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少しだけ王都を歩いてみました。

 翌朝、アリプロフの店に再び顔を出す。

 帰り道に本店への連絡のための手紙を預かることになっていたからだ。

 この事業のために用意していたアリプロフ用の親書入れを受け取る。

 金属製の箱は施錠できるようになっているもので、まぁ、手提げ金庫だ。

「どれぐらいで店主のところに届きますか?」

「途中の村に寄って打ち合わせする予定もあるんで、今回は17日ぐらいですね。まだ調整中ですけど、馬車の運用が始まれば、7日というところですかね。」

「はぁ?!片道7日で届くんですか!」

「早馬ならもっと早いんですけどね。」

「いやいや、すごいことですよ!コレは。」

 普通に長距離を馬車を引かせるのであれば、徒歩とそう時間は変わらない。

「飛脚がいちばん早いんだろうけど、少し荷を乗せたかったからね。」

「何ですか?その『ヒキャク』って?」

「ああ、俺の故郷じゃ、急ぐ手紙や荷物は人が走って運んでたよ。この距離なら2日か3日ぐらいで走れたんじゃないかな?」

「ええっ?!」

 うろ覚えだが、最速の飛脚なら江戸〜大坂間を二日で走り切ると聞いたことがある。

 王都からトリキアまでなら、同じか少し短いぐらいじゃないかな?

「もちろん、交代はしてただろうけど。」

 こっちは日本に比べれば潤沢に馬がいるからか、馬を使うのが前提だからか、人が走るって考えつかなかったんだろうな。

 江戸〜大坂間2日ってどういうペースなんだろう?

 しかし、冷静に考えると無茶苦茶だな。夜通し寝ずに走ってたんだろうか?

 日本人って怖いな。



 そんなやり取りを終えて、宿に戻ってきたら、こころさんが居なくなっていた。

「おい、ヴィネフ。こころさんは?」

「え?どこか出掛けたの?」

 まぁ、部屋は別にとってあるから、分からなくても仕方ないけど。

「手に入りにくい材料を見て回るって。回復薬に必要なものもこっちだと手に入りやすいだろうからって。」

「ああ、そうか。」

「俺も見てこようかな?二人とも一緒に行くか?」

「行く!」

 ヴィネフは乗り気のようだけど、サムイルはそこまでではないみたいだ。

「王都ではどんな商売をしてるのか、気になるし、少し見てくるわ。」

「僕も行く。」

 サムイルも乗ってくれたところで、街に繰り出すことにした。



 王都は繁華街も桁外れに広い。

「食べ物の屋台が多いな。トリキアよりもずっと。」

「交通要所になってるから、人足が多いし、港町でもあるからね。」

「港があるのか?」

「川だけど、海も近いから、ここから直接海外と貿易してるんだよ。」

「なるほどな。カレンとかにも便が出てたりするのか?」

「当然だろ。」

「肉も魚も満遍なく出てるな。」

 屋台では様々な食材や料理が並べられている。

 その中で豚肉も見かけるが、塩漬けのものを焼くか煮るかしたものばかりである。

「パンとかで挟んだような物って無いんだな。」

「たまにアニキが作ってるやつか?柔らかいパンは高いからなぁ。こんなところじゃ、売ってねぇよ。」

「そうか。高くても美味い物が食いたいとか無いのかと思ってさ。」

 あと、基本的に食器というものがあまり流通していないから、串に刺さったものか、板に乗せられたものを手づかみか、汁物は

米き

「手軽で高いけど美味いか。王都なら売れなくもないか。」

 サムイルがそう呟く。

「おい、ヴィネフ。しばらく王都で商売しないか?」

「いや、これからの仕事どうすんだよ!」

「そうだな。使える人間でも探してみるか。」

 その後も市を見て回ったが、生ハムはお目にかからなかった。

 王都の西側で作られており、高級品で数も出回らないと聞いてはいたけど、この状況からだと王都へ出荷しても売れないかも知れない。

 まずは、知ってもらわないとな。

「いやいや、アニキ、ちょっと落ち着いたら?」

「ユーキ兄、何でそんなに急いでるのさ。」

「一旦、トリキアまで持ち帰れば、売り始めてからすぐに次の仕込みの時期になる。それまでに売れる見込みが無ければ、増産は難しいんだよな。このタイミングを逃したら来年になる。それに…」

「それに?」

「まだまだ、やりたい事が山積みだからな。」

「兄貴、そろそろココロ姉さんを探さないと。」

「ああ、そうだな。」

 ヴィネフに促され、こころさんを探すために、その場を離れることにした。



 小道具や怪しげな水薬が並べられた店が並ぶ一角でこころさんの姿を見つける。

 小柄な体格に大きな行李という姿は意外に目立つ。

「ココロの姉さん!」

 ヴィネフが呼びかけるが、どこかのガラの悪い集団のように聞こえなくもない。

 まぁ、こころさんは全くそんな風には見えないから良いか。

「こころさん。回復薬の材料なら、ちゃんと経費で落とさないと。」

「うん。」

「ちゃんと控えてます?」

「良い。」

「良い訳ないでしょ。」

「こころ、高級取り。みんなより。」

 ウチで働くにあたって、みんなより給料が高い事をこころが気にしてると、マーリヤが言っていたのを思い出した。

「そりゃ、スキルがあるのと年齢もあるからです。そのうちコイツらも同じくらいは貰うようになるから。」

 俺はこころさんの耳に口を近づけた。

「コイツらは退職金分は天引きしてあるから、余計低いんだよ。本来の給料はもっと高い。だから気にしなくても良いよ。」

 退職金分の積立は俺とマーリヤしか知らないけど。

「ん。」

 この場は譲歩する気になったらしい。

「あと、その包は?」

「赤リン。」

「何に使うの?マッチでも使うの?」

「緊急用の煙幕。」

「じゃ、それも経費で。もう必要な物は揃ったの?」

「ん。珍しい物無いか見てた。」

「出発は明日にずらすから、今日は自由にしてても良いって言いにきたんだ。ちょっと寄るとこできたんだけど、一緒に来る?」

「ちょっと、ユーキ兄!出発延期って、まさか?」

「本気かよ…」

 サムイルとヴィネフが恨みがましい目で睨みつけてくるけど、気にしないでおこう。

「まぁ、そういうことだな。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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