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親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。  作者: まさきち
親父が本格的に動き始めました(まだまだ事業の多角化は進んでいきます)
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現実逃避のため包丁を振るっています。

 まだ昼間ながら今日の仕事は諦め、厨房に籠もる。

 パンを発酵させる時間まではとれないので、ピザにすることにして生地を作る。

 トマトがないので、少し物足りない感があるかも知れないけど、まぁ、良いだろう。

 小麦粉、塩、ぶどう酵母、オリーブオイルで生地を作り、しばらく発酵させる。

 次に同じように生地を作るデザートに着手する。

 以前に試作した素焼の気化熱瓶きかねつかめでラード、バター、小麦粉、砂糖、それに塩ひとつまみを入れてそぼろ状になるよう手早く混ぜる。

 バターはバカ高いし量もそれほど残ってないのもあるから、ラードでかさ増ししだ。

 アンのところで作ったクッキーでもラードを使ったが、意外とうまく仕上がったので今回も使ってみる。

 専用の型はないが、代わりになるカップに生地を入れて串で突いてから瓶で休ませる。

 フィリングは砂糖が届いてからだ。

 小麦粉を出したついでにクレープを焼いておく。

 焼いている途中でマーリヤが生ハムの原木を持ってくる。

 少し多めに生ハムを切っておく。

 オリーブオイルをかけるだけのも少し用意したいからだ。

 気が付くとマーリヤが横でたまねぎを準備してくれていた。

 こっちのたまねぎは結構辛いので、よく水で晒しておきたいのでありがたい。

「なぁ、裕紀。あーしも手伝おうか?」

「料理したことあるの?」

「したことない。」

「今日はお客様だし、座って待ってていいよ。」

 こっちに来てからは魔王様だしな。



 どうしようか考えても、何も思い付かないまま料理は進む。

「裕紀、砂糖。」

「ありがとう。こころさんはもう休んでて良いよ。」

「見てる。」

「別に良いけど。」

 厨房にはマーリヤとアンも既にいる。

 業務用の厨房だから、広いので邪魔にはならないけど、なんかやりづらいな。

「あ、こころさん、あのバニラもどきは?」

「ん、持ってくる。」

 こっちではガラスべと呼ばれるアカシア科の低木で葉は強い匂いがあるけど、細い枝を乾燥させたものはシナモンとバニラとよく分からない何か合わせたような香りがする。

 乾燥させないとスパイシーさが強くてまた全然違うけど。

 これを牛乳に煮出して使うと、ほぼシナモンとバニラを混ぜた香りに近づく。

 煮出さず、そのまま粉末などにして入れると、スパイシー過ぎるのだ。

 それでもまだスパイシーさは残るため生クリームには使えないけど、カスタードクリームのようなものなら十分だ。

 あ、プリンにも使えるな。

 今日はデザートは2品だな。

 カラメルが上手くできると良いけど。

 失敗すると固まるんだよな。



 生地の発酵が進んだので、ピザの準備から始める。

 ピザはたまねぎ、チーズ、ソーセージ、岩塩だけになるけど大丈夫だろう。

 本当はピタを作れれば生ハムも入れることができるかも知れないけど、生ハムのクレープを作りたいのでこれで良い。

 トッピングはアンに任せて、マーリヤがクレープ生地を焼き始める。

 焼けたクレープにこころさんが生ハム、チシャのようなレタス、カマンベールに近いチーズ、晒したたまねぎを乗せてから巻いてゆく。

 薪窯でピザを焼くのは、最年少のアガタの役目らしく、窯の温度を確認している。

 気が付くと、ウチの女子が揃ってワイワイしながら料理をしている。

 楽しそうなのは良いけど、どういう状況なんだろうか。



 中庭にあるレタスを取りに出たところ、人影が見えた。

 マントのフードを深く被った宗一郎さんだった。

「何らや僕らを探る気配がしたんで見に来たんだけど。あれは誰かな?」

「あ、最近知り合ったアンです。彼女も転生者なんです。」

 少し不思議そうな表情を浮かべる。

「システムの適用を外れたらしいんです。」

「なんっ…」

「身体を作り変えるスキルがあるらしくて。彼女にしかできない芸当みたいですけど。」

 宗一郎さんは理解が追いついていないようで、次の言葉が出てきていない。

「今日はご飯を食べに来たみたいで、作ってるところなんです。また今度、彼女のことは話をしに行きます。あ、親父に報告しといてもらって大丈夫なんで。」

「問題はないんだね?」

「はい。友達ですから心配ありません。大丈夫ですよ。」

 あれ?

 宗一郎さんの顔が綺麗になっているな。

 前は赤黒い痣のようなものがあったんだけど。

「なんか、体調良さそうですね。」

「うん。体調というか、身体がずいぶんと綺麗に戻ってきててね。もう見た目は生前と変わらないぐらいなんだよ。」

「じゃ、宗一郎さんもそろそろ食事できますか?」

「いや、さすがにそれはまだ怖くてね。」

「そうですか。残念です。」

「僕を誘おうとしてたのかい?」

「ええ。ひとりぐらい増えたって大丈夫だったんですが。」

「ありがたいけど、もう少しこの身体の様子を見てからだね。それじゃ、僕はもう戻るよ。」

 そう言って宗一郎さんは姿を消した。

 気を取り直して、レタスを収穫する。

 ふと、近くに植えていた大豆に目が行く。

 青い房がたくさんついているが、少し小さいか。

 いや、こころさんなら何とかできるか。

「こころさーん!」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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