002話
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☆★☆の間は、説明となっています。
◆◇◆の間は、登場人物のパーソナルなどに関わる説明になっています。
▽▼▽の下向きの三角は現実世界の始まり、△▲△の上向きの三角は現実世界の終わりを表しています。
俺は、杠葉 焔だ。
【フレア】が俺のアバターの名前だ。プレイヤー名ともいうけどな。
俺は、大学に入ってすぐに、幼馴染に進められてこのゲームを始めた。初めは、趣味のアウトドアグッズの体験のためにいいかな? とか思いながら、1000円の月額料金を支払った。
無料で課金制のゲームが大半を占める中で、毎月1000円はどうなんだ? と思ったが、このゲームを経由して商品を注文すると、割引やポイントが多く付いたりするので、体験できることを含めると……安いと思われる。
軽い気持ちで始めたこのゲームだが、友達に観戦に誘われたある試合を見て、このゲームの戦闘面にも興味がわいた。
それは、コロシアムで行われていた。毎月中ごろに行われている、制限有のトーナメントの決勝戦だ。
武器や防具の見た目は強さに影響しないが、そのトーナメントの中で姫騎士と呼ばれるロールプレイをしているプレイヤーと、黒騎士と呼ばれるロールプレイをしているプレイヤーの戦闘を見て、このゲームの戦闘面に強く引かれたのだ。
2人の試合は……アニメの戦闘シーンのように激しいものだった。エフェクト等派手な演出もあるが、現実世界でもできる動きがゲームとしての基本的な動作になる。ゲームなので1つの動作で動ける距離が長かったり、早かったりするが……
剣による鍔迫り合いから、両者が弾かれるように距離を取る。
両者とも騎士というだけあって、盾を装備しており一気に距離を詰めて盾で押し合う。隙をついて剣で攻撃を仕掛けたりしていると思えば、一定の距離を置き剣と盾で攻防を繰り広げている。
そして、試合が終盤に差し掛かった時、今までの戦闘がウォームアップだったことに気付いた。
スピードが速くなった……とかいう話ではない。無理やり言葉にすると、攻撃の応酬の中で自分の必勝パターンに持ち込むための駆け引きを行い、相手を如何に崩すか、心理戦も含めて試合をしていたのだ。
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このゲームには魔法も銃もあるが、今回のトーナメントは魔法禁止・遠距離武器禁止の制限有という条件での試合である。魔法だけの試合もあれば、武器による攻撃と魔法による攻撃有りの試合もある。
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攻防を繰り広げている中、黒騎士の攻撃が姫騎士の右足にヒットした。
そうすると、姫騎士の動きが急に悪くなる。
この時、フレアは知らなかったが、このゲームは攻撃によるダメージで部位欠損や動作能力の低下起こるのだ。フィールドマップであれば、治療をすることができるが、試合では回復アイテムの使用は禁止されているため、こうなると動きが鈍くなった状態で戦わなければならない。
自由に動ける黒騎士と行動が制限されている姫騎士……一方的な展開だった。後一撃強い攻撃が入れば倒せる程にLP(Life Point)が減った。
黒騎士が試合を決めにかかった。
動きが鈍くなっているところに、盾を前面に出した体当たりをして姫騎士の体勢を大きく崩す。盾を弾かれて大きく体勢を崩し、無防備になった胸に向かって剣を差し込む黒騎士。
「あ~、あいつ勝ちを焦ったな」
隣で観戦していた俺を誘ってくれた幼馴染、斎藤 一、アバター名【ファースト】が呟いた。
その呟きが聞こえるか聞こえないかの刹那に、姫騎士の盾が引き戻され黒騎士の剣を受け流した。
剣を受け流された黒騎士は、大きく体勢を崩し四分の一回転するようにして地面に膝をついた。
無防備になった黒騎士の首を、ギロチンを再現するかのように切り落とした。
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このゲームは、グロテスクな表現もあるが、苦手な人のために軽減するシステムを導入している。今回の場合であれば、首が落ちることは無く、切られた部分に赤いモザイクのようなエフェクトが発生して、ダメージを受けたと表現する。
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「なぁ、ハジメ。今のはどういうことなんだ?」
「フレア、お前さ、ゲームの中で本名呼ぶなよ。パーティーチャットで回りに聞こえなくなってるけど、うかつだぞ」
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オンラインゲームと言わず、ネットの中で本人を特定されるような情報を発信するのはマナー違反とされている。そのためのアバターであり、名前である。
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「すまん。オンラインゲームなんて久々だったし、俺の名前なんてあだ名をそのまま使ってるからな」
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俺の名前は、焔だ。俺は生まれつき、髪の毛が赤黒く俺の父親がそれを見て焔と名付けたと聞いた。
俺の隣にいるハジメは、俺の幼馴染。俺のあだ名である、フレアというのはこいつがつけたものだ。髪の毛を見て、何を思ったのか俺のことをフレアと呼んだのがきっかけだったと思う。
名前にはかすってもいなかったが、焔と言えば炎とか燃えるとかそんなニュアンスを含む。
戦闘機等が赤外線ホーミング誘導ミサイルから身を守るときに使われる装備にフレアというものがある。
フレアは燃えて発熱する……だから間違いではない! というのが、ハジメの後付けの理由だ。意味が分からん。
小学校のころから呼ばれていたので、もう慣れてしまっている。今では、俺のことを焔と呼ぶ人の方が少ない。実の両親でさえ、焔と呼ばずにフレアと呼ぶため、たまに本名で呼ばれても気付けないことがあるくらいだ。
◆◇◆
「今度から気をつけろよ。で、どういうことかだっけ? 最後のあの攻防で使われたのは、アシストシステムを使った、パリィ……いわゆる防御スキルを使ったんだよ。昔からよく言うだろ、最後の一撃はもっとも油断している……とな」
「……言わない言わない。どこの戦国時代の人間だよ。それに格好良く言っているつもりだろうけど、そのドヤ顔、マジでダサいぞ。昔っから、喋らなければ王子様みたいって言われるくらい見た目はいいのにな。残念イケメンの典型的な例だな」
「えぇ!? マジで? そんなにダサかったか?」
俺は、首を縦に振って肯定した。ファーストは、その場でうなだれるような仕草をする。
「でさ、その防御スキルってなんだ?」
「初めてしばらく経つのに、君はスキルを知らんのかね?」
「スキルって言えば、必殺技みたいなものか? このゲームって戦闘系もあるから存在しているかもって思ってたけど、本当にあるんだな。俺ってば、趣味のアウトドアでキャンプや登山を満喫してたからな。実際にはなかなか行けないから、充実した生活を送れてたんだぜ」
「これだからお前は……昔のゲーム好きだったお前はどこに逝ったんだ?」
「変なニュアンスの言い方だな……って、そんなことはどうでもいいんだよ。そのスキルって、俺が知っているようなものなのか?」
「何も知らねえんだな。チュートリアルもやってねえってことか……まぁ、俺様が簡単に説明してやるよ」
ファーストは、システムアシストとスキル、そして戦闘面について簡単に説明してくれた。
「……まぁ、こんな感じだ。詳しく知りたかったら、チュートリアルをすることをお勧めするぜ」
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