表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5




あれから何日が経っただろう・・。



2週間ぶりに見た人工的な建物につかの間の安心感と、もう少しでこの度も終わるという喜びも一瞬で消え去った。


父と俺は今、巨大なお城を目前に国へ入国するため城門の前の巨大な列の関所の列に並んでいる。

父以外の人間を見たのは何日ぶりだろう。

俺は前、後ろのおじさん、おばさんをジロジロ見ながら、あの巨大な森を抜けることが出来たことを実感し、

喜びに満ち溢れていた。

そして、見ず知らずのおじさん・おばさんに目が合う度に愛想を振りまき、

「偉いわねー」なんて言われながらお菓子をもらうのだった。


「意地汚ねぇ子供だな・・お前は」

父には貰ったお菓子の1欠片も分けてやらないからな。



ロージアン王国は光の魔法使いが闇の魔法使いを封印し、

2度と復活をすることがないよう、世界を見守るために築き上げた城に

世界中の人々が光の魔法使いを慕い、その城下に街を作ったことがきっかけでできた国だ。


見守るという目的から、世界に5つある王国の中で一番標高が高く、俺と父が苦しんだように、

王国たたどり着くのが困難なことで有名だ。


それでも毎日城門に奥の人が列を作るのは、世界を救った伝説の光の魔法使いのロージアン様の

ゆかりの地に行きたいという目的の人が多い為だろう。


「・・・て聞いてるのか。イーノア」

「聞いてる聞いてる」


いただいたビスケットを食べながら父の国の説明に相槌を打つ。


「良くわかんないけど、凄い人がいた国ってことだろ?」

「種類は違えど、どの王国にも凄い人がいた国だからな」

「父ちゃんよ、それを言ったらおしまいだぞ」

「お前はもう少し勉強というのに興味をもて。もう10歳だろ?

世の中の子供は、何かスキルを持っていてもおかしくないぞ」


急に真面目なトーンで父が言う。

相当暇なんだろう、ジロジロを俺を見つめて何かをつぶやいた。

その呟きに反応し、父の青い右目が一瞬黄色に光る。

「・・・うーん。何にも成長してねぇな」

一通り見たようで、小馬鹿にしたような言い方をする。


俺はおもわず右手で父の左頬をグーで殴った。


目が黄色く光ったのはスキルが発動した証だ


父のスキル【鑑定】は商人には無くてはならないスキル。

人・物全てを鑑定し真贋するこのスキルは、レべルが高い程、貴族から国王級の要人までに重宝され

大金持ちが約束されるスキルだ。


スキルが発動した父には、俺のステータスが見えているのだろう。

プライバシーの侵害だ。


「ちなみに父ちゃんが10歳の頃は鑑定スキル10レベルまで上がってたぜ」

ドヤ顔でそういう父に、【デリカシー】というスキルを取得してほしいと心から思う。


俺だってスキルが取得できていない現状を気にしていない訳ではない。

やっぱり成長が遅れているんじゃないかとか、将来までずっとスキルの取得がなかったらどうしようとか

思うこともあるけど、こればかりは焦っても仕方ないことなのだと思う。


だからこそ、父には煽って欲しくないものだけども、自他共に認めるダメな父なのでしょうがない。



「お・・。そろそろ動くぞ」


なんだかんだ言ってるうちに、列は進み、もう直ぐ入国の審査へと入る。


槍と盾を持った王国の門番たちが並ぶ人たちを1人ずつ止め、入国証の名前と持ち物確認をするのだ。


「止まれ」


父と俺の馬車の前に2人の門番が槍をクロスさせ馬車を止めさせた。

父が、入国証を出し「名前は?」と聞かれ「レオンスです」と自分の名前を名乗った。


余談だが、俺は世界で一番この検問が一番嫌いだ。


「この子は?」

「イーノア、息子です」

「息子ぉ??」


門番は息子という言葉に過剰に反応する生き物なのじゃないかというくらい不審な目を向けられる。

どの国に行ってもそうだ。

通行証には、父の名前と俺の名前が載っているで問題はないはずだ。


しかし

「全然似てないじゃないか!本当に息子かね?」

門番が俺と父に向かって言う。こいつにもデリカシーというスキルを取得してほしい。

「そうなんだよね。父親の俺も不思議ー、まぁ母親似だからですかね」

機嫌を悪くし、一言も喋らない俺に対し、慣れたようにのらりくらりと門番と話し

なんやかんや納得して貰えたようで無事に何ともなく入国が許されることになった。


10歳の子供で、スキルも何も持ってないやつに国を脅かすような脅威は無いということだろう。

ただ、俺が不愉快な目にあっただけだ。


「いつもの事じゃねぇの?機嫌を直せよ」

父は肘を俺の腕にツンツンさせながら言う。

「うるさい。怒ってない」

そういう俺だが、頬をパンパンに膨らませて言ってるのに気づいていない


昔から言われていることだ。

俺は間違いなく父の子であるにもかかわらず、一つも似ているところがない。

髪色も金髪の父に対し、俺はこの世界に珍しい黒髪ストレート。

目の色も青い父に対し、俺は真っ黒の目をして生まれてきた。


ちなみに母も金髪の髪に青い目だ。父は普通に門番に嘘をつく。


一言も喋らなり、ずっと下を向いたままの俺に父は苦笑いしながら


「そう怒るなって


ほら・・・イーノア見てみろ。」


あまりにしつこいからまっすぐ前を見ると



白いお城を正面に


街は、木と赤いレンガでできた小さな家が立ち並び商店を作り、商人とお客で活気に満ちている

森から流れてきている綺麗な水で作られた小さな小川には、各国の花が植えられて

街の中心である広場には、街の起源である、光の魔法使いロージアンの銅像が大きくそびえ立っていた。


世界で一番豊かで美しい国


それがロージアン王国だと、昔誰かが言っていた。



「・・・これがロージアン王国だ!イーノア」


すごいだろ!!


となぜか誇らしげに父が言うのだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ