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出入口を探そう


 魔界のゲートを見つけに町を出る、ということになった。


 探索クエストだ。ただ冒険者ギルドは、町の守備について冒険者を割り振ったりと忙しい。そこで勝手に動くのも迷惑だろうから、断りを入れておく。


「ツグ君、お疲れ様。ごめんなさいね、慌ただしくて」


 プラチナさんが机の上に紙を置いた。ギルドマスターの執務室にお邪魔する俺。


「いえ、こちらもすぐにお暇しますので、お構いなく」

「お茶を飲む時間はある? 貴方にはお礼を言わないといけない……」

「お気持ちだけで。で、要件なんですが、俺たちはこれから、魔界のゲートを捜索して、これを破壊しに行きます」

「え……?」


 プラチナさんは固まった。


「貴方たちは今日、充分に戦ったわ。探索は他の冒険者にもお願いしているから、貴方たちは休んでいてもいいのよ?」

「ゲートを破壊したら休みます。次の攻撃がいつあるかわからないので」

「ちょっと待って……。さっきから貴方は、魔界のゲートがあることを前提に話しているわよね?」

「ええ、うちの、ネージュは知っていますね? 彼女が言うには悪魔の軍勢が現れた以上、ゲートは必ず存在すると断言しましたので」

「場所はわかっていないわ」

「見つけます」

「本気なの?」

「はい」


 俺は頷いた。沈黙がいやに長く感じた。


「もう、行ってもよろしいですか?」

「待って。私も行きます」

「はい?」


 俺の聞き間違いかな? プラチナさんが席を立った。


「魔界のゲートが存在するなら、アルトズーハは依然として危機的状況にあります。戦力が大きく減少した今、投入できる戦力として、私がギルドでふんぞり返っているわけにはいきません」


 断固たる調子でプラチナさんは言った。


「おそらくゲートには、複数の悪魔がいるはず。ただ闇雲に数を揃えても犠牲を増やすだけ。少数精鋭で行きましょう!」


 ギルマス自ら赴かなくても……とは、先の彼女の言葉を聞いた後では説得力がないな。数で行っても犠牲が増えるというのも一理ある。その点、Aランク冒険者であるプラチナさんの実力は申し分ないだろう。


「わかりました。じゃ、さっそくですが行きますか?」

「わかったわ。すぐに準備するわ」


 口調が、ギルドマスターとしてではなく、プラチナさんのそれに戻った。さて、これが吉と出るか凶と出るか。



  ・  ・  ・



 ギルドマスターであるプラチナさんを加えて、俺たちはアルトズーハを出た。


 悪魔の軍勢は、ミデン・ダンジョンに行く道中に遭遇したので、そちら方面へ進みつつ、グレーターデーモンと交戦した辺りから、索敵スキルを使うことになる。


 プラチナさんは、暗黒騎士装備。漆黒の甲冑はさぞ重いだろうに、この人は平然と歩いているから、体力についてはバケモノクラスだと思う。


 さすがに兜は外している。彼女の長い銀髪が隠れてしまうから、兜なしがいい。


 道中、モンスターなども現れることなく、グレーターデーモンと遭遇した場所に到着。索敵スキルを発動させつつ、ダンジョン方面へと移動。


 空はすっかり夕焼け。ダンジョンまで行くことになったら夜になるだろうな。……なかなかハードな一日だ。


「乗合馬車……?」

「ええ、馬車でダンジョン近くまで移動するんです」


 移動の合間の雑談。索敵しているから、警戒はしている。


「だた、これ自分で言っておいてなんですが、難しいなって。……だって行くときは、ある程度揃いますよ。でも帰りって、個人やパーティーごとにバラバラだから、全員揃って乗るのはまず無理だなって」


 いつ戻ってくるかわからないのだ。場合によってはダンジョンで死亡なんて可能性もあって、帰りの馬車はどのタイミングで出発すればいいかわからない。最初に帰ってきた者を乗せたら、後から帰ってきた者は利用できない……などなど問題は山積み。


「要検討が必要ね」


 プラチナさんはそう評した。現状ではまず無理そうだ。


「……と、これは」


 俺は、索敵に引っかかった反応に足を止めた。街道が二股に分かれている。ダンジョンにいく道ではないほうに、探知対象であるゲートの反応。


「この先には、何があります?」

「カリダ小遺跡」


 プラチナさんが答えた。


「小遺跡?」

「古い文明の遺跡よ。もちろん、調査はされたけど、とくにめぼしいものはないわ。私も行ったことはあるけど、巨大な岩で作ったらしい建物の跡がある程度」

「つまり、とくに何もない遺跡に、魔界のゲートがある、と」

「ゲートがあるの?」

「おそらく。索敵……魔法によるとそうなります」


 スキルじゃなくて魔法だってギルドでは言っていたんだった。


「相変わらず、貴方の索敵魔法って便利よね!」


 楽しそうにプラチナさんは笑った。ネージュが口を開いた。


「ツグ様、その遺跡に悪魔は……?」

「……いるな」


 索敵スキルで照合。グレーターデーモンに、レッサーデーモン、オークに、それとヘルハウンド――地獄犬か。そこそこの数がいる。


「これ以上増やされる前に、とっとと潰さないと危ないな……」

「急ぎましょう!」


 ネージュが駆け出した。俺たちも続く。主街道と違い、だいぶ朽ちた道を進むことしばし、敵が動いた。


「前衛! ヘルハウンドが来る!」


 炎をまとう狼のような大きさの犬が、猛スピードで走ってくる。向こうが動いているってことは、遺跡の悪魔たちもこちらに気づいているということだ。


「邪魔です! おどきなさい!」


 ネージュが魔法剣を振り上げ、セアもまた両手のドラゴンダガーで、ヘルハウンドへと突っ込んでいく。


 ふたりとも勇敢だ。俺はドラゴンスピアを手に続き、ヘイレンさんがほぼ同速。フラム・クリムとプラチナさんはやや遅れている。


 というか、ネージュがセアと最前線にいるんだけど、彼女こんなに足速かったっけ?


 ズバッ! ズバッ!!


 飛びかかってくるヘルハウンドを瞬く間に切り伏せ、セアとネージュがそのまま駆ける。


「砕け、氷牙!」


 魔法剣スノーホワイトから、氷の塊が飛び出し、一頭のヘルハウンドを貫く。魔法のアイスブラストと同等の威力はありそうだ。


 駆け抜ける前列ふたりの側面を抜けたヘルハウンドが向きを変えようとするが――


「俺たちは眼中になしですか、この野郎!」


 右を俺、左をヘイレンさんで切り裂く。戦場でよそ見をするやつがあるかよ、ってな。


 さらに進む。バレているのだから、作戦もなにもないが、正面衝突不可避だ。


 セアとネージュの正面にオーク兵が現れる。壁を形成するように横陣を組むオーク。正面から駆け抜けるのは難しいが――


「ネージュ、セア、左右に分かれて、真ん中を開けろ!」

「はい!」

「了解」


 俺の指示に、二人は正面を開けた。よしよし、オークどもの壁を吹っ飛ばしてやる!


 ドラゴンスピア――くらえよ、ドラゴンブレス!


 疑似ブレスが槍から放たれ、射線に入ったオークをまとめて蒸発させた。ほい、これで正面ががら空きだ!


 俺の範囲攻撃がこじ開けた穴を、セアとネージュが突っ切った。目指すは小遺跡。魔界のゲート!

ブクマ、評価をよろしくお願いいたします。

明日は複数話、更新予定。

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