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転生した私はバイプレイヤーで満足です  作者: 乙 麻実
バイプレーヤーは目立ってはいけないと思います
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平穏とは幸せのことなんです

秀鈴に平穏で平凡の日常が戻ってきたのは、大皇太后窒息回避から3日後のことだった。

死を覚悟していた秀鈴を助けてくれたのは、皇太子の雲陽でもなく、侍医長じいちょう神医しんいと言われている宋先生でもなく、あの大皇太后本人だった。


命の恩人である秀鈴を牢に入れたと分かった大皇太后はかなりご立腹で、すぐに牢から出すようにと言われたらしい・・・


でも、牢から出されてなぜ宋先生の所へ行かされたのかは未だに不明だ。

結局、彼に何か言われることはなかったが、無事に秀鈴の仕える水晶宮に戻ることができた。


たった3日離れていただけなのに鄭妃は秀鈴以上に憔悴しきっていて、戻った彼女に泣きながら駆け寄りしばらく身動きできないほどだった。


「 ねえ、秀鈴 」

「 はい なんでしょう 」


10日の月日が流れるころにはいつもと変わらないのんびりとした時間が流れていた。


「 今日は何をしようか? 」


側妃の日常はただ単に豪華絢爛に着飾り美を追求することが主な勤めになる。まあ、それは王の寵愛を受けている側妃が中心で、そうでない側妃は詩を詠んだり楽器を奏でたり、書や絵を嗜んだり、手芸に勤しんだりして過ごしている。


「 それでは今日はお庭を散策するのはどうですか?ちょうど藤の花がみごろだと聞きましたよ 」

「 いいわね。そうしましょ 」


満面の笑みを浮かべる鄭妃は早速出かける準備をしたいという。彼女のこの笑顔を見るためだったらなんでもしてあげたいと思ってしまう。

そう、彼女みたいな人がきっと物語の中でいえば主人公になるのだろう。


( 守ってあげたいと思っちゃうのよね )


『春の景』という庭園は春から初夏に楽しめる草花や樹木を配し、池のほとりを一周歩けるように作られている。そして、池と草木の花々が逆さ鏡のように美しく眺めることができる亭(庭園の中に設けた休息所)が丁度真ん中あたりに建てられている。


鄭妃とゆっくり散策しながら亭まで来た秀鈴は、休憩できるようにお茶とお菓子を準備する。

お茶をしながらくつろぐ鄭妃をみていると、ホッとするのと同時に幸せな気分になる。


( 平穏、サイコー )


このまま何事も起こらず無難に生きるのが秀鈴の今の希望であり目標でもある。


( 誰かのための人生もまあいいってことよね )


異世界に来てしまった現実にすっかり慣れて、それも主人公ではない人生を生きるのもいい気がしてきた。


「 そういえば、秀鈴にお仕事の依頼がきていたわよ 」


お子様の鄭妃は茶に少し甘い蜂蜜を入れるのを好む。その甘さに頬を緩めて笑んでいた彼女は急に思い出していう。


「 お仕事ですか? 」

「 うん・・・なんだったかな? 『治薬院ちやくいん』でお手伝いしてほしいとか 」

「 『治薬院』?ですか 」


治薬院といえば、名前から言ってあそこしかない。そう、あの綺麗なお兄さんこと秀鈴を完全無視する宋先生がいる所。


「 行きたくないです 」


即答で答えてしまう。側妃の侍女として後宮に上がったのになぜに他の仕事をしなければいけないのかと思った。今回のことで秀鈴はより一層目立たず余計な事をしない、サブキャラ・・・バイプレーヤーとして生きる道を望んでいた。


この愛らしい鄭妃が主人公としたら、彼女にとっての重要な脇役としての役目が果たせたらそれでいいと思ったからだ。


「 そうよね~ 秀鈴ならそう言うと思った 」


鄭妃が無邪気な笑みを浮かべていう。


「 じゃあ・・・ 」

「 でもね、太監がね御上の命であるとか言ってたから・・・どうしよう~~ 」


鄭妃はそのかわいらしい顔そのままの素直な性格を持っている。御上・・・いわゆる、照陽王の御命令が下ったわけで断ることなど出来る筈がない。

断っちゃおうか? 行けません~っていえばいいかな? と人差し指を顎にあてて思案している鄭妃を見ながら、心の中で


( これ、断ったらあなたの首が飛ぶよ~ )


とつぶやき黄昏る。大事な鄭妃に何かあっては一大事だ。


「 鄭妃様、この秀鈴。陛下の御命令であれば喜んでどこへでも参りますよ 」


笑顔を引きつらせながら鄭妃にそう告げるのだった。




 

お読みいただき、ありがとうございました。

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