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逃げ帰ってきたのは仕方ないでしょう

 パンティアの使徒、如月は何とかやり過ごしたが、何だかカレンの使徒に会うのはまずい気がする。

 それに、柊華も近くには居させたくない。

 ウチの誰かが来たら、入れ替わりでさっさと帰ろう。



 まだ、馬車一台分に少し足りないぐらいしか無かったが、魔物の毛皮を積ませ、小隊長だけ残して馬車は先に帰らせることにした。

 帰るにあたっては、第三便に準備した肉と蕎麦の他に焼き固めたパンを調達するのと同時に、大工道具や、テント用の幌なども積ませるように指示する手紙も持たせた。

 帰りの馬車に護衛をつけたため小隊長だけが残ることになったため、ニコライたちに日当を食料で払って増やしたので、次の日からは少しだけ立派なテントを張ってゆっくり眠れるようになった。

 また、ニコライと如月が噂を流したため、翌日からは『銀灰の翼』の炊き出しを目当てに教会から抜け出てくる街の人も出始めていた。



「意外とすることがないな。」

「もう、大人しくしててください。」

 マーリヤにも小隊長にも止められて、何もせず過ごすこと3日、第二便が到着する。

「さて、やっと仕事だな。」

 またマーリヤを連れて城、教会と回っていく。

 如月たちは、少し強い魔物の群れが出たとのことで、城にはいなかった。

 柊華じゃないだろうな。

 他の商人はトリキアから来た商隊が一つだけだった。

 小麦を持ってきてはいたが、粉として持ってきたものは少なく、挽くための臼や水車は壊滅しているため、小麦粉は物凄い値段になっていた。

 そもそも粉を挽くのに税がかかるから、価格が上がり、その分リスクが高くなるので、加工していない小麦を持って来こようとするのは理解できるし、まさか街がここまで壊滅してるなんて思わなかっただろうから、しょうがない。

 まぁ、潰して粥にすればなんとかなるだろうから、放っておこう。

 教会の方は城と違って火を使う場所が少ないため、城壁内外のあちこちで火を使っているのが見えた。



 マーリヤと今後、被害を受けた人たちに出来ることを話し合っていたが、今すぐできることは何もなさそうという結論になった。

 色んな分野で人手が足りなくなることは明白だが、俺たちは多角経営に手を出してるのもあって、どちらかというと同職ギルドからは嫌われているので、出来ることも少ない。

 無茶をすればもっとできることはあるんだろうけど、今の商売を疎かにしては本末転倒だ。

 それと、城と教会では原因不明の腫れや体調不良を訴える人が続出していた。

 あと何日かすれば、阿鼻叫喚の光景が広がっていくことだろう。

 想像がつくだけにマーリヤには見せたくないと思っているのと、手を出せないのが分かっていて、その場にいるのは苦痛だから、第二便の返送で帰ることにした。

 すべてを話したマーリヤだから、あまり気兼ねなく相談できたのは、すごく良かった。

 結局、第二便で来たヴィネフと交代で俺たちはトリキアに帰ることにした。

 ヴィネフにも一応注意はしといたが。

 何はともあれ上手くカレンの使徒を避けることもできたのは良かったな。



 トリキアに戻った時には、サムイルも戻ってきており、ヴィネフを除くメンバーで今後の打ち合わせを行う。

 ウチで行うことの出来る支援は既にし尽した感がある。

 それに、平民も男爵も復興も先行きを考える頃合いだから、財布の紐を締めてくるだろう。

 そうなると、付加価値の高いウチの商品は売れなくなってくることは確実だ。

 復興が進んでくれば、単価の低い塩漬け豚の需要は伸びるだろうが、利が薄くなるうえリスクも高く、競合も増えてくる。

 まぁ、塩漬け豚の生産をある程度増やしたうえで、卸すのが良いだろうという判断になった。



「優とは会った?」

「いや、パンティアの使徒のパーティーには会ったけどな。」

「遥人のパーティーは苦手。」

「そういや、取り巻きがこころさんのことを悪く言ってたのをマーリヤが怒ってくれてたぞ。」

「そう。ここで働けるようになって気にならなくなった。こころはここに居たい。」

「ここがこころさんの居場所になれたんなら嬉しいけど、固執する必要はないよ。カレンの使徒の優って奴なんだけど、目が見えるようになったらしい。」

「そう。」

 呆気ない返事のようだが、こころさんの中で何かが動いたような気がした。

 そもそも、カレンのパーティーが解散した原因の一つだからな。

「でも、ここが良い。」

「こころさんのしたいようにすれば良い。ただ、出て行きたくなったら、早めに言ってよ。」

「こころ、どこにも行かない。」

「みんなも居てほしいと思ってる。遠慮もしないでいい。」

「ん。」

 こころさんが何か言いにくそうなことを言いたそうな顔をしているので、次の言葉を待つ。

「その…。マーリヤとは?」

「いや、あの、ずっと一緒には居たよ。」

 何を聞いてきやがる。

「そう。」

「何を期待してるの?マーリヤもまだ大人じゃないし。」

「ん。」

 こころさんはそれだけ言って、部屋から出ていった。

 何だよ一体。

 何かちょっとだけホッとしたような顔しやがって。

 恋愛経験不足気味の俺じゃ、どうしたらいいかわからんわ。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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