009話
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☆★☆の間は、説明となっています。
◆◇◆の間は、登場人物のパーソナルなどに関わる説明になっています。
▽▼▽の下向きの三角は現実世界の始まり、△▲△の上向きの三角は現実世界の終わりを表しています。
俺はハジメにブラックリストを共有してもらっているので、有名な荒らしプレイヤーは、はじけるから十分だとも言っていたっけな?
「えっと、ゼノンさんよろしくです。じゃぁ、入りますね」
ザ・訓練所! みたいな場所にやってきた。丸太が突き立てられていたり、案山子があったり、的があったりと、小説に出てきそうな訓練所だ。
「おぉ……ここだけ見ればファンタジーっぽいけど、外のことを考えると、古く感じるな」
『それなwww【ファースト】』
『分かる分かるww【ゼノン】』
『初めは、ビックリするよねww初見よろ~』
おっと、知らない人のコメントだ。
「初見さん、よろ~」
進んでいくと、ちょっとガタイのいい女性がいた。
「よく来たな、ゴミ虫! 私がここの訓練教官の担当、セリスだ。名前は覚えなくていい、教官と呼べ」
あまりにも意表を突かれてしまったため、思考がフリーズしてしまった。
「返事もできんのか? お前はゴミ虫じゃなくクソ虫だな! ほら、返事は?」
「えっと、よろしくお願いします、教官」
「声が小さい! そして返事は、サーイエッサー! だ。分かったか?」
「サーイエッサー」
「声が小さい!」
「サーイエッサー!!」
『ワロスwww【ファースト】』
『この設定した人ってドSなんですかね?【ゼノン】』
『ナニコレ、ウケるんですけど』
3人目の人は、初訓練所のようだ。
「よし、返事はいつもそのくらいの声でするように……返事は?」
「サーイエッサー!!」
「では、訓練を始める! 着いて来い」
「ここで始めないのかよ!」
『えっ?ここで始めないの?』
『ネタバレは面白くないからな。フレア、進めよ【ファースト】』
コメントとシンクロしてしまった。
教官について、移動していく。
「ここが、お前を鍛える訓練所だ。まず初めに、武器を持って丸太を攻撃してみろ。そこに立てかけてある中から好きなものを選べ!」
「何にしようかな……」
「返事は?」
「ッ! サーイエッサー!!」
「よし選べ」
「サーイエッサー!!」
小声で、「気を抜くとすぐに怒られるんだな」と言うと、コメント欄には草が生えた。
☆★☆
ネット用語で【w】は、笑いを意味しており、wが沢山書き込まれることを【草が生える】と呼んでいる。50年前とあまり使い方は変わっていない。
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立てかけられている武器は、短剣・剣・大剣・槍・斧・鞭・棍棒・ハンマー・チャクラム等々様々な武器が並んでいる。
大きく分けただけなのであれだが、剣の中には刀もあるしカットラスも、ショテールなどもある。
俺はその中から……薙刀を選んだ。なんとなく、戦国武将と言えば薙刀みたいなイメージがあるのだ。実際に戦国武将が使っていたのは槍なんだけどね。
『まさかのww【ファースト】』
『槍でもハルバートでもバルディッシュでもなく、薙刀とは【ゼノン】』
『このゲームでは、マイナーな武器よね【シェリー】』
おっと、さっきまで名前のついてなかったコメントに名前が付いた。シェリーさんというらしい。
「やっぱり、薙刀ってマイナーなのか?」
『マイナーというか、俺は使ってる奴見たことないな【ファースト】』
『私は1人見たことあるけど、そもそもの話、長物って使っている人少ないよね?【シェリー】』
『柄の長い武器は、大斧くらいしか見たことないな【ゼノン】』
「まぁ、こういうのはフィーリングが大切だよな」
「クソ虫! 何を独り言を言っている! 選んだのならさっさとこっちへ来い、クソ虫!」
「サ、サーイエッサー!!」
「薙刀を選んだのかクソ虫。これから薙刀の使い方を叩き込んでやる!」
そう言って教官も薙刀を持ち、丸太に向かって打ち込みを始める。
「違う!」「腰が入ってない!」「キン〇マついてるのか、クソ虫!」等々、なぜ罵倒されているか分からないまま、30分ほど打ち込みを続けた。
コメント欄では、先ほどの3人以外にも何人かが会話に入り、その様子を見て笑っているのが分かる。
「よし、よくやったクソ虫! お前はこれから、害虫と呼んでやろう!」
え? クソ虫と害虫って、クソ虫の方が下なのか? コメント欄では、俺も疑問に思ったわ~などと、ファーストとゼノンが話していた。俺を置いてコメント欄で会話が成立してる!
「次にスキルについて教えてやろう、害虫」
そう言って、昨日ファーストから教えてもらったことの復讐みたいな形になった。
「では質問だ、害虫。1つの武器に登録できるスキルの数はいくつだ?」
「10個であります、教官!」
「よく覚えていたな、害虫。褒めてやる。では、システムアシストを受けられない行動とは、どのようなものだ?」
「武器とは関係ない行動です、教官!」
「話を聞いていたのか、蛆虫! 武器ではない、戦闘に関係ない行動だ! よく覚えておけ蛆虫。次の質問だ。スキル同士でぶつかった場合、何が勝敗の差を分ける?」
「えっと……武器の優劣、発動スキルの軌道です、教官!」
「そうだ、よく話を聞いていた。同じ武器だった場合は膠着状態が起きるが、武器が違えば必ずどちらかがはじかれることになる。例えば、大斧の振り下ろしのスキルを使った場合、受け止めることは困難だ。クソ虫ならばどうする?」
害虫だったはずなのに、蛆虫だったりクソ虫だったり忙しいな。
「受け止める以外の行動をとります。回避するか受け流すといった行動をとります、教官」
「そうだ。受け止めれないのならば、それ以外の行動をとるしかない。最後の問題だ。スキルの中でも成功すれば、確実に競り勝つスキルが1つだけ存在する。それを何と呼んでいる?」
「防御スキルのパリィです、教官!」
「正解だ、クソ虫。だがよく覚えておけ、防御スキルのパリィは一種類じゃない。いくつもの軌道に合わせたパリィが存在する。登録できるスキルが全てパリィのプレイヤーも存在している。敵の攻撃にあったパリィができなければ失敗するし、相手のスキを突こうと焦れば、食われることになるから気を付けるように!」
「サーイエッサー!!」
『あれ?俺がやったときと、セリフが変わってるな【ファースト】』
『自分もそう思った【ゼノン】』
『俺もちがったわ』
ん? ゲームの流れで、教官のセリフも変わってくるのだろうか?
その後は、アイテムについてのチュートリアルがあり、最後に罠についてのチュートリアルがあった。
罠ってなんぞ? って思ったが、フィールドにはPKの仕掛けた罠があるし、ダンジョンには行く手を阻む罠……トラップエリアがあるらしい。PKがよく使う麻痺罠には特に注意が必要だとか。
PKする時には、近くにいないとアイテムを奪うことができないのだ。だから、殺す罠より動けなくする罠と、引っかかったことを知らせる罠を組み合わせて設置しているらしい。
「今この時をもってお前はクソ虫を卒業した。立派戦士になれるかは、お前の努力次第だ! 他にも武器の扱い方を知りたい時は、また訪ねてこい! 一から教えてやろう!」
そう言われた瞬間、何かに弾き飛ばされたように吹っ飛び、気付いたら冒険者ギルドの入り口付近に戻されていた。
「終わった、のか?」
『終わりだぞ、フレア。お疲れさんw【ファースト】』
『ドM製造機の教官に当たるとは、運がよかったかもしれんな【ゼノン】』
『これだから、男どもは……【シェリー】』
『我々の世界では、ご褒美です!』
『上のコメント、下手したらアカウント停止になるぞ【ファースト】』
「えっと、とりあえず。初心者フレアの活動日記、チュートリアル編が終わりましたので、この辺で配信を終わりにします。ご視聴ありがとうございました。よければ、次回もご視聴いただければ幸いです」
『かたい【ゼノン】』
『リラックス【シェリー】』
『サブイボがでた【ファースト】』
「ファースト、明日覚悟しとけな」
そう言ってから、配信を終了する。
ん~雑談すらほとんどできなかったな。覚えることが多いし、これって配信する意味ってあったのかな?
そんなことを考えていると、ピロリン、とメールが届いた音がする。確認するとファーストからで、俺のホームに来いと一言だけだった。
行き方が分からなかったので、メールで聞くと初めのエリアで扉に触れると、訪れられるホームが表示されるからそこから選んで来いだってさ。
ここはセーフティーエリアなので、そのままログアウトし始め⁉️のエリアへ戻ってくる。そうすると、そこにはファーストが待っており、俺を呼んでいた。選んで入って来いって言ったくせに、「大声で呼ぶな禿げ!」
「禿げてねえよ!」
「あれ? 俺、口にしてた?」
「メッチャ口に出てたぞ」
「そりゃ失敬。で、何の用だ?」
「いや、お疲れさんって直に言おうと思ってな。なかなか面白い配信だったと思うぞ。しかも、教官に当たるなんてな。この情報が拡散したら、お前のログの視聴者数が伸びるぞ」
「え~、そんな奴らに見られて、伸びるのは嫌なんだけど……そうだ、あのログって全年齢で大丈夫なのか?」
「あ~問題ないぞ。確か教官の場合は、15歳以下は言葉がマイルドになるはずだ。年齢で内容が微妙に変化するってすごいよな。マルチギア様様だな」
「そうなのか、すげえな。おっと、そろそろ風呂の時間だから落ちるわ。また明日」
「おう、お疲れさん」
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