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俺がハーレム要員になってどうする!? ~素振りの勇者との交友録~

作者: 遮二無二

たまにはアホ一辺倒の話でも

 一人の金髪の男が巨大な魔物と対峙している。

 ジリジリと互いに距離を詰めていたが、やがて魔物は痺れを切らしたようで、男に対して突進する。

 男は余裕綽々で回避して、魔物と距離を取ると、魔物の首から血が噴き出す。

 男は魔物の突進を回避すると同時に魔物の急所を攻撃していたようだ。


「きゃー! 勇者様カッコいいですわ!」

「流石勇者ね! 私が認めた男だわ! べ、別に何だって良いけどっ!」

「勇者君ならこの位の魔物は余裕ねぇ」

「わー、ゆうしゃすごーい」


 そんな男、勇者に対して賛辞を送る四人の女。


 ですわ口調の女の子、マジもんの貴族でお嬢様のセレスティナ=ウィンターズ。

 青髪ミディアムヘアで、普乳の剣士で、常にドヤ顔っぽくて少しアホな所が可愛い。


 如何にもなツンデレ口調の女の子のチェルシー=アーヴィング。

 チビッ子ピンク髪ふわふわロングパーマの貧乳で、その貧乳を気にしている所が可愛いアーチャーだ。


 落ち着いた口調のパーティー最年長で皆のお姉さんのレイラ=ストレンジャー。

 おっとりした魔法使いで、黒髪ロングで爆乳のグラマラスで少し天然の可愛い人だ。


 そして棒読みのやる気無さそうな女の子、ムツキ=アイカワ

 栗色の髪のショートカットヘアで巨乳の前線に立つ回復職、つまりは殴りアコライトって奴だ。

 そしてその女の子は俺だ。

 俺は心ここにあらずで、半年程前の出来事を思い返していた。


「ったく、人の話を最後まで聞かない奴は人間でも神様でも録でもねーのな」


 前世、俺は日本育ちの16歳で、男子高校生だったが、学校から帰ってる途中にトラックに引かれて死んでしまった。

 だが、ふと目が覚めると目の前に綺麗な女の人が立っており、その人は良くあるテンプレ通りこう言った。


「私は女神です。貴方は本来あそこで死ぬ運命では有りませんでしたが、バタフライ効果のせいで要因が積み重なり、事故死してしまったのです。ですが、もう一度新しい人生を歩めるよう転生させてあげます。何か希望があれば一つ叶えますよ?」

「ハーレム」

「え?」

「ハーレムが良いです! あ、現地で成長とか面倒なんで年はそのままで!」

「あ、はい」


 だって思春期真っ盛りの16歳だぜ? それはモテたいしエロい事がしたい。

 だけどあの女神、何をとち狂ったか俺を女に転生させやがった。

 確かに俺が欲した美少女だが、俺が女になってどうする!?

 だが俺はめげずに冒険者となり、頑張って暮らしていたが、そしたら寄ってくるわ糞野郎ども。

 がはは、良い体してるなヤらせろよ、じゃねーんだよ! こちとら元男だぞ!

 俺は転生してからはまぁそこそこ強いらしいのでそう言う輩は返り討ちに出来たが、あの時期はうざい野郎どもの相手にすっごい不機嫌だった。

 転生して5ヶ月位経った頃位だったかな? 王都で勇者が旅に出ると話題になり、仲間を募集していた。

 俺は王都からとにかく出たくて、応募したらすんなりパーティーに選抜された。

 何でも貴重な回復職だかららしいが、俺は違う理由だと思う。

 だってこのパーティー勇者以外は美女か美少女しかいないもん……絶対あの勇者の趣味だわ。

 俺、ハーレム王じゃなくてハーレム要員じゃん。


「……待たせた、街へ向かおう」


 そして紹介が遅れた。

 ムッツリ(推定)勇者のシモン=キネスタだ。

 金髪に寡黙と、何を考えているかわからないポーカーフェイスの超イケメンで、滅茶苦茶な強さな上、女の子に糞ほどモテる。

 て言うかパーティーの俺以外を除く皆から惚れられているはずだ。

 一月程一緒に旅をしているが、美女揃いであるパーティーの誰にも恐らく手を出していないであろう事から、俺はEDの疑いを軽く掛けている。

 俺はあまりこいつがよく分からないし、モテる事になんとも思っていなさそうなのがムカついている。

 王都から出れたのは感謝しているけどな。




「ふーっ。ストレス発散しないとやってられないぜ!」


 街で宿に着いた後は自由時間なので、俺は街の外に出て魔物退治をしていた。

 普段の戦闘は勇者が強すぎて俺らは要らない子状態なので、こうやって自由な時に俺はメイスで魔物を撲殺し、ストレス発散兼修行を行っていた。

 すっかり日が落ちてきて辺りが暗くなってきたので、俺は街へと帰っている途中、見知った顔が剣を素振りしていた。


「ふっ! ふっ! はっ! ふっ!」


 勇者のシモンだ。

 あいつはたまに皆から離れて一心不乱に剣を振るっている。

 あいつが強い理由の一つでもあるのだろう。

 俺はストレスを発散した直後だったので、気紛れにシモンと会話してみようと思った。


「よっ、シモン! お前もストレス発散か?」

「ムツキか……違う、ストレス発散では無い」


 くそ、イケメンは飛び散る汗も輝いてやがる。

 シモンはちょうど素振りを止めて帰るようなので、道中一緒に帰る事になった。

 そうだ、ちょうど良い機会だし、どうせなら色々会話して聞いてみるか。


「シモンっていつも皆から離れて素振りしてるよな。何でなんだ?」

「……発散の為だ」

「え、何だって?」


 声が聞き取り辛かったので俺はもう一度聞き直す。


「……性欲発散のためだ。素振りで気を紛らわしているんだ」

「は?」

「聞こえなかったか? 性欲発散だ。性欲発散しないとこのパーティーでは正気を保てない。皆可愛い過ぎる」


 聞き間違いかと思ったがどうやら正しいようだ。

 普通の女の子が言われたらどんな反応を取るのだろうか?

 ビンタ? それとも私が的な? とりあえず何か言おう、そうして俺から出た言葉は――――――


「分かる」


 皆が可愛い過ぎると言う言葉に対しての肯定だった。

 シモンは生まれた時から勇者の運命が決まっていて、ずっと王城で鍛えられていたそうだ。

 娯楽もなく、ただただ真っ直ぐに育てられた勇者を不憫に思い、一人の兵士が良くシモンの相手をしてやったそうだ。

 ただ、その兵士がもの凄く変態だったそうで、シモンにエロ本を差し入れしたり、取って置きの猥談をいつもしてくれたらしい。

 シモン少年はみるみる女体に興味を持ち、大人になればエロい事し放題! と益々勇者修行に精を出して強くなって行ったとの事。


「……だが、現実は甘く無かった……! 折角エロい女の子達と旅に出れたのに未だに俺は童貞だ……! エロ本みたくならないから性欲を満たせない。俺はこのリビドーを抑える為に素振りをしに行ってるんだ。本当はズブリと逝きたいのに……!」

「お前普通に最低だな!」


 兵士仕込みの下ネタが完全に中年位の年齢層だ。


「と言うかお前から誘えば他の三人は一発OKだと思うぞ? それが娼館で一発ヌいて貰えば良いんじゃねーの?」

「初めては好きな人としたいからな……」

「意外と乙女!」

「エロ本だったら相手から迫ってきて仕方なしに……というシチュエーションが多かったから俺はそれを期待していたのだが、一向に夜を誘ってくる人物が居ないからな。迫られたらしょうがない、しょうがないと言い聞かせて初体験を迎えるのも乙なものだと思っている」

「エロマンガに毒されたモンスター童貞じゃねーか!」


 夜を誘わないのは他の三人が自分らの牽制をしているのと、旅先の街の女の子達全員に睨みを効かせてるからだろう。

 そして恋愛の経験値ゼロのシモンからはムーブを起こさないと……見事な悪循環だな。


「……お前こんな話誰かにしたことあるのか?」

「世話になった兵士以外は一度も無いな。全く周りから話しかけられないからな」


 何かこう、イケメンだし寡黙すぎて何話して良いか分からないのだろう。


「幻滅されてモテなくなるから絶対に言わない方が良いぞ……?」

「モテなくなるのは困るから止しておこう。……ムツキは幻滅したのか?」

「あぁ、アホらしい。もう良いや、お前には話しておくよ。実は俺、転生者なんだ。前世は男だからお前の気持ちは分からんでも無い。そうだな、俺のいた世界の話からするか――――」


 俺はもう自分の悩みを、前世の事を話して楽になりたかった。

 このガッツリスケベのお馬鹿にだったら話しても良さそうだ。


「な、なんて事だ。板一つでエロい映像が見放題だと……!?」


 しかし一番衝撃を受けているのはスマホでエロ動画を見れる話だった。


「なんでそこに一番に食い付くんだよ。俺かなり凄い突拍子も無い話してるぞ」

「いや、ムツキに前世が男だったのは納得した。言動や性格もそうだが、普段はガチガチに肌を隠しているのに人目が無い宿とかだとかなり薄着になるからな。何度世話になった事か」

「は? シモンお前まさか俺で……?」

「当たり前だろう。エロ本が持ち歩けない今は身近なオカズでするしかない、そうとなればパーティーの皆しかあるまい。安心しろ、パーティーの皆でヌくときは平等に一回ずつ、計4回ヌいている」

「えぇ……」


 何と言うか大分ズレているなシモン……何か怒る気も失せたわ。

 逆に皆をどう見ているのか気になるから少し聞いてみるか。


「因みにどんな妄想なんだ?」

「そうだな、セレナだったら髪コ○だな。あの艶々とした髪で擦られたらさぞ気持ち良いのだろう」

「いきなりレベルが高いな!」

「チェルシーは罵りながら俺の逸物を足蹴にして貰いたいものだ。「変態っ!」とか嫌々涙目になりながらして貰えたら射爆了確定だな」

「くっ、これは分かってしまった……!」

「レイラはもう授乳手○キ以外あるまい。」

「お前ヤベー奴だな」

「ムツキは「俺は良いから」……そうか」

「なんでちょっとへこんでんだよ」

「いや、見た目は美少女の奴に自分の性癖を暴露する行為に興奮してたのに水を差されてな」

「お前は真顔で何て事言ってやがるんだ?」


 雑食なだけでなく、様々な状況から興奮に至れるヤベー奴、それが勇者シモンと言う男のようだ。

 とても普段はモテモテの男とは思えない言動とぶっ飛んだ思考だ。


「俺は17歳。頭より股間で考える年頃だぞ? 物語でも良く有るのだろう? 『世界と女一人、どちらを救うか?』とな。ヤれそうなら俺も女を選ぶ」

「そう言う意味で女を選ぶのはお前位だよ! 他の奴に謝れ! 大体よぉ、男が男にお前の事オカズにしてるから、なんて言われても嬉しくないだろ?」

「……待てよ? それはそれで興奮しないか? 自分が美少女と言う前提だが」

「もうお前と俺の立場を交換してくれ……」


 ポジティブ、プラス思考、楽観的、オプティミズム……ある意味人生一番楽しんでそうだな……


「……さっき話した通り俺はハーレムが欲しかったのに気がついたら女にされた上にハーレムの一部に組み込まれてたんだぜ? 分かるかこの苦しみを」

「苦しみは分かるとは言えないが、股間の聖剣を失った哀しみは同情出来る。さぞ辛かっただろうな、お悔やみ申す」


 凄くいたたまれない様子で俺を見るシモン。

 こいつ、性に関して情緒が深すぎだろ。


「だが俺は嬉しい」

「あ?」


 嬉しいと言われて何かカチンと来た。

 俺の転性関係の話だったらブッ飛ばしてやろう。


「こうやって下ネタを話せる男友達がずっと欲しかった夢が叶った。特にお前の世界のエロスはまだまだ奥が深そうだ。たまにで良いからこうやって俺と下ネタを話してくれ、ムツキ」


 シモンは一月も一緒に旅をした中で初めて笑顔を見せた。

 初めて見た笑顔が猥談の中でとは……


「はぁ……分かったよ、この下ネタ好き勇者め……!」


 別に、男扱いされたのが嬉しかったからじゃない。

 きっと、俺も思春期真っ盛りだからだ。

シモン=キネスタ


シモ(ン)=ネタスキ

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[良い点] 面白い!の一言につきます! 読みやすくて内容も面白い!
[良い点] 百合ハーにはならないという [一言] 酔った勢いでエッチして、妊娠して旅に出られなくなったりしそう
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