新しく仲間になった魔族は叔母さんだったようです。
ラファエルと宗一郎が部屋に入ってくる。
ここは、トリキアの昌也のアジトである娼館の一室だ。
「みんな揃ったことですし、新しい仲間に改めて自己紹介をしましょうか。」
今日は何故か宗一郎が仕切ろうとしているようだ。
「僕は宗一郎。大学生でした。ドラウグルというアンデッドです。死体をそのまま持ってきたという体なので、名前は生前のままです。えっと、川で溺死です。女の子を助けようとしたんですが、二人共溺れてしまいました。女の子を助けられなかったのが悔やまれます。」
「えっ?そうだったのか。」
「あ、ワシ、そのニュース見たわ。女の子は自力で岸まで泳ぎ着いて無事やって。」
「複雑ですけど、女の子が助かって良かった。」
「次はオレか。オレはラファエル。見ての通り人狼だ。」
そう言いながら、人型から人狼に変化してゆく。
「元々は坂上 宏太ってんだ。高校中退で連れとバイクで馬鹿やって死んだんだ。まぁ、こっちの両親は良い人たちでさ、もうこっちの人間だと思ってるから、ラファエルって呼んでくれ。」
「あれ?ラファエルに両親がいるってことは、こっちで産まれたんだよね?」
「ああ、そうだけど。」
「アンタ、今何歳なの?」
「3歳だ。」
「じゃ、ラファエルって年少さんじゃん。」
「年少さんって、幼稚園児じゃねえよ。人狼は成長が早いんだよ。」
「もしかして、人狼って見た目に反して脳みそ幼児ばっかりなの?」
「あ、確かに言われてみれば…」
「そうか、ラファエルは3歳か。」
「笑うな、宗一郎。」
「じゃあ、次はサキさん。」
「え、アタシも死因まで言うの?」
「別に無理して言わんでもエエで。」
「アタシはサキ。古賀 早紀。サキュバスよ。短大生だったの。こっちに来てから13年になるけど、アタシらはラファエルと違って大人の姿で産まれるから。最初から子どもじゃないから。」
「そういや、サキって何で生前の名前そのまま使ってんの?」
「いいじゃん、別に。それより、ええっと、由佳ちゃんだっけ。」
反応しない由佳に昌也がフォローを入れる。
「この子が由佳ちゃん。アルラウネやっけ?」
由佳は黙ったまま頷いた。
「由佳ちゃんのことはまた、ワシからみんなに話しとくわ。そんでエエか?」
再び由佳は頷いた。
「うん。落ち着くまで、部屋におるか?」
やはり由佳は黙ったまま頷くだけであった。
「まぁ、細かいこととか、またワシから説明するわ。後で部屋に行ってエエか?」
少し悩み、また黙って頷いたあと、静かに部屋を出ていった。
「由佳ちゃんはワシの嫁の異母妹にあたるんや。」
「元妻の異母妹ねぇ。」
「元は付けんでエエ。裕紀も知っとるやろけど、あんまし会うたこと無いから顔は忘れとるかも知らんな。」
「随分とご執心だから、浮気相手かなんかと思ってた。」
「そんなんちゃうわ。あの子な、会社で酷いセクハラとかパワハラに遭ってたみたいでな。それを聞いて心配はしとったんやけどな。元々ちょっと疎遠な関係やってな。迷ってたら間に合わんかった。」
「自殺か。こっちサイドは全員死人だからな。」
「こっちの世界に来てからは、人間に捕らえられて、娼館に繋がれとったんや。その後、ゴブリンに連れて行かれた。ウチの娼館の女の子らはワシがゴブリンから取り返してきたのは知っとるやろ?ワシが行った時にはあの子はもう逃げ出した後やったんや。」
全員が苦々しい顔をしている。
「あの子は喰らった者のスキルを奪うスキルを持っとる。それでいろんなスキルを手に入れて何とかゴブリンの巣から自力で逃げ出したんやけど、どっかで喰らった『狂戦士』みたいなスキルが暴走してあの状態やったと思うんや。」
「そうか。そう言えば、あの子、マントをずっと被ってるけど、大丈夫なのか?」
「ああ、そこんトコ心配やねんけどなぁ。」
「植物系の魔物って、植物部分の保持に多量の魔力が必要なんじゃなかったっけ?」
今、由佳の着ているマントは鉛線で織った裏地を付けている。
鉛線が魔力などを断絶し、その内側はシステムからの影響を受けなくすることができるのだ。
肉体を自由に変化させることができる魔物は、その肉体部分が魔力で作成された擬似的な物資で構成されていることが多く、そういった部分の維持をシステムの機能に頼っている場合が多い。
その逆で、ゴーレムのような無機物は肉体は全く影響を受けないが、生命の維持自体をシステムの機能に頼っている。
サキは前者で、マントを羽織ると肉体に影響が出る。
恐らく宗一郎は後者で、マントを羽織るとただの屍に戻ると思われる。
危ないので試してはいないが。
ちなみにラファエルはただの人間になるだけだった。
「さっき、少し身体を調べさせてもらったけど、今のあの子の肉体は、ほぼ人間になってるよ。」
「ほぼ人間って、もうアルラウネやないってことか。」
「アルラウネは自分の蔦や葉を武器にするけど、観察してた時から気が付いてたけど、自分の身体じゃなく、周りの木々を使ってた。」
「種族進化か。ドリアードぐらいか?」
「そうね。」
「また本人に聞いとくわ。」
「アタシから聞いておく。」
「ほな、頼むわ。もう少し様子を見てから、一部屋あの子用に改装するか。」
「ずっとあのマント着てる訳にもいかないからね。」




