親父は再会できたようです。
「アンタらは魔族のアルラウネの位置は捕捉できてるのか?」
「ちょっと年長者に対する口のきき方を教育したほうがいいみたいね。」
言われた蓮の目が鋭くなる。
蓮たちのパーティーと帝国討伐遊軍の小隊が昌也のキャンプ地に到着したのは、更に2日後のことだった。
120名程の部隊での行軍と考えると、かなり早い方ではある。
それだけの人数がキャンプの設営をしているのでかなり騒がしい。
深い森の中だったが、お互いの居場所が分かる魔道具があるので、合流はそう難しくはなかった。
お互いの居場所が分かるとはいっても、方向と距離を音で示すという原始的なものではあるが、十分役に立つ。
サキと鑑定阻害などの効果を持つ魔道具である装飾品を重ねて着けたラファエルを両脇に従え、焚き火を挟んで蓮たちと向かい合うように座っていた。
蓮からすれば、そもそも命を懸けないといけないほど強大な魔族と戦うサポートを皇帝から捩じ込まれた。
それも、ジョブを持たないと聞いている男だ。
当然、戦闘能力が高いとはどう考えても思えないうえ、ほぼ初対面で信頼などない。
彼らの気持ちは分からなくもない。
それに、今の蓮たちは使徒という立場だけでなく、徐々に功績を積み重ねて討伐遊軍の中での信用を勝ち取ってきており、当然その自負はあるだろう。
「今回の目標は並の魔族じゃない。俺らも魔族を倒したことはあるが、それでも何度も死にかけてる。アンタらが死ぬのは勝手だが、魔境の奥に逃げ込んだり、興奮させて人里で暴れられたら被害を被るのはこっちや一般人なんだ。」
「まぁ、心配も分かるけどな。この2人だけで充分君らと渡り合える実力者や。見せてやりたいトコやけど、今は無駄な消耗を避けたいからお預けやな。ここは素直に退いとってくれんか?」
「何だったらその実力見せてもらっても良いんだがな。」
「蓮殿ここは…」
蓮は直接皇帝と話す機会を与えられてはいるが、一緒に来ている討伐遊軍はあくまで帝国の一機関だ。
討伐遊軍としては勅令に背くことなどできはしない。
それをすれば、同行する全員に迷惑がかかることぐらい蓮は理解している。
「分かってる。済まない。」
蓮は同席していた討伐遊軍の幹部に謝罪する。
「もし、無事に帰ってきたら、少し話をしょうか。文句でも何でも聞いたるから。ほな、後でな。」
昌也は臍を曲げている蓮を振り返らず、手をひらひらとさせなが、森の奥に向かってゆく。
10分ほど経っただろうか、森の奥から死の気配が近付いてくる。
「それじゃ、邪魔なのは片付けてくるわ。」
「ほな頼むわ。」
アルラウネに追い立てられた魔物たちが、眼前のラファエルたちを見て、絶望を振り払うように雄叫びをあげる。
ラファエルは獣人化し先頭を走る。
続くサキは蝙蝠のような翼を広げ、上空からラファエルを追う。
宗一郎は急ぐでも無く、前に歩みを進める。
3人は向かってくる魔物だけを攻撃し、横に逃げるものは追わない。
殲滅する必要は無いのだ。
「来たっ!」
魔物の迎撃はほんの数分で終わり、3人が昌也の下へ戻ってくる。
「ほな、行ってくるわな。」
3人と入れ替わりに昌也が立ち上がり、歩き始める。
「アタシ、信じてるから。」
「新しい仲間、期待してるぜ。」
宗一郎は言葉は無かったが、笑顔を向けてきた。
槍や剣のような葉やハエトリグサのように牙を剥く葉だけでなく、炎、風、氷、雷の魔法が押し寄せるように迫ってくる中を昌也は駆け抜ける。
葉は盾で防ぎ、風は伏せ、マントで炎をいなし、槍を地に突き立て雷を逸らす。
その暴力の嵐の中心には、白い肌の緑の長い髪をした少女が歩いていた。
その身体は葉や蔦それに花で飾られドレスを纏っているようにも見える。
少女はただ歩いているだけだ。
草木は彼女を避けて道を作り、周りの草木が彼女の代わりに攻撃を行う。
そう、草木が彼女に代わり魔法を撃つのだ。
剃刀の葉をつけた羊歯がマントのフードを切り裂く。
頬に幾筋かの赤い線が走るが、その速度はゆるめない。
いつの間にか左右の手にバックラーを持っており、押し寄せる葉を防ぎながら少女に近付いていく。
左右に振りながら緩急をつけて向かってくる昌也に狙いをつけにくいようであった。
あと数歩、左手のバックラーが弾き飛ばされるとともに、おもむろにマントを開く。
初めて少女が歩く以外の行動をとろうとするのを見る。
軽く振り上げた手は、貫手となり、脇腹を抉る。
少女の左手は防御にまわる挙動を見せるが無駄に終わる。
ただ、マントを被せられただけなのだから。
「約束を果たしにきたで。」




