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軍を動かすのはやっぱり大変みたいです。

 帝国帝都北西部にあたるリューリクは、北側の海岸線を上辺とした正方形に近い領土ではあるが、その左辺から正三角に魔境に接する森に侵食されたような形状である。

 海岸線や東側は交易で栄えているものの、南部、西部は厳しい寒さで土地も痩せており、文字通りの寒村が点在しているだけである。

 基本的にノヴェルと同じ民族が多く、ノヴェルがリューリクの飛地のように見えるが、リューリクはノヴェルから入植した人間たちが興した国である。

 南部と西部はガルディアやパンティアに近い人種に見受けられるが、どちらかと言うと近隣諸国から様々な人種が集まってごった煮になっている。



 目標であるアルラウネの魔族はノヴェル方面から一度東側に向かったものの、南下を始めリューリク南西部にいるとの情報があり、最も近くにある帝国討伐遊軍の拠点にきていた。

 その拠点に駐留する部隊の高官が迎えに来ており、彼らから話を聞けるよう手配もされている。

 その中で襟章の多い男が昌也に向かってくる。

「お疲れ様です。」

「民衆の避難は上手くいってるみたいやな。」

「はい。」

「獣系統の魔物より人型の方が多かったか。」

「はい。今のところ人型のモンスターが多いですね。最初の方はゴブリンが多かったんですが、トロールの割合が増えてきてまして。このところは避難するしかできなくて、付近の村は荒らされ放題です。」

「いや、正しい判断や。無理してアンタらが動かれへんようなったら助かるモンも助からんようになるからな。」

「そう言ってもらえると有り難い。」

「ほんで、トロールの出没頻度はどないなってる?」

「10日前に北側の近隣の村に現れてから、徐々に数を増やしながら南に向かっています。最初に現れた場所は歩いて5日程度の距離でした。村のあった場所を襲いながら、数を増やしながら近づいてきています。」

「直近で数を確認したのは?」

「4日前で18体のトロールとそれに付き従う無数のゴブリンがいました。」

「この拠点に難民キャンプができてるっちゅうことは、無事に避難させることができたんやな。ようやった。ご苦労さん。」

「はっ!」

「後で地図に魔物の出現状況を落として提出してくれ。使徒のパーティーを討伐に向かわせる。」

「なんでアンタが仕切ってんだ?」

 昌也は帝国軍の装備は全く身に着けず軽装であり、この辺りでは全く見かけない黒眼の東洋人であるため、先代の使徒やその関係者に見えるだろう。

 民衆を避難させてきた部隊に対し先頭に立って情報を聞き回っていたため、指揮官か何かだと思ってしまうのは仕方が無い。

 使徒に見える人間の中でも最年長であるうえ、それが堂々と先頭を歩いているのだから、先程の部隊長らしき男を責める訳にはいくまい。

「まぁ、流れでな。それより、トロールの討伐は早めに済ましとかな、人間を探してここに雪崩れ込んでくる可能性があるからな。」

「分かってるよ、それぐらい。それより、アンタらは目標にはいつ接触するんだ?」

「見つけるのにどんぐらいかかるか分からんけど、3日で見つけて3日は様子を見たい。接触はそれからやな。」

「俺たちが合流してから接触してくれ。」

「それは努力するけど、保証はできへんわ。確かお互いの居場所を特定できる魔道具を借りてるって聞いてるんやけど?」

「魔力が全く無いと聞いてたが、使えるのか?」

「持つのはワシやなくてもエエからな。」

「確か仲間が居るって言ってたな。」

「まぁな。」

「何で連れて来ないんだ?」

 帝国軍の討伐遊軍に混じり蓮たちのパーティーは見えるものの、ラファエルやサキの姿は見えない。

 魔族である彼らはシステムの影響により基本的に人間と相対した際に互いに嫌悪感を抱くようになっているからだ。

 夢魔サキュバスであるサキには、その嫌悪感を緩和するスキルがあるとはいうものの多人数へ同時に作用させるのは難しいということなので、彼女もここには来ていないのだ。

「それはおいおい分かるわ。サッサと兵舎で打ち合わせすんで。」

 ひらひらと手を振りながら兵舎に向かって歩き始めた昌也に不満げな顔で蓮はついていった。



 何故か終始昌也が会議をリードしていた。

 聞き上手というのか、昌也は同席している将校たちからどんどん情報を聞き出し、スタンピードと魔王と思われる魔物の予想される位置を割り出す。

 苦々しい表情で蓮は見ていたが、途中からは吹っ切れたように意見を出すようになっていた。

 後日、蓮のパーティーの最年長である魔術師の木村は、昌也が将校たちから情報を引き出し、それをもとに蓮に意見を出させ、取りまとめや議事の決定を促しているように見えたと言っていた。

 果たして、すんなりと作戦はまとまり、作戦の参加者は翌日の出発準備に取り掛かった。

 多数の難民を受け入れているこの基地から大量の食糧を持ち出すのは難しいため、輜重部隊の半数近くは東部からの新たな兵站線を作るために奔走させることに決まっている。

 そのため、空の馬車も多く準備はそれほど掛からず喧騒はすぐに止んだ。

 ただ、少しでも地位のある将校は各部隊の徴発割当や交渉の準備のため、徹夜を強いられたようだったが。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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