嵐を呼ぶ海の男現る
とりあえず続けて更新できています。
続編を少しは楽しんでいただけていると嬉しいのですが・・・
この世界の中心にあるのが秦陽国でその周りには2つの国(海鷹国と山東教国)と複数の少数民族で形成された小国があると、この前の歴史の授業で宋先生からご教授されたばかりだ。宋先生は冷凍庫のように冷たい性格のように見えて、意外と忍耐強く世話好きな人なんじゃないかと秀鈴は分析していた。
そんな宋先生は、秀鈴の精神が異世界から来た人間なのだと理解してくれていて、この世界の情勢や常識その他諸々を伝授してくれる。いわゆる、秀鈴にとって宋先生は本当の先生、師匠と呼んでもいい人だ。ただ、なんといっても真面目を絵にかいたような人で全く冗談とかが通じないから扱いにくい。
そんな彼が今、氷のように冷たい視線で秀鈴を見据えていた。
( こ・怖すぎ )
睨んだり怒ったりするのではない、彼は呆れているのだ。腰まで垂らした銀髪に白磁気のような透明な肌はとても男性とは思えない、つい自分の頬を触って彼と自分の肌の違いを思い知らされる。
「 どうした? 」
張りのある上機嫌な力強い声で尋ねられて横を向けば、本当であればこの近距離、それも真横に座ることなど許されないだろう人が秀鈴を見つめている。
良く日に焼けた浅黒い肌に黒の短髪は無造作にツンツンと立ち上がっている。体のわりに顔は小さく8頭身。ワイルドな髭を蓄えた顎に顔のそれぞれのパーツは気の強さを主張したようにはっきりくっきり濃く深い。その中で異質に見えるのが瞳だ。それは、透き通った真っ青な海の色を呈していた。
「 な・なんでも・・・ございません 」
今日初めて治薬院の中にこんな部屋があることを知り、そして今日初めてこの部屋に入った。質素を大切にした簡素なつくりのこの治薬院の中で、宮殿のように装飾品があり豪華な部屋があったとは・・・ついつい口を開けて天井や壁周囲を見渡していたのはつい数分前だったけどもうそんなこと構っていられない状況だった。
治薬院の庭で海鷹王こと 劉 來儀と宋先生の間におずおずと進み出た秀鈴は、満面の笑みを浮かべた海鷹王になんの歓迎か分からない抱擁を受けた。それは、苦虫を嚙み潰したように顔をしかめその場で動かない宋先生と全く対照的だった。
『 お前が秀鈴か? 俺は來儀だ。会いたかったぞ 』
肩を抱き背を叩きながら会えた喜びを爆発させる海鷹王だったが、それは女にしては背が高く体格もいい秀鈴でも必死に悲鳴を上げないように我慢しなければならないほどのダメージがあった。熱い抱擁というよりもう罰ゲームか体罰のようだ。これがもし光偉だったら1発や2発叩き返していただろうが、初対面そして隣国の王様にそんなことはできない。気を失いそうになりながらされるがままでいたところを、
『 ご用向きは院内でお伺いいたします。どうぞこちらへ 』
こんなところで立ち話では・・・と、宋先生が冷静沈着に進言してくれたお陰でこの応接室へ移動して来れたが、なぜか上座に座している海鷹王の横に秀鈴が並んで座っていた。前方から超低温-50℃の凍てつくような視線を感じているのは、普段であれば自分が立っているだろう位置に宋先生がいるからだ。
切れ長の瞳の色は黒く、いつもビームが出るとき(本当に出るわけじゃない)のように赤みかかってはいない。ただ、一瞬で氷付きそうなほどの冷気が宋先生から自分に刺さるようだと秀鈴は感じていた。
「 それで、この者とはどのようにして? 」
表情を変えない宋先生が余計に怖い。
「 秀鈴と俺の関係か? 」
「 ?! 」
秀鈴が海鷹王の言葉にギョッとして彼の顔を見た後、言い訳するように宋先生に向かって慌てて全否定するため大きく首を振る。
( やめてよ~ 変な風に勘違いされるじゃない )
目線で『こんな人知らないよ~』と秀鈴が半泣きで訴えていると、
「 あははははーー 」
横から大笑いをする海鷹王。それと同時に宋先生は大きなため息を吐く。
「 秀鈴は舜華の恩人だ。だから、お礼をしたかった 」
海鷹王は秀鈴に会いに来た理由を告げた。秀鈴は『舜華』と言われてすぐには思い出せなかったが、宋先生はその『舜華』が誰なのかすぐに理解した様子だった。海鷹王の妹で海鷹国の王女なのだと教えられた後に、
「 あっ 」
ぼんやりと彩都城下町で光偉と一緒に助けた白いシルクに面紗の女性のことを思い出した。彼女はオッドアイだったが、右目のブルーeyeが海鷹王と同じ深い海の青色だった気がした。ただならぬ雰囲気を持つ彼女が王女だと言われれば、あの鳥肌が立つような状況に合点がいく。(もう超能力系の力に
免疫が付きつつある自分に秀鈴は気が付かない)
そんなことなら初めからあんなに大袈裟に治薬院に乗り込まなくてもよかったんじゃないかと、秀鈴は恨めしく思ってチラッと彼を盗み見ると、彼が眼力半端ない大きな眼を楽しそうに細めて見つめてきた。
「 やっぱり直接会いに来てよかった。思っていた通りだなお前は 」
そして意味深なことを言ってくる。
( お礼を言いに来ただけじゃないの? )
「 さあな。まあそういうことにしとこうか? 」
「 ・・・は? はい? 」
今のは秀鈴は声を出していない。なのに自分の心の声に答えた彼をガン見していた。普段であれば秀鈴のような立場だと、王族をまともに見るなど不敬にあたり首を切られたり眼をくり抜かれても文句は
言えないのがこの世界の世情だと思う。
( この人も心の声聞こえる派? )
この世にテレパシーできるできないで派閥があるわけじゃないが、秀鈴分類にはどうもそういうのが出来上がっているようだ。
「 お前は面白いな。目が口ほどに物を言うというのはお前のためにある言葉なのか? 」
「 ・・・ 」
答えにならない秀鈴は黙るしかない。
「 お戯れはほどほどに 」
宋先生がナイスタイミングで助け舟を出した。海鷹王は元々の祖先が海賊。近寄りがたいオーラがある秦陽国王とは違い、良い意味では親しみがありフレンドリーだが、悪く言えば女好きのスルタンという感じだ。今も秀鈴を自分の横に座らせて、身体には触れてないがずっと秀鈴の髪を弄って触っている。
「 連れて帰りたくなった 」
「 ええええ~ 」
本気なのか冗談か分からない発言をするスルタン・・・いや、海鷹王に向かって、秀鈴は思い切り悲鳴のような大声を上げていた。
お読みいただきありがとうございました




