の音)試合開始」
先生の合図とともに玉がプールに投げ込まれ、これをミスズがなんなくキャッチした。
「てめぇら。いままでの恨みを晴らさせてもらう。喰らいやがれ」
ものすごいジャンプ力で渾身のシュートが打たれた。ボールはまっすぐヤスヒロの顔面めがけて飛んでくる。
「ドカッ!」
ヤスヒロの顔面ブロックが決まり、男子チームは難を逃れた。
「いてぇぇぇぇぇ」
「ざまぁみろ。このドスケベ破廉恥野郎が」
跳ね返ったボールは再び女子チームへと渡る。
「ミスズちゃん、今度はきめるにゃ」
ヒトミちゃんが絶妙なパスを送り、再びウサギ耳がシュート態勢へ。思い切りジャンプしたミスズは、体全体が水面から飛び出るほどのジャンプシュートをゴール右隅に放つ。
「ゴール!」
女子チーム1点先制。そもそもテール族の混ざる女子チームは異次元の強さだ。なによりジャンプ力が違いすぎる。チート並みのジャンプでどんどんパスを回し、男子のそれを圧倒的に上回る。勝負は明らかだった。エースのミスズを筆頭に、男子にいままでの鬱憤を晴らすべく、バシバシとボールをぶつけてくる。その最大の的は俺だった。
最後のほうは水の中に潜って息を潜めるヤスヒロ。
「30対0で女子の勝ち!」
試合終了の合図が鳴り、圧倒的大差で敗れる男子。
「試合結果は、成績に反映します。お疲れさまでした」
「やったー」
女子たちが歓声をあげる。対して、うなだれて帰る男子たち。
最後の水泳は決して男子たちの楽園ではなかったのだった。
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