こどもたちを食べ物で釣ることにしました。
「役得って何だよ。」
俺はリヤカーから箱を取り出し、その中身を見せる。
自分で解体する場合、内臓、中落ち、骨が手元に残ることとなるのもメリットのひとつでもある。
解体の際に余る足先は、毛を取ってから、時間をかけて塩茹でにする。
中落ちとアバラ骨はにんにくと塩、それに野菜くずと一緒に煮込んでスープにする。
八角があれば、バクテーっぽくなるんだが、充分だろう。
因みに料理は母親も俺も親父から教えてもらっていた。
多趣味というか何でも出来る器用貧乏だ。
親父からすると、解体は料理の延長の感覚らしい。
美味いものを食うためにきれいに捌くとか言ってたな。
早速、豚の血と内臓を使ったソーセージを食べてみるが、なかなかの臭いだ。
次に作る時は内臓はしっかりと茹でこぼしするようにしよう。
あと、香草類も入れたほうがいいな。
しかし、肉などほとんど口にしたことのないこども達にとっては、違ったようだ。
「コレ、うめえ!」
「すごい!肉だ!」
その言葉の後、みな無言で口に肉を詰め込んでいく。
俺の取り分もほとんど食われてしまった。
一体だけだと、10人分には全く足らないが、3体以上だと余りそうだ。
屋台での販売も今後考えても良いかもしれない。
翌日も朝から街道に出張り、豚を農夫から買って、解体していく。
今日は3体の解体を予定しているため、早めに出てから、薪を女の子達が運んでくる手筈になっている。
解体を教えながらなので、時間を少しでも節約したかった。
女の子達にソーセージの作り方や内臓の処理を教える必要もあったからだ。
解体とソーセージ作りを終え、俺は宿屋に売りに行く。
宿屋『肉食い亭』に着くと、店主がでてくる。
「おお、来たな。」
「ああ、イヴァン。買値を聞こうか。」
「その前に、箱が3つあるのはどういう事だ?」
「何が言いたい?」
「いや、済まねえ。カリマンのとこも注文は一頭だった筈だろ?」
「転売か?」
「鋭いねぇ。」
「アンタらが店を持つまでの間だけで良い。構わないだろ?」
どうしようか?
今後の展開を考えた時に、人材の確保という問題もあるし、販路が一定確保されているのなら、後の成長も見込めるだろう。
ただ、ほぼ初対面の人間を信じるなんて難しいだろうし、イヴァンの見た目は胡散臭い。
とは言うものの、販売量が増えるのは有り難い。
「転売でも、売値は変わらんぞ。」
「ああ、大丈夫さ。」
卸値で転売して儲けが出るってことは、かなりの値がつくってことか。
「買値を聞いてからだな。」
「一頭、銅貨24枚。どうだ、悪い話じゃないだろ。仲買以上、問屋以下だ。転売も見越してこの値だ。これ以上買い叩かねえ。場合によってはまだ上げる。」
屠殺場からの卸値で銅貨20枚だから、最低限のラインは超えている。
問屋の卸値は銅貨最大40枚というところだから、それに比べればかなり安いことにはなるが、屠殺場の卸値を超えているだけでも御の字だろう。
「分かった。それなら、転売も頼む。」
「決まりだな。」
イヴァンがニヤリと笑った。
「それと、アンタら、内臓とかを料理できるらしいな。」
「どこで聞いた?」
「お前の兄貴からだよ。売れるようになったら持ってきな。」
「売れるのか?」
「ああ、みんながみんな金持ってくる訳じゃねぇからな。」
なるほど。
低価格メニューの提供か。
「そんなに料理が出てるのか?」
「ウチはそれが売りだからな。」
「考えておく。」
「それじゃあ、明日から最低2頭は欲しいな。3頭までは買い取る。」
「分かった。」
あれ?
胡散臭い外見と違って、意外に良いオヤジなのかも。
次の宿屋『べっぴん亭』では、がっつり値切りに来られた。
まぁ、女を売るのがメインなので、料理をそこまで出さないのもあるのかも知れないが。
とりあえず、『肉食い亭』と同じ銅貨24枚で買い取らせた。
ただ、主人のカリマンの食い下がり方が半端なく、少し心配になったため、再び『肉食い亭』に足を向ける。
「イヴァン、居るか?」
「ああ、ユーキの旦那。」
「ちょっと気になる事があってな。」
カリマンの様子が気になるため、店に一人スラムの子を監視に付けることにした。
こども達には、2日だけは報酬の支払いを待ってもらったが、今日から報酬を支払っていく。
翌日は4頭を解体し、イヴァンのところに3頭、カリマンのところに1頭を卸し、女の子たちのところに向かう。
女の子たちは、新しく買った大鍋一杯の骨の煮込みをスラムに売りに行くため、その護衛だ。
少額貨幣が無いため物々交換にはなるものの、護衛は必要だろうし、儲ける手段を持てたというだけで、嫉妬の対象になる。
ブラッドソーセージは、売れそうな仕上がりになるまで様子見で、みんなで食べることにしている。
親父の方は、ほとんど別行動している。
帰りは酒臭いし、一体、何をしているのやら。




