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悪魔に出会った


『なっ、馬鹿なぁっ!』


 宙を舞うグレーターデーモンの頭。


「おやおや、首を斬られても元気だな」


 俺は着地と同時にターンして、跳躍。落下してくる上級悪魔の脳天をサンダーブレードで貫いた。


『グゥアアァァ――――』


 声が消え、デーモンの目から光が消えた。トドメはばっちりだろう。オーガ上位種との戦闘で、首と胴が離れても生きている種族がいるのを経験したからな。すぐに対応できた。


「皆、無事か!?」


 確認すれば、フラム・クリムはセアが見守る中、起き上がっていた。オーガ上位種はタフだ。


 同じく吹き飛ばされたネージュは、ヘイレンさんに支えられている。


「大丈夫か?」

「……はい。さすがツグ様ですね。グレーターデーモンも一撃だなんて。……それに引きかえ、私は――」


 悔しそうに顔を歪めるネージュ。悪魔を憎んでいる彼女だ。グレーターデーモンにまるで太刀打ちできなかったのが、悔しくて、悔しくて。


「姫様……」


 ヘイレンさんも、ネージュの悲しげな顔に言葉が出ない。俺はネージュに回復魔法をかけておく。


「あー、くそ。さすがグレーターデーモン、あんなに強いとは……」

「フラム、大丈夫か?」

「背中を打った。……お、ツグ、あんがと!」


 俺の回復魔法で、フラム・クリムも痛みが消えたようだった。


「まったく命拾いしたぜ。ツグがいなかったら、マジでやられていたぞ」

「……くっ」


 ネージュがさらに表情を歪めた。何もできなかったことを恥じているのだろう。フラム・クリムは、もう少し言葉を選ぶべきだったかもしれない。


 とっ、これは――俺は索敵スキルが捉えた新たな反応に、振り向いた。


 ミデン・ダンジョン方面から、多数の敵性モンスター、それも多数!


「ツグ」


 セアが緊張を高めた。


「嫌な気配。いっぱい」

「ああ。アタシも感じた」


 フラム・クリムもそちらに視線を向ける。


「何か、やべぇのが来る……!」

「かなり、やばいぞ」


 俺も索敵スキルが捉まえた反応に鑑定を当てて、照合していく。


「オークにスケルトン、グールに、単眼の悪魔ことアイ・ボール。レッサーデーモンにグレーターデーモンも複数……。なんだこの数はよ!」


 まるで、ダンジョンモンスターの一斉進撃、ダンジョン・スタンピードみたいじゃないか!


「まずいな、街道に沿って進めば、アルトズーハの町にぶつかっちまう!」


 どうする? ここで防ぐか? 使ったことがないが、大魔法を使って地形ごと吹き飛ばすか……? できるか、俺に……?


「すぐに町に知らせましょう!」


 ヘイレンさんが言った。


「早急に防衛態勢をとらねば、町も悪魔どもに蹂躙されてしまいます!」

「悪魔たちの好きにはさせません!」


 ネージュが叫んだ。


「絶対に! 今度こそ、守らなくては!」


 ……ここで残るって言ったら、このお姫様も留まるとか言い出しかねんな。


 多勢に無勢は承知だが、魔法を駆使すれば敵の勢力をある程度削れると思う。しかし何かの手違いで敵が町にたどり着いても困る。ここは、まずは通報しよう。


「よし、町まで戻る! 走るぞ!」


 ということで速やかに後退。グレーターデーモンの死骸を異空間収納に回収しておく。


 俺は他メンバーと足並みを揃えるが、通報は早いほうがいい。


「セア! 先行して冒険者ギルドに知らせろ。悪魔を中心とした魔獣の軍勢、およそ三百が街道を進撃中!」

「――わかった!」


 この中では一番身軽で素早いセアが加速した。さすが実験体として常人のそれを凌駕する身体能力を持っているセア。グングン加速して、俺たちと距離が開いていく。


「セアっち、めっちゃ速ぇ!」

「凄いだろ、うちの子は!」


 実の娘ではないんだけどね。彼女が褒められると、俺も嬉しい。



  ・  ・  ・



 道中、何人かの冒険者と出会った。すれ違いざまに『悪魔の軍勢が迫っている』と警告してやった。


 すぐについてこなかったところからして、自分の目で見るまでは信じないつもりかもしれない。


 まあ、たぶんそうなんだろうけど、これなら先に言ったセアに、デーモンの頭でも持たせておくべきだったかもしれない。


 ギルドにセアが報告しても、証拠がないから町の人たちを動かせないかも。


 アルトズーハの町につくと、案の定いつも通りだった。ああ、もう、能天気な連中め!


 俺らが全力で駆けてきたから、門番は驚いた。


「どうしたんだい? 何かあったのか?」

「悪魔と魔獣の群れが、町に迫っているんだよ!」

「ええっ!? そりゃ本当かい」

「嘘だったら、この町にはいられなくなるだろうな」


 俺は皮肉る。フラム・クリム、ネージュ、ヘイレンさんが、激しく肩で息をしていた。思いっきり走ってきたからな。


「三人は少し休め。俺は冒険者ギルドに行って、事態を説明してくる! あー、それと――」


 何事かといぶかしんでいる別の門番に声をかける。


「こっちから町の外に出ようとする奴は止めておけよ! どうせ敵がきて、戻ってくるしかないんだからな!」


 そう言い残して、俺は冒険者ギルドへと走った。


「よう、ツグ!」


 町中で俺を見かけた冒険者に声を掛けられた。なので走りながら返した。


「おい、あんたもギルドへ来い!」

「何で!?」

「スタンピードだ! 悪魔どもがこの町へくるっ!」


 やがて冒険者ギルドの建物が見えてきた。フロアに駆け込むと、カウンター前にセアがいて、冒険者やギルドスタッフが集まっていた。


「――セアちゃん、本当に、スタンピードが……?」


 受付嬢のウイエが聞けば、セアはコクリと頷いた。近くにいた大人の冒険者が鼻をならす。


「ふん、でも実際に見てないんだろ? 本当かどうか――」

「本当だよ」


 俺はそこへ駆け寄った。


「ツグ……」

「ツグさん」


 セアが俺を見て、周りの者たちも視線を向けてきた。


「グレーターデーモン込みの悪魔の軍勢だ」


 俺は異空間収納から、グレーターデーモンの頭を出して、カウンターに置いた。悪魔の頭を目の当たりにし、一同が言葉を失う。


「悪魔の軍勢ですって……?」


 ギルドマスターであるプラチナさんがやってきた。グレーターデーモンの首を見て、次いで俺を見た。


「間違いないのね?」


 俺が頷くと、プラチナさんは手を叩いた。


「ただちに町にいる全冒険者を召集! 襲来する敵性モンスターの迎撃戦を展開、アルトズーハを防衛します!」

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