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こんな方法を使うのは本当は嫌なのですが。

 城を出たあと、教会に向かう。

 城塞並みに防御を固めたそこには、かなりの人数がひしめき合っていた。

 ひときわ身なりの良い商人が取り仕切っているのを見つけたので、商売をする話をつける。

 城では一括して金貨払いだったが、ここではすべて小売になったため、銀貨や銅貨が樽で積み重なる。

 塩漬けの肩とももだけで、総量1トン近くはあったが、あっという間に売り切れる。

 城とは違い、食料は個人的な持ち込みしかなく、組織だっての備蓄と言うものがないため、既に食料は枯渇しており、腐りかけの肉ですら何倍も値が釣り上げられていたようだ。

 肉だけではなく、蕎麦も売って欲しいと懇願され、3袋ほど量り売りをすることになった。

 ただ、食料が行き渡ったという実感は薄く、既に資金が尽きた家族は暗い目をしたままだ。

 まぁ、予想どおりの状況だな。



 次に、廃墟になっている砦跡に向かう。

 既に日は沈んでおり、松明の灯りで確認できるだけだが、1つの大きな壁以外はすべて崩れ去っていたものの、獣皮で作られた簡易なテントがいくつも並んでいる。

「肉屋だ。肉を売りに来た。ここのリーダーみたいなのはいるか?」

 集まってきた群衆にそう声をかけたところ、大柄で柄の悪そうな男が歩み出てくる。

「俺はニコライだ。とりあえず、俺が話を聞こう。」

「もう、良い物もあまり残ってはいないが、ソーセージと塩漬け肉を売りに来た。」

「こっちは金を持ってる奴なんかいねぇぜ。あと何日かすれば、上手く稼いで戻ってくるかも知れねぇがな。それまで皆が保つかも怪しいがな。」

「まぁ、そんなもんか。本題はこの辺で野宿せて欲しい。」

「野宿?なんだってこっちに来る?」

「向こうよりも水場も近いし、教会だとこっちの商人もいるからな。」

「城や教会に行ったんなら聞いてるんだろうが、こっちにはアンタらからすれば品のない連中しかおらんぞ。」

「そもそも、ど田舎で貧民街の生まれだ。気にはしてない。」

「コイツら、全員飢えてんだぜ。」

 まぁ、彼の言いたい事は分かる。

「見りゃ分かる。」

「なら、好きにするが良いさ。」



 松明の明かりで炊き出しの準備が進められている。

 俺は離れた場所から見てるだけだが。

 軽く人間を煮込めるサイズの鉄鍋2つが雑に石で組まれたかまどで火にかけられている。

 崩れた砦なので、整った良い大きさの石がそこら中にあるので、随分と楽だったみたいだ。

 小隊長を中心に俺とマーリヤ以外が、指示したとおり、アイスバインに使う塩漬けの足を充分に煮てから、蕎麦を入れて粥を作っているようだ。



 それから2時間近く経っただろうか。

 粥も炊けたようで、巨大な寸胴は待ちきれなくなった群衆に囲まれている。

「この施しは、我が傭兵団、『銀灰の翼』の団長からの物だ!我が『銀灰の翼』は規律を重んじる。ちゃんと並ばん者には施しは与えない!」

 小隊長が仰々しく、集まる群衆に向かって話をしている。

「子どもと妊婦、そして乳飲み子がいる女が優先だ!全員分あるから、大の男はドンと構えて待ってろ!」

「ざけんじゃねぇ!俺は魔物と戦ったんだ!先に食わせろ!肉を入れてただろ!それもだ!」

 一人の大柄な男が集団から歩み出た所を小隊長に鞘のままの剣で叩かれ、その場に倒れ込むのが見えた。

 見せしめにちょうどいいのがいてくれて良かったよ。

「肉は子どもの物だ!大の男は黙って我慢しろ!粥は全員分ある!」

 肉はさほどの量は無いけどね。

 さっきの騒ぎのおかげで、多少は大人しくなったので、順に子どもや妊婦たちから粥が配られる。

 器は人数分無いので、食べ終わった人が次の人に渡すようになっている。

「気まずいよ、ここまでしなくても。」

 マーリヤが零す。

 俺とマーリヤは炊き出しを離れたところで見ながら2人でベーコンを焼いて食べている。

 大半が貧民街の者が占めるこの場所に居ようとするなら、舐められないようにしなきゃいけないと思って、見せしめのために誰かを襲わせようと煽っているのだ。

 ここのリーダーのニコライとやらは、その辺りも気を使ってくれているが、避難民の集まりはどうみても統制がとれておらず、時間が経って組織化されると厄介だと思うので、早目に見せしめを作っておきたい。

 親父のやり方をそのまま真似することになるな。

 ただ、今の俺じゃ、他の方法が思い浮かばない。

「護衛がいなけりゃならんと思われれば、ずっと隙きを狙われるだけだからな。この場所に居ようと思えばやっとかないと後が面倒だ。そもそも、マーリヤだって貧民街がどんなところか分かってるだろ。」

「まぁ、そうだけど。」

「でも、逆上する人増えないかな?」

「大丈夫だ。いくら貧民街の人間が多いっていっても暴動にならなきゃ、暴力に訴えるのは少数だから。暴動になる前に片付けておきたい。」



 夜明け前になったとき、複数の忍ばせた足音が耳に入る。

 野宿のため、棒を立てて屋根だけをかけたテントから俺は出た。

「何用だ!」

「っ!気付かれたか!」

 薄くなりつつある月からの月光で、白刃が煌めくのが見える。

 こちらも既に長巻は鞘から抜いていた。

「こんな時間に何の用だ?」

「困っている人間たちから金を巻き上げるような悪徳商人を懲らしめてやるんだよ!」

 頭の悪いセリフだな。

「刃を納めるんだ。今なら見逃してやれる。」

 そもそも、剣類を持ってるのはほんの一部だけなのは、事前にニコライから聞いていたのだ。

 魔物退治で使ったのは、棒にナイフ類を縛り付けた物をカレンの使徒、ユウが強化の魔法で強化したもので、魔法が切れれば何の役にも立たない代物だってことを。

 だから、凶器はナイフしかない。

 それに鎧などの防具を着けてる者もいない。

 そのうえ、ナイフと長巻じゃ、リーチが違いすぎるので多少の余裕はあると思っていたので、見せしめを作ろうと思ってたんだが、ならず者の数は5人か。

 3人までなら余裕を持って対処できたろうけど、この数はキツいな。

 確実に戦闘不能にしないとまずいな。

「退いてくれないか?その人数だと手加減できないぞ。」

 さて、煽りながらも言うことは言った。

 後は自己責任だな。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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