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王都に向かって出発します。

「スマッシュ!」

 ペタルが繰り出す斬撃を長巻の長さにした棒の端を地面に付けて受ける。

 長巻を倒して一瞬だけ剣を下げさせ、手首を抑えながら左足で首を刈ろうとした瞬間、背後からヴィネフが突き出した長い棒に気付き、蹴り足をそのまま腕ごと長巻と剣の交差を跨いで避ける。

 後回し蹴りの要領で右の膝裏で首を刈ろうとするが、剣から手を離されて避けられた。

 だが、俺の左手は武器から離れておらず、右側から突き入れられたサムイルの棒を柄で撥ねてから、切っ先をペタルの腹に突き入れる。

 そのまま右に長巻を振って、サムイルの首筋に当てたあと、振り返りながらヴィネフの棒を柄で流しながら接近し、サムイルの首筋に長巻を当てた。

「ふぅ。今日はなかなか動けてるな。」

「気合入り過ぎじゃないか?」

「ああ。街道沿いを旅しないといけないからな。盗賊が多いと聞いてる。」

「ユーキが前に出て、何かあったら、仕事が滞るよ。」

「大事なのは全員同じだ。お前もサムイルももう充分仕事を任せられるようになってるからな。」

 稽古に熱が入り過ぎているのは確かだ。

 毎朝の稽古はボリスが抜けたので、しばらくの間はペタルと2人だったのだが、ヴィネフとサムイルも強制的に参加させる事にした。

 特にヴィネフには警備部門を将来的に任せたいと思っているので、一定の実力は身につけてほしいと思っている。

「アニキ、何を焦ってるのかは知らないけど、何でも自分でしようと思わなくて良いんだぜ。俺らがいるんだからさ。」

「おう。そのためには、ヴィネフはもう少し稽古を頑張ってくれよ。」

「うっ。」

 ペタルは稽古で剣を振ってるうちに、剣術の基礎スキルを手に入れていた。

 ヴィネフには、剣と槍の両方を稽古させることにしている。

 森の中で獣と対峙するなら、槍の方が使い勝手が良い。

「俺がついていければ、ユーキも少しは気が楽なんだろうけど。」

 今の立会のとおり、ペタルは腕を上げているうえに、剣術スキルも使えるようになっている。

 普通に護衛として雇えるだけの実力はあると思う。

「お前が留守の間、しっかり店を守ってくれる方が嬉しいぞ。」

「ああ。任しとけよ。」

 サムイルについては、戦うというよりも、生き残る術として身につけておいて欲しい。

 ただ、生き残るのに一番大事なのは走力だから、稽古の開始前に一緒に走り込みをさせている。

「さーて、腹も減ったし、朝飯を食いに戻ろうか。」

「うーっす。」


 魔法の方の稽古も、それなりに捗っていて、宗一郎さんに精霊魔法に近いと指摘されてから、魔力の流し方を周囲から集めて流すようにイメージを変えることで、反応が早くなった。

 もう少しで実戦でも使えるレベルになると思う。

 俺の身体には魔力が蓄積されないから、魔法を使えるとは思われないだろうから、初見殺しにはなるだろう。



 サムイルが帰ってきてから6日後、準備が整ったため、定期便事業の交渉の旅に出る。

 今回はサムイル、こころさんの馬及び宿場設定チームと俺とヴィネフの護衛スカウトチームの4人での旅となる。

 ひとまず、牧場を目指し、一旦、トリキアに戻る。

 そこから馬が負担なく走破できる距離を測りながら王都を目指す。

「じゃ、行ってくるよ。」

 残るペタルと女の子たちに声をかける。「2週間ぐらいで、一旦戻ってくるから。次は1ヶ月ぐらいかかっちゃうけどさ。」

「ユーキのいない間は私たちがちゃんと守ってるから、安心していってらっしゃい。戻ってくるときには、ちゃんとご馳走を用意しとくから。」

「ああ。俺もちゃんとみんなを守って、無事帰るからさ。」

 うん。

 14歳の女の子のセリフじゃないような気もするけど。

 やる気は出たから良いか。

「じゃ、行ってくる。」



 3日目までは野宿の予定だ。

 トリキア自体はかなりの人口があり、栄えてはいるものの、あくまで国境に位置する、『辺境』であることは間違いない。

 トリキアを出てすぐぐらいが最も盗賊の出やすい位置になる。

 4日目のところに集落があり、そこを越えると、辺境を越えて深い森と草原しなかい秘境になってくるので、人間自体あまりいない。

 その代わり、人間以外のモノが出る。

 結局は危険な旅路であることは変わらないんだけど。

 そもそも、トリキアと王都を繋ぐ重要な街道なのに、治安が悪いってどういうことだよ。

 この街道って、トリキアの生命線じゃないのかよ。

 国内流通がしっかりしないと、内需が拡大しないような気がするぞ。

 大学に入らないと、経済なんて習わないから、なんとなくしか分からないけど。



 1日目が何事もなく終了しようとしていた。

 ちなみに少しばかりペースを上げたうえに、日没ギリギリまで歩いている。

 こころさんは、カレン王国で冒険者として過ごしていたおかげか、見た目に反して旅慣れたうえに健脚で、遅れつつあるのはサムイルだ。

 ヴィネフの方は根性でついてこようとしている。

 少し無理をさせ過ぎたか、2人の疲労の色が濃い。

 まぁ、盗賊も出る気配もないようだし、良かったことにしておこう。

 盗賊が出るにしても、トリキアから近過ぎるか。

 それに、盗賊だって毎日街道を見張って、襲ってる訳じゃないしな。

 何にせよ、明日は少しだけ出発を遅らせようかな?

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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