この世界はどう思う
「 秀鈴はこの世の者ではないよね? 」
民家の一室は一般的な家庭のものらしい。食卓机が部屋の中央に置かれて部屋の隅には食器棚などの棚がある。食卓机は長方形で数人が一緒に会食できるくらいの広さがあり、その端に白が足を組み腰掛け机の上に肘をついてくつろぎ座っている。
初対面の人からそんなことを言われるのは初めてだが、最近はそのことを指摘されるのに慣れ始めている。
「 そうですけど 」
半分は違うけど(肉体はこっちの世界のものだし)面倒だから否定はしない。
「 実は、わたしも 」
「 え?あなたも?異世界転生してきた同士とか? 」
早合点で喜んで飛び起きるように秀鈴が立ち上がる。
「 残念だけど同士じゃないよ 」
「 え?? なんだ・・・ 」
ぬか喜びに落胆して膝に手を置き前かがみにがっくりと上体を折る。白の変な力でここに連れて来られた代償が怠さと筋肉痛という形で秀鈴の肉体を蝕んで身の置き所がない状態だった。
「 でも、『遠見』の力であんたがここに飛ばされたのを見たから興味があってね。あんたの思考からこの世とは違う世界が見えるんだよ 」
( またか、テレパシーかい )
「 秀鈴の世界とこの世界全然違うし、あんたはこの世界 どう思う? 」
「 どうと言われても・・・良くも悪くも・・・普通かな 」
秀鈴は重たい体を引きずりながら白より一番遠い椅子に座り込む。なんだかこの白は知らなかった時と違って禍々しさもなくなったし怖くも感じなくなっていた。具体的に元の世界の話ができるのは宋先生のときとか照陽王のときなど今までと比べて有難い。
それにこの白 朱亞 外見はまるで魔女だけど、その性別ははっきりしないし本当のところ正体だって分かりはしない。
「 白、あなたは『巫覡』なの? 」
今度は秀鈴が質問する番だ。
「 そう・・・ともいうけど、そうじゃないともいうかな 」
白は隠すことはなく素直に答えてくれる。
「 でも特殊な能力を持っているんだもんね 普通の人間じゃないよね 」
「 これのこと?まあ特殊といえばそうなのかな? 反対に秀鈴はこの世の人じゃないってほかは普通だね 」
余計なお世話だとつぶやけば、白はクスクスと楽しそうに笑う。
「 じゃあさあ、あなたって今の朝廷に災いを持ってくる人なの? 要するにヒール? 悪役? 」
「 災いかあ そこまでの能力はないなあ まあ、王一人くらいなら殺ることはできるかもね 」
冗談のような本気のような言い方をする。
「 あの皇太子暗殺未遂事件の犯人は白ってこと? 」
それで思い至ったのはあの秀鈴が巻き込まれる原因を作ったあの事件のことだ。
「 ああ、あれ? あれはわたしではないよ。そんな回りくどいことわたしはしないよ。わたしならいくらでも・・・」
「 ちょ・ちょっと、具体的に言わんでヨシ 」
白が顎に指を当てて皇太子暗殺の仕方を思案しはじめるのが分かって慌てて止める。
「 じゃあ、あなたの目的は何よ どうして普通の私をそんなに構うのよ 」
「 さあ? わたしにもわかんない ただ、強いて言えば興味があるだけ 」
白は見えている口の口角を上げて楽しそうな表情を作った。自分に興味があると言われても自分は白には興味はない。それよりも、聞きたいことは次々と浮かんできてしまう。
「 照陽王は『巫覡』を気にしているというか恐れている気がするけど、どうして? 」
「 恐れてはいないな。ただ貸しがあるから気にはしているだろうけどね 」
白はそう言いながら、照陽王も宋先生も教えてくれなかった『巫覡』と秦陽国の関係性について話して聞かせてくれる。
『巫覡』は建国当時に秦陽国の要の役職を担っていた。その力は今より強く予見や神託で国を幾多の困難から救ってきたが、その力が強ければ強いほど権力を揺るがす可能性を疑われる。それで身の危険を感じるようになった祖先は王の元を離れて素性を隠し気配を消して生きながらえてきたという。
「 王自体は能力者だし、『巫覡』など恐れることはないのだろうけど、その取り巻きがこの力を許せなかったのだろうね。それに、外力(国外の力)の関与もいつの時代もあるものさ。わたしらはそんな危ない橋を渡る気はさらさらないからね 」
そう言い切る白の前髪に隠された瞳が光ったように感じた。
「 それにしても、秀鈴。あんたは異質で、危険だよ。いてはいけない存在は消えないといけない。だからさ、死んでもらわないとね 」




