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doll

作者: 白昼夢 かえで


ゴミをかき集め、雨風にさらされながら、

今日もダンボールの上で眠りにつく。

耳に入ってくる雨水は、妙に冷たく、意識を

夢の中から、引きずり戻す。

雷鳴は、周りにいる人たちまでを、恐ろしい

意識の空間へ誘う。

生きろ。

明日はきっと晴れがやってくる。

そんな言葉、希望の光を微塵も

与えてくれない。

ただ、心臓というポンプ、何者かから作られた

歯車が尽きるまで、働き続ける。

当然、その間は、空腹という欲を求め、睡眠という無駄な時間を過ごし、性欲という

抑えられない衝動が付き物となる。

三ヶ月前、最後に入った風呂の匂い、お湯の

暖かさ、体に染み込む謎の力を思い出す。

服の匂いを嗅ぐ。

鼻につく匂いが、生きているという証拠を、

自分自身に与えてくれる。

明日を生きる苦しさは、今生きている幸福。

コトン、 クンクンクン。

人間という、生き物のピラミッドの頂点に君臨している生物が飼い慣らしている犬という

物体が、今、自分を見下している。

あぁ、私は、人間の中でも底辺に属しており、何とか

人間であるという自覚を、保てていたが、それは、

気持ちだけの問題で、実際は違ったのか。

あぁ、そうか、そうなのか。

犬の舌に乗ったペット用のおやつ。

よだれによってベットリと濡れているそれは、今

私の目の前に落とされた。

犬の目は、あげるよ。と伝えている。と勝手に解釈

した。

「いただきます」

何年ぶりにいっただろうか。

口の中では、今までに食べたことのない味が、

広がっている。

雨水に濡らされた、犬のよだれで生暖かい、

ペット用のおやつの独特の匂い。

全てが加味した結果、それは美味しいと、

判断した。

あぁ、生きている。

不味いものも、生きるためなら、美味しいと

判断する。

これからも食べ続ける際、食べられるように

自分を自分で洗脳する。

さぁ、明日からが楽しみだ。


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