ゆっくりと皆で話をすることも大事です。
「話は変わるんだが、皇帝から情報を貰う約束してなかったか?会わずに帰ってきたけどさ。」
「ああ、それな。別に構わんねん。ワシが『先住者』と接触したがってる言うのは、スキルに頼らん魔法っちゅう武器を求めてるって思わしたかったのと、女神に喧嘩を売るって宣戦布告をするためや。まぁ、ワシには魔法の適性が無いから使われへんらしいけどな。」
「宣戦布告って、皇帝は反女神じゃなかったのか?」
「そもそもこの世界のシステムの目的は、蟲毒の壺の役割とともに、女神が使いたいスキルの育成や。近代化はスキル育成を阻む。」
「皇帝はあえて近代化を遅らせてる?」
「多分な。考えてみぃ。自分が何百年も生きるとして、もっと便利な世の中に変えたいと思わんか?それができる立ち場におるのに手を出しとらんやろ。」
「皇帝って年相応だろ?兄弟だっているし。」
「アレはシステムを使って、人格や記憶を自分の子どもに移しとるねん。」
「自分の子どもを乗っ取るのかよ。」
「まぁ、完全な乗っ取りやないみたいやけどな。代々の政策を見たらブレがあるから、元々の人格は残っとるように見えるんや。そもそも、記憶なんて脳味噌っちゅうハードウェアに乗っかってる情報や。転生者いうたかて、何もないところに前世の記憶は持って来れん。そのまま持ってくるか、ディスクコピーみたいに脳から脳へ新しいハードウェアに丸まんまコピーするしか方法は無い。それでも成長過程で異なる部分ができるから、全く同じとはいかん。今のところはや。」
「話を戻しますけど、皇帝は何のためにそんなことしてるんですか?」
「アンチ女神ホイホイや。それなりに反勢力がおらんと戦争も起きへんからな。」
「そんなことして、何の得が?」
「女神側としたらこの蟲毒を終わらせるための戦争をいつでも起こすことができるようコントロールできる。」
「皇帝のメリットは?」
「不老不死ちゃうか?逆らうと人格ダウンロードを止めるとか脅されとるか、完全な不老不死で釣ってるとかかな。調べたんやけど、代々、暗部を使うて反乱分子のコントロールをしとる節があるみたいやしな。」
「自分の子どもを犠牲にしてまで不老不死が欲しいのかよ?」
「子どもを道具にしか思わんような奴も多いしな。多分、不老不死を目の前にしたら、そう思う人間は少なくないんやないか?人間に寿命が無くなったら、子どもなんて作らんようになるやろし、愛着も持たれへんようになるやろから、当然の反応やと思うで。」
昌也は椅子に座り直して言葉を続ける。
「多分、システムを使えば実現できるから功労者として褒美をやるくらい大したことないやろ。それで、システムを守るための忠実な犬になるなら安いモンやな。」
「人としてどうかと思うよ。」
「まぁ、寿命があるから人間らしく生きれるんやろな。もっと人間が物質的にも精神的にも進化すりゃ変わるんかも知らんけどな。」
「そういや、宗一郎って、寿命あるの?」
「実質的に不老不死なんじゃない?」
「普通の肉体を使うんやったら、こまめにメンテナンスが要りそうやけど、肉体の活動を生理的に止めたらメンテナンスフリーで不老不死が実現できる。」
「それが僕?」
「まぁ、そういった思想で作られた可能性があるってことや。」
「ちょっと待って。僕って肉体は活動してないんだよね?」
「せやな。脳味噌もやな。」
「脳すら動いていないのに、どうして考えたり行動できたりしてるの?」
「システムの根幹はアカシックレコードを模して作られた生脳グリッドシステムや。まぁ、ホンモンがどんなんかは知らんけどな。えっと、この辺の話、サキにしかしてへんかったかな?」
「生脳って…」
「ああ、そのまんまや。システムから受ける天の声も、経験値計算も、魔法陣の準備もや。方針さえ与えたったら複雑な演算でもイレギュラーの対応でも何でもしてくれる、最高に便利な演算装置や。」
「その脳って…」
「生きてた人間、使徒や魔族から回収やな。」
「僕の脳ってまさか…」
「そのまさかやと思う。宗一郎のんは、システムから独立して、別に置いてあると思うけどな。何にしてもシステムを破壊する時に奪い返さなアカンねん。」
「本体はシステムで保管しながら、身体は外界で動かすってことね。なんかアバターみたい。」
「でも、身体は死んでるんだよね。」
「魔境に住むメチュカリって知ってる?」
サキが代わって話し始める。
「ううん。」
「動物を使った大道芸をする旅人の集まりなんだけど、彼らの中に生脳を別の肉体に移植する技術を持つ者がいるの。」
「まさか、使ってる動物って…」
「多分な。システムと『先住者』の持つ両方の技術を駆使してるらしいわ。元々、遺族を弔う風習から発展したらしいわ。」
「うわ…。それ以上聞きたくないぞ…。」
宗一郎とラファエルは顔をしかめている。
「まぁ、聞き。違う生き物に人間の脳を入れたところで機能する筈がないわな。」
「確かに。」
「この技術は脳を核として『先住者』の力を借りて小規模な精神体のネットワークを構築して、肉体を制御するっちゅうコトや。」
「じゃ、僕の死んだ肉体でも大丈夫ってこと?」
「恐らくな。『先住者』は身体を持たんから、なんとか宗一郎の精神を留まらせれる方法が無いか思うて探しとったんや。思わぬ収穫やったわ。」
「僕のことそうやって考えてくれてたなんて。ありがとうございます。」
「打算や。貴重な戦力に死ぬために働けなんてよう言わんからな。ほんで、今後の予定でいけば、生脳グリッドシステムへ強襲をかけて、女神本体を誘き出す。まぁ、女神本体をどうにかできんでも、システムさえ破壊できればエエと思ってる。」
「その前に、システムを守ろうとする奴らとの戦争になるってことですよね?」
「まぁ、当然やな。」
「パンティアと帝国の両方を敵に回すってこと?」
「国が抱える使徒たちをどう抑えるか。」
「使徒だけじゃなくても、2つの国と全面戦争じゃない。いくら力を持ってても無理よ。」
「まぁ、そこはなんとかして切り崩すしかないからな。頑張るわ。」
「その話、裕紀にはしたの?」
「今、若い衆にウチのぼんぼんを呼びに行かしとる。」
「裕紀はどうするの?」
「話はする。決めんのは自分や。もう親が出しゃばるトシでも無いやろからな。」




