建国祭
建国祭当日
鄭凌雪の侍女である秀鈴は、夜が明ける前から本業である仕事に慌ただしく追われていた。
秦陽国第8代国王 王 照陽の10番目の妃である凌雪妃が、建国祭催事に出席するための身支度をはじめ準備をするためだった。
秀鈴は筆頭侍女ではあるが、バイブレーヤーたる所以なのか手先が不器用で御髪を結い上げることも特別な日のお召し物のお手伝いできる能力がない。そこは既存の後宮侍女お姉さま方にいつもお任せしている。
「 秀鈴、あなたも早くしなさい 」
お局様筆頭(本人には絶対に言えない)の藍姉さんに声を掛けられる。
「 え? 」
式典会場に運ぶべき荷物をまとめて桐箱に詰めていた秀鈴は、藍姉さんが顎で合図された若い侍女たちに拉致された。
「 ええええええ 」
姫様を扱うのとは違い身包みをはぐように着ているもの脱がされると、今まで着たことがないような桔梗色の衣装に着替えさせられ薄っすらと化粧まで施される。
「 は? なんで? 」
されるままに衣替えが完了させられた秀鈴は、さっきから言葉にならない叫びしか発せずにいる。
「 御上からの命よ ほれ、これで顔を隠せって 」
黙ったまま監視していた藍姉さんから、最後に衣装と同色の面紗を渡された。
「 私も行くのですか? 」
「 当たり前じゃない 」
「 ・・・・ 」
藍姉さんに即答されたが、数日前の薬房での1件もあり自分は水晶宮の自宅待機を命じられるとばかり思っていたからだ。凌雪妃を1人で出席させるのは心配だが、あの海鷹王とその妹がどう出てくるか分からない。できれば目立たず居留守が使いたかったのに・・・
建国を祭る催事の会場は、朝陽城の中央広場となっている。もちろん外になるわけだが、誰も雨が降る心配はしていないのが不思議だと秀鈴は思った。後から聞きたが龍の化身である御上が催すのだから、晴天になるのは当たり前らしい。
今回の建国祭は各国の王族や要人が招待される大々的なものらしい。正面には 我が王 照陽のブースが陣取り、左側には海鷹国の 右側には山東教国のブースがそれぞれ作られている。その他の少数民族は左右それぞれに分けられて両国のあとに続いている。
( うちは龍だから青で 海鷹は鷹で赤、山東教国は亀で黒か・・・ )
場所が分かりやすいように色別に旗がはためいている。裏方のはずの秀鈴なのに、宋先生の指示だとかで会場入りした後は凌雪妃の傍に仕えて動くなと言われていた。10番目の妃である凌雪妃は照陽のブースの末席になる筈だが、鄭家は司徒を受け継ぐ家系であるため今回だけは中央近くの場所を与えられた。
「 秀鈴 すごいわね 緊張するわ 」
「 はい、こういうのを豪華絢爛っていうんですね 」
「 隣国の方をお見掛けするのは初めてよ 衣装も華やかね 」
凌雪妃が言っているのは海鷹国の方だろうなと秀鈴は思った。派手やかな色彩布と見たことのない調度品で飾り付けられている。すでに会場入りしているのか賑やかな様子になっているが・・・・
「 あら? 手を振っている? 」
「 ・・・・ 」
凌雪妃が見ている先にひと際大柄な・・・見てはいけない人。秀鈴はさっと凌雪妃の後ろに姿を隠す。
しっかり見なくても分かるあれは海鷹王 劉 來儀だ。
秀鈴は身を隠しつつ目線を反らすと反対側と対比するような黒・白・グレーの色彩で固められた山東教国が目に入った。国名でも分かる様に宗教色が強い、それもどちらかというと西洋チックなそんな印象の服装に容姿だと思った。
すでに中央には2人の男性が着席している。2人は歳は若いが王族と思われる要人のようだった。神父が着る様なキャソックとフロックコートが合わさったような品のある装いで、中央側に座る方が18~20歳くらい、その隣は30歳手前という感じだ。
( 若い方が金髪碧眼、もう1人の方が茶髪ロン毛・・・ん~遠くて分からないけど、2人ともかなりのイケメンだ )
秀鈴が気配を消すために何気に山東教国側を眺めていただけなのに、
( ん!? 笑った? )
笑みを浮かべたもう1人の方、茶髪ロン毛男の金色に光る瞳と眼が合ったような気がした。




