待ちに待った水泳の授業
あの日から一週間、待ちに待った水泳の授業が来た、海パンを片手に悠々とプールに向かう。女子たちも青ざめた表情でやってきた。ほとんどが意気消沈している。男子たちとは対照的だ。
更衣室にはいると男子たちは喜び勇んで着替えている。みんなが笑顔だ。みんなお気に入りの女の子の水着姿を妄想しているのが手に取るようにわかる。
「康弘さんはやっぱりミスズさんのことが気になります? 」
1浪モブが聞いてきた。
「いやーわかる? なんだかんだいって可愛い奴だから楽しみだな」
「そうですよねー」
「君はだれか気になる子いるの?」
「アマネちゃんていうヒューマンの女の子が気になってます」
康弘続けて、問う。
「アマネちゃんて、確か黒髪セミロングの清楚なお嬢様のような子だよね?」
「そうです。なんかグループワークしているとき気になっちゃって。彼女は皇族出身なんですよ」
「それはすごいな。なんかかわいい子が多いから、とにかく楽しみだよね」
水泳の授業が始まった。男子はスパッツのパンツ、競泳水着、海水浴で履くような海パンまで様々いるが、別にどうでもいい。
問題は女子だ。なんかビキニの子から普通のスク水、バレリーナや、全身を覆っている水着まで様々だ。これは非常に興味深い。
ちなみに俺のことをバカ呼ばわりしているウサギ耳は、なんと高校生の時に使っていたと思われる名前の入ったスク水を着ている。
「わはは、お前スク水似合うな」
「うるせーバカ。水着買うのもったいなかったから家にあるやつ持ってきたんだよ」
「うん。まぁ見せものじゃないし、当然の選択でしょ。似合ってるぞ」
「いい加減、変な目で見るのやめてくれよな。みんな恥ずかしいんだからさ」
皇族のアマネ様がやってきた。清楚らしく、ワンピースの水着になにやら羽帽子をかぶってらっしゃる。
「わお、さすがプリンセス」
1浪モブが感嘆の声をあげる。さすがに美しい。まさに女王様にふさわしい水着姿だ。体のラインがまさしく整っていて、それでいて下品らしさがまったくない。自然体そのもので綺麗なのだ。
先生がやってきて、授業が始まる。
「はいそれでは、男女分かれて、25メートル泳ぎます。そのあとみんなで輪になって水中ダンスをやってもらいます」
「おお~~」
男子みんなの喜びの声がひびく。
「きゃあ~~」
女子みんなの悲鳴がとどろく。
「わが世界では、男女がつつましく縁を結ぶのを儀式としております。本学は女子が多く、バランスが悪いですが、みんな仲良く手をつないで水の中で踊ってください。4年間の学習の中でもきっとこのことが生きるはずです」
みんなでゼイゼイいいながら25メートルプールを泳ぎ切った。
先生プールサイドか声をかける。
「サブプールで円形なって手をつないでください」
女子学生が嫌がる中、みんな渋々サブプールで円になって囲んだ。隣はウサギ耳と、『にゃ』が口癖のヒトミちゃん。いや、二人から近寄ってきた様子だった。
「一緒に囲むにゃ」
すると、ミスズがするすると忍び寄ってきて。
「てめーに水の中で沈む魔法をかけてやる。覚えてやがれ」
「こいつ、そのためだけに俺に近寄ってきたのか」
先生が一斉に声をかけるとみんなで水の中に頭を入れて手足を動かし始めた。ウサギ耳が口をぱくぱくさせている。その瞬間、ドスンという重力を感じ水中下まで押しつぶされた。
「なんだこれは。ブクブク。し、死ぬ」
見上げるとウサギ耳が笑みを浮かべている。
「ざまぁみろ。このドスケベ童貞野郎が。水をたらふく飲みやがれ」
「ゴボゴボ、もうだめだ、死ぬ・・・」
その瞬間魔法が解かれ、水面上へと浮上することができた。
「て、てめぇ。あやうく死ぬところだっただろ」
「おまえがスケベなことばかり考えているのが悪い」
ウサギの耳をプルプル震わせながら、勝ち誇るミスズ。
「男は多かれ少なかれ、みんなスケベなんだよ。男心も知らないで」
「女は多かれ少なかれ、みんな恥ずかしい気持ちがあるんだよ。スケベ野郎が」
やっぱり、この女は勝気で絶対折れない。しかし甲斐性というか優しい側面があるのも事実だ。
1浪モブ君は、なんか皇族の子と水かけっこをして楽しんでいた。そこにヤスヒロは乱入し、水をかけてやる。
「この女王様め、かわいいじゃないか。このこの」
「きゃぁ。女王様っていうのやめて、アマネって呼んで」
「アマネめ~おしおきしてやる。喰らえ、水鉄砲」
「いやぁぁ」
そうこう遊んでいるうちに授業もおわりを告げた。
「はい、じゃそろそろプールから上がってください」
また来週も授業しますから準備してきてくださいね。
更衣室にもどると、みんなが一様に笑みを浮かべていた。苦しい受験勉強を乗り越えてよかったという気持ちだろうか。しかも、来週も水泳の授業はある。みんな人それぞれ一様に想いを乗せて、妄想を膨らませているに違いない。康弘もまた、ウサギ耳とアマネのことをが頭に離れないでいた。
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