仲間になるのはどうやら曲者のようです。
「ちょっと、面倒くさい人なら先に言っといてくださいよ。」
イヴォと打ち合わせを終え、トリキアに連れていく人選をするため、アジトを離れてから、待っている間に応接でペネと話をしている。
「すんません。良い話だから、すんなり行くかと思ってたんですが。」
「あと、俺に敬語は要らないですよ。年下ですから。イヴォさんは、スラムのこどもたちの面倒をみてるんですよね?その辺りの事情も聞かせてくれますか?」
「へい。」
イヴォさんは貴族の四男坊なのだが、博打に狂い実家の金を使い込んで勘当されたらしい。
それでも博打狂いは治らず、働いた分以上に飲んで打つ、それでも足りなければ詐欺まがいのことをしたりもしていたらしい。
数年前、詐欺で騙した相手に復讐され、殺されかけたらしい。
命からがら逃げ出したものの、死んでもおかしくないひどい怪我を負って、スラムに逃げ込んだらしい。
うん。
なかなか救いようのない人だったんだな。
逃げ込んだスラムで野垂れ死ぬだけと思っていたところ、そこで孤児の姉妹に出会った。
その姉妹は自分の食べる物に困っているというのに、彼に食べ物を分け与え、拙いとはいえ、看病もしてくれたらしい。
姉は食べ物を得るために、パン屋で盗みを働き、ペネさんがケツ持ちをしている徒党に捕まった。
捕まった際に同じように盗んだ薬や包帯を見咎められた彼女は問い詰められ、イヴォさんの事を話してしまったらしい。
まぁ、仕方ないな。
イヴォさんの利用価値に気付いたペネさんは、彼女の罪をイヴォさんに被せて働かそうと考え、彼を組織に迎えたということらしい。
娼婦よりも金勘定できる人間の方が貴重だからな。
そして、化膿して壊死していた右足の切断を含めた治療代も借金として上乗せし、彼を組織で働かせたのだ。
借金のカタであるため、必死に働いても大した金にはならないが、イヴォさんは酒も博打も止め、少女たちのために心を入れ替えたように働くようになったらしい。
まぁ、少女たちに手を付けなかったのは、イヴォさんを真面目に働かせ続けるためだと思うが、なかなか上手くいったみたいで、かなりの働きを見せてくれたらしい。
人間のクズっぽい以前を知っているペネさんは、その変わった姿を見て少し仏心が出てきたところにこの話が出てきたと言うわけだ。
まぁ、仏心だけでもないだろうけど。
先の打ち合わせでイヴォさんは、王都に残ることにして、姉妹がトリキアに来てレシピを習うことになった。
イヴォさんに対してはあまり思うことは無いけど、姉妹にはしっかり習熟してもらって、自立できるようになってもらおう。
そういや、まだ年も名前も聞いてないな。
姉妹をアジトに連れてくるのには抵抗があったらしく、顔合わせと打ち合わせの続きは宿ですることになっており、食堂の一角を借り、イヴォさんたちを待っていた。
「ユーキ兄。これだけ掻き回したうえに、また仕事を増やして、やってけるの?」
サムイルが心配そうに言ってくる。
「やり過ぎかなぁ?」
「そりゃそうでしょ。」
「こころさんも手伝ってくれるようになったし。」
「いや、こころさんを入れても定期便の事業だけで手一杯なのに、またこんな厄介事を増やして!」
「厄介って言うなよ。屋台の仕事はレシピさえ伝えればあとは投資だけしてれば、イヴォさんが仕切ってくれるし。」
「その、レシピや食材の供給とかどうするんですか!」
「まぁ、定期便が動き始めればどうにかなるよ。イヴォさんもなんだかんだ言って、仕事は出来そうだしさ。あ、来た、来た。」
イヴォさんたちが宿に入ってきたので、サムイルを遮る。
一緒に入ってきた女の子を見ると、サムイルより小さい。
10歳ぐらいと5・6歳ぐらいの女の子だろうか?
「イヴォさん。この子達ですか?」
「ああ。ニナとライナだ。」
もう少し大きい子じゃないと仕事を覚えるのも難しいんじゃないか?
「この子らは11歳と9歳だ。」
慢性的な栄養失調で発育不全になっているってことか?
「これでも随分とマシにはなったんだがな。出会った時、こんな状態で生きていたのが奇跡だったな。」
そんな状態のこどもがイヴォさんの面倒を見てたのかよ。
「もう少し大きな子はいないんですか?」
「いないことはない。」
この子たちは、イヴォさんと知り合ってなんとか命を取り留めることが出来たが、実際には同じような年齢のこどもたちは、たくさん命を落としていんだろうな。
まだ、トリキアのスラムの方がマシなんだろうか?
「小さい子から先に死んでいくからな。よく頑張ったよ。」
ヴィネフが呟く。
そういや、慢性的な栄養失調による発育不全は、身体的なものだけでなく知能の発育不全も起こる場合があったような気がする。
「この子たち、仕事の方は大丈夫なのか?かなり色々なことを覚えてもらわないといけないし、お金のやり取りも必要になる。」
「ニナは成りは小さいが覚えも良い。」
「ライナは不安があるということですよね。」
イヴォさんが気まずそうな顔をしている。
分かっていただろう。
いくら可愛いからって、こちらも真剣に商売するんだから、言うべきことは言っておかないとな。
「あなたの人選は飲めませんね。この話をご破算にしたくなければ、代わりの子を手配してくれますか?」
「分かった。ライナの代わりを手配する。」
「そうして下さい。」
イヴォさんに促され、ライナが宿を出いく。
意外に素直だな。
ん?
もしかして、俺はイヴォさんに試されてたのか?
情にどれだけ流されるか、とか?




