精霊の降る夜
「リスト ちょっと歩こ 話したいことがあるの」
いつものように採ってきた薬草を調合していると突然 ラミスちゃんは真剣な顔で切り出した
僕たちはメンドゥー草を取りに行く旅までの準備もあり少しの間ではあったが平凡な日々を暮らしていた
そんな中ラミスちゃんは何度か発作のような症状を起こしていた
僕たちは最初に僕が降り立った平原の端、自分たちの街が見下ろせる丘の展望台をめざした
ここはカンナが夜景の見える絶景ポイントだと言って教えてくれたスポットだ
街を見下ろすと無数の小さな明かりが幾千もありそれがこの世界の人々の生活を物語っている
平原側を向くとそこには静寂の闇に光る無数の精霊たちが浮かび幻想的な風景があった
僕たちは展望台に備え付けてある木製のベンチに腰掛けるとラミスちゃんが静かに話はじめた
「リスト あのね この世界で魂は輪廻しているの 死んだら他の生命のあるものに生まれ変わるってこと この精霊たちもそう」
少しさみしげなラミスちゃんは闇に舞う精霊たちをぼんやりながめながら続けた
「触鬼はこの世界で死んで転生に失敗した魂の成れの果てといわれているの
どういった理由で転生が失敗するのかははっきりしないんだけど生前の心のあり方が関係しているみたいね」
なんだか普段と違うラミスちゃんの次の言葉に怯えながら僕も精霊たちをぼんやり眺めながら黙ってうなずいた
「まぁ容姿、人格、記憶を引き継いだまま転生することもよくある話だから・・カンナはしっかり引き継いでるわね まだ魂の定着が不安定みたい
ですけちゃってる時があるけどね」
「ああ そうなんだ」
僕はこの世界で不思議に思っていた問題が少しだけ解けた気がした
ラミスちゃんはこちらを向くと少しだけ声のトーンを明るくして言った
「リスト 私 もうすこしで 死んじゃうの」
「まぁ 魔王やめた時点でわかってたことなんだけどね だからリスト 来てくれてありがとう とても楽しかった 魔王で生きた数万年よりも
とてもとても楽しかった」
「それでね 私 死んじゃう前にリストを元の世界に返してあげたいの」
魔王の生贄の儀式でリストの召喚にはカンナが生贄になった
リストが元の世界に戻るのにも逆召喚で生贄がいる、できるだけマナの含有量の高い媒体が必要になるだろう
元魔王であるラミスは現魔王アガレスに自分が生贄となることを伝え逆召喚の術を魔王城にてとりおこなえるよう頼んでいたのだった
逆召喚のチャンスは1000年に一度この世界に浮かぶ2つの月が重なるその時だけらしい
そんな話をただ淡々と話してくれた
「ラミスちゃん」
僕はいろいろな感情がうずまき言葉が出ずただ名前だけを呼んだ
「リスト」
ラミスちゃんもただ僕の名前だけを静かに呼んでそっと手をにぎった
街の灯は美しく平原はただ漆黒の闇に精霊がしずかに彷徨う、そんな夜だった




