表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/54

町を守れ


「ありゃあ、邪竜じゃないか!」


 俺は外壁の上にいた。ウイングブーツの力で直接跳んだり降りたりできた。レッサーデーモンに追い詰められていた弓使いを助け、下に降りるよう指示した後、敵集団の後方からノシノシと進んでくるデビルドラゴンを睨んだ。


「俺がダンジョンで倒した奴より大きいな」


 西門を破壊したのは、こいつのブレスだ。あそこからブレスを連発されたら、外壁はもちろん、こちらの防衛網もやられるだろう。


 最初から使わなかったのは、切り札として温存していたってところか。こっちが奴らの想定以上に頑張った時、ドラゴンを出してお疲れ状態の人間たちを絶望させようって魂胆なんだろう。……悪魔の考えそうなことだ。


 じゃあ、皆の心が折れる前に、あのドラゴンを何とかしないとな。


 俺は外壁から西門前へ飛び降りる。まずはオークどもを一掃する!


「ドラゴンスピア!」


 ブレス攻撃! ゴウッと疑似ドラゴンブレスが槍から放たれ。オークをその防具ごと吹き飛ばす。


「ツグ君!?」


 おっと、後ろからプラチナさんの声。上からは見えなかったが、降りてみれば案外、門の近くに冒険者の最前線があった。暗黒騎士姿のプラチナさん、目立つねぇやっぱ。


「あのドラゴン、何とかします!」


 俺は異空間収納にドラゴンスピアを戻し、サンダースピアを取り出す。雷獣素材で作り上げた魔法槍だ。こいつでドラゴンが痺れるかは、わからないが――


「うまくやれたら、お慰みっ!」


 俺は投げ槍のごとく、サンダースピアを投げた。


 ギュンッ!!


 MAXパワーの投擲は、まるで光であり、デビルドラゴンの額を打ち抜いた!


「あれ……?」


 ズウゥン――


 デビルドラゴンの頭が下がり、地面に突っ伏した。……え?


「うそぉ……」


 牽制と、あわよくば足止めを狙った一撃だったのだが、当たり所がよすぎたらしい。脳天ぶちぬいて、邪竜を倒してしまったようだ。


「すげぇ……」


 ロッチの声がした。


「一撃で、ドラゴンを倒しちまった……!」

「ドラゴンスレイヤーは、伊達じゃなかったってことか!?」

「マジかよ!?」


 冒険者たちが驚きの声を上げる。いや、俺もビックリだよ!


 あまりのことに、しばし呆然としていたのはオークも同じだった。だが我に返ったようで再び前進を開始した。


 すぅ、と一呼吸。気づけば、俺、最前線にいる。俺は下げていたサンダーブレードを鞘から抜いた。


 バシュッ!


 剣に紫電が走り、光をまとう。


「さあ、やっつけよう!」


 俺は駆け出した。


「ツグ!」


 セアが俺のすぐそばについていた。


「敵を倒しやすくしよう。パワーアップ!」


 彼女の身体能力を魔法で強化する。オークどもが武器を振りかざし向かってくる。


「遅い遅いっ!」


 サンダーブレードが唸りをあげる。オークの鉄の剣が溶けるように切れ、鎧ごと、一刀両断!


 ズバッ、スバッ、バシュっ!


 敵の動きがゆっくりに見えるのは、俺の意識が集中し過ぎているせいか? 構わない! ぶった切れ!


 バシュッ! ズバッ、バシュッ!


 むっ、クロスボウを持ったオーク! 俺はとっさに左手を突き出し、魔力を押し出す。エアブラスト!


 衝撃波が、クロスボウ兵をまとめて吹き飛ばして、後ろのオーク兵と衝突させる。


 セアも流れるように、オークの死体を量産している。俺たち無敵のコンビみたいだ!


 しかし敵も数で押してくる。俺たちの左右から回り込むように動くが――


「そうはさせません!」


 ネージュとヘイレンさんだ。


「氷よ!」 


 魔法剣スノーホワイトを掲げるネージュ。……彼女にもパワーアップの魔法をかけよう。


「我が敵を凍らせよ! スノーホワイト!」


 ネージュの魔法剣から放たれた氷の風は、たちまち複数のオークを氷結させ、次に砕いた。


「え、あれ……こんなのは――」


 放ったネージュが困惑している。強化魔法が、彼女の力を向上させているのだろう。


「姫様!」


 ヘイレンさんの警告。レッサーデーモンが急降下して彼女に迫ったのだ。


 だが――閃光が走った。次の瞬間、下級の悪魔の体が真っ二つとなった。


「ヘイレンさん!」


 彼の手には新しい武器。日の光を浴びて輝くは、先日コラソン工房に依頼していた邪竜刀。


「その武器!」

「はい、ツグ様。先ほど、コラソン殿が届けてくださいました!」


 あのドワーフの職人。わざわざ戦場に持ってきたらしい。


「このような名刀をこしらえていただき、感謝の極みに存じます、ツグ様」


 刀を持ったヘイレンさんは、それまでとまるで動きが変わった。オークの首が、まるでボールのように胴体から切り落とされていく。


「それっ! ツグたちに続けェ!」


 ロッチら冒険者たちも、勢いを取り戻し、残るオーク撃破に加わる。数は十数人程度しかいなかったが、戦意はすこぶる高かった。


 まるで万の軍勢の一員のごとく、不安は欠片もない。さあ、俺も負けてらんないね!


 ズバッ!


 眼前のオークを上下に切り裂き、前進。後方にいたグレーターデーモンが両手を振り上げ、魔法を放つ。電撃弾が矢継ぎ早に俺に迫る。


「反射!」


 飛んできた魔法を打ち返し、さらに突進。グレーターデーモンは自分の魔法を跳ね返され、怯む。


 跳躍からのぉ、脳天を貫通!


 着地した時には、最後のグレーターデーモンが沈んだ。敵は冒険者たちに駆逐されつつあるが……。索敵で確認すれば、逃げ出した敵がいて、しかしウイングブーツで加速したセアから逃れられず、次々に仕留められていった。


 悪魔の軍勢から、アルトズーハを守り切ることに成功したと言っていいだろう。


 俺は、倒れ伏しているデビルドラゴンの死体を見上げる。……でっけぇなこれ。

ブックマーク、評価などお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ