正体がバレそうです
「 おはようございます。昨夜はゆっくりお休みになられましたか? 」
部屋の扉が消えてなくなった後、使用人が食事を運んでくるとき、下膳のときの2回だけあの扉が出現してまた消えるを繰り返して朝になった。下膳の時に使用人が用意してきたものは、寝間着と朝着替えるための洋服だった。それに、部屋の奥にトイレもお風呂もついていて、監禁部屋にしては居心地がいい部屋だった。
「 やはり洋服も自分でお着替えになれるのですね 」
迎えに来たサイラスは、対して驚く様子もなく白いローブを着た秀鈴を頭の先から足元まで眺めながら言う。
( 顔がいいからって許されるもんじゃないわ。変態 )
秀鈴が顔をしかめていると、
「 着付けが出来ているのかを見ているだけで他意はありませんので。ちなみに読心術は私にはございませんよ あなた様のお顔・・・もう少しなんというか・・・お気を付けいただければと思いますね 」
サイラスが顎に手をあて小首を傾げながら続ける。顔に出過ぎだと言うことだ。
秀鈴は真っ赤になった顔を両手で隠しながら、
「 余計なお世話です 」
とソッポを向いた。それでも、彼が自分が洋服が切れることをはじめから知っていたような言動に気が付き彼の方を見てしまった。
確かに拉致した初めからおかしなことをこの人だけ言っていた気がする。におわせる様に
場所を変えるとサイラスに連れて来られた場所は、サイラスの執務室のようだった。大きなデスクの前にある向かい合わせに置かれているソファに座る様に促された。
「 コーヒーがいいか? それとも紅茶? 」
「 え?? コ・コーヒーで 」
まさかの質問に座りかけた体が飛び跳ねた。聞き間違いなのかと半信半疑になっている数分後にコーヒーカップに入った懐かしい匂い漂う黒い液体が目の前に出てきた。
「 いい匂い・・・はっっ 」
秀鈴は先の段階ですでにやらかしていることも気が付かずに、気まずそうに俯く。
「 気にしなくていいどうぞお飲みください 」
「 そ・そうですか?じゃあ いただきます 」
「 ミルクと砂糖はいらない? 」
「 あ、結構です。昔からブラックが好きなんで 」
秀鈴が慣れた手つきでコーヒーカップを手に取り口に運び、
「 おいしい~~ 」
満足気な声を発するのを待っていたように、
「 あなたは何者です? 」
テーブルを挟み相対して座るサイラスは確信を持ったような表情で怖い笑みを浮かべながら聞いてきた。
「 コーヒー?ですか? 治薬院では珍しいものが時々入りまして・・・こ・これも・・・ 」
言いわけするのを許すわけがない。積んだ。このサイラスという男は始めから秀鈴の正体を知っていたとしか思えない。
『 解決できるのであれば、このような時空を超える様なお願いをするわけがありません 』
『 私の国を救うためには異質な力が必要なのです 』
『 あなたは分かっているはずです。あなたを助けられるのは私たちだということが 』
意味が分からなかったしオブラートに包み過ぎで秀鈴には全く伝わっていなかった。秀鈴には自分に何の能力もない無能者で、超能力がまかり通るようなこの世界にしたらちょっとした異物混入としか思っていなかったからだ。
「 言い方を変えましょう 」
おどおどし始める秀鈴に呆れるようにため息をついた後、サイラスは語り始める。
「 我が山東教国はご存知か分かりませんが、『女神信仰』をしている敬虔な信者の国です 」
「 は・はあ 」
「 これからあなた様をご案内するつもりですが、教会には信仰の成り立ちをモチーフとしたステンドグラスが太古から残されています。これは教会の最奥の秘密の儀式をする神聖な部屋の中にあるとされています。こういう言い方をするのは、例え私でもそこには入ることができないのです。入ることができるのは選ばれた人ただ一人だけです 」
サイラスはそこまで話を進めると、コーヒーを飲むように促した。
「 ただ一人って、王様ですよね それとも大正教様とか 」
この話を自分にする意味について探りつつ慎重に質問すると、サイラスは首を振り続ける
「 それは女神です。女神もしくは女神より力を得た聖女です。そして、その聖女は・・・あなたのような存在。どこからかやってきた存在?魂?というところまで私はつき止めたのです 」
「 ・・・・ 」
初対面のそれに普通の人間に言われたのに(妖怪な白 朱亞 や青龍の化身の王 照陽以外で)秀鈴は激しく動揺するのだった。




