隠れ家
あたりは闇に包まれようとしていた
街に入ってきたのだがまわりが暗くなっているからなのか人通りは少ないが
窓から漏れる明かりと声から楽しげな団らんの様子が感じられたことに
安堵した
「うう お腹空いてきたなぁ
家についたらなにか食べられるかな....けどお金もないなぁ....」
「フゥ....やっとついた?....」
隠れ家であろう建物は古びた洋館をリフォームしたような小洒落た建物だ
魔物をよせつけないためか魔法陣らしきものが描かれた玄関がある
「こ こんばんわ」
ドアを開けるとカウンターの奥に背の高い髭のある整った顔の男が立っていた
男はこちらにするどい目線をなげかけるとカウンターからでてこようとしているようだ
やばい...なにか得体のしれない殺気ともとれる感覚で咄嗟に体を固くした
男は棒のようなものを片手にこちらへ歩いてくる 眉間にシワを寄せ悲壮な表情をみせたかと
おもうとおもむろに右肩に手をおいた
こわい・・・・そのとき現実世界であまり人に慣れていなかった為逃げることもできない
ほど硬直していた
「いらっしゃーい 大丈夫? けがはない? あらーこんなに汚れて....
ささっ カンナ様からきいてるわ....はやくはいってはいって
ほら 勇者がそんな不安そうな顔しないの!
あ わたし? わたしはここのオーナーでカンナ様のお友達...
プチコーン・K・ナベンナ3世 みんなからはナベちゃんって呼ばれてるわ
あ これ? なかでパン生地こねてたのよ コネコネコネコネ
明日の朝食はおいしいパンをごちそうするわ」
そうゆうとナベちゃんは手に持った棒を誇らしげに掲げてみせた
とりあえず2階の部屋でカンナ様がお待ちだわ
ホールの端にある階段を登り回廊沿いの3番目の部屋へ案内された
「ここね」
なべちゃんはコンコンとノックしてゆっくりとドアを開いた
部屋に入るとカンナは
ストラップのついた鍵を指でくるくると回していた
「さてと私は晩御飯を持ってくるわ 明日からは下で一緒に食べましょう」
そういうとなべちゃんはバタバタと階段を降りていった
「おかえりー」
「この隠れ家は結界によって守られてるから安心なのー
これ部屋の鍵ねー。なべちゃんが帰ってきたら作戦会議だよー」
カンナは微笑みながらそうゆうと部屋の鍵を勇者に渡した
「えっとーそーいえば名前もまだ聞いてなかったねー。」
「あ 僕の名前は無月りすと 神獣中学校2年生です」
「ふふ りすとちゃんってゆうんだねー」
なにかいじわるな視線を感じたかと思ったがあまり気にしないことにした
しばらく話をした
カンナがリストにもといた世界のことを興味ぶかげに聞いていたところ
コンコンと扉をノックする音が聞こえ
「ごはんおまたせー」
となべちゃんの声が聞こえた
扉をひらいたその先にいたのはたくさんの料理をワゴンにのせて
それを押してきた黒縁のメガネをつけた緑色のショートヘアーの美しい女性だった
「あ あれ 女のひと?」
「リストちゃん なべちゃんは女性よー」
カンナがそうゆうと
「そそ ひとりでカウンターにいるでしょ もうぶっそうたらありゃしないわ
この背の高さでしょ。付け髭でもつけてれば男に見えるかもってね。セキュリティー
よセキュリティー」
「そんな格好しなくても十分強いよってゆうんだけどねー」
カンナはにこやかになべちゃんに目をやる
「カンナ様 殿方の前でそれをゆうのは失礼ってゆうものでございますですわよ ホホホ」
と冗談めいた顔でカンナを見た
きっとこのふたりはいつもこんな感じなんだろうなと思った
「あ なべちゃんこっち リストちゃん 召喚方法が違っていなければクラスは勇者よー」
「あ よろしくおねがいします」
そういってリストはなべちゃんにペコリと頭をさげた