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冒険には魔物が必要なんです。

 2回目の森の探索に出発する日が来た。

 一週間という長丁場であるため、急がず、初日は昼前ぐらいに出発することにしていた。

 オーダーして作ったバックパックには、前でも留めれるようにベルトも付けてある。

「アニキ、スゲーなコレ。両手が空くし荷もしっかり背負えるよ。」

 ヴィネフもお気に召したようである。

 両手が空けれて、荷が揺れないのは便利である。

 俺は万が一に備えて、長巻、投げナイフを持っていく。

 ヴィネフには、大振りの鉈を持たせている。

 グリップ部分はパイプ状になっており、木の枝を挿すことで、簡易な槍になるようにしているもので、これも特注品だ。

 ただ、ヴィネフに渡したメインウエポンは投石スリングだけど。

 こころさんの方は、元々戦闘は出来ないと聞いているため、行李だけだ。

 装備の確認を終えたところで、みんなが見送りにきた。

「ちゃんと、一週間で帰ってくるんですよね。」

「その予定だよ。食料も一週間分しか持てないしね。」

「絶対、無事に帰ってくるのよ。」

「マーリヤは心配性だな。」

 そうは言ってみたものの、実際のところ、それなりに危険はあるだろう。

 森の深部に入るため、盗賊には会わないだろうけど、野犬、狼、魔物、寒さ、病気に飢え。

 気を付けないといけないものは山ほどある。そもそも『旅』をすること自体が一般的ではない。

 庶民の大半は産まれた街や村から一歩も出ないで人生を終えるものなのだ。

「それじゃ、行ってくる。みんな、留守の間は頼んだぞ。」



 森に入ってから、3日目の朝が来る。

 素晴らしく何も問題の無い行程が続き、折返し予定の地点に近づいている。

 成果の方はというと、今回は5種類の薬草を発見した。

 そのうちの一つは、かなり有望らしい。

 すこし、セロリっぽい匂いのする薬草だった。

 しかし、方位磁石と縮尺の怪しい地図でよくここまで辿り着けたもんだ。

 地図は書き込みでいっぱいになったけど。

 水の確保が一番大変だから、今回は狩人たちが入ったことがある場所をメインにしているのもあるけど、素人3人でもやってこれた。

 あと、こころさんのスキルも大きい。

 山菜やキノコなど、食べられるものが判別できるため、食料は当初の想定の半分程度しか減っていない。

 傷むのが早いパン類は優先して食べたからかなり減ったけど。

 同じ装備なら倍は大丈夫かも知れないな。

 途中の泉で自分たちも飲みながら、豚の膀胱で作った水筒に水を満たしていく。

「後は帰るだけっすね。」

「帰りも森の中だぞ。だけってことは無いと思うぞ。」

「まぁ、そうなんだけど。」

「油断してると遭難しそうだしな。」

「アニキは警戒し過ぎじゃない?」

「してねぇよ。油断が命を奪うんだぞ。」

 縮尺の怪しい地図を頼りに森の中を歩いているが、いつ遭難するか分からないし。

 熊や狼なんていつ遭遇するか分からない。

 熊除けの鈴を持つことも考えたんだが、獣は寄ってこなくなるが、盗賊と魔物を呼び寄せることになるらしく、そちらの方が頻度も危険性も高いとのことで、狩人に止められたのだ。

 幸い今のところ、鹿ぐらいしか遭遇していない。

 狩猟道具を持っていなかったので、眺めるだけだったけど。

「確か、泉とか小川がある場所だと、動物が集まってきて、それを餌にする肉食動物とか、魔物とかが集まって来るんだったよな。」

「ああ。」

 ヴィネフが言う。

 多少は気を付けてると言いたいのだろう。

 そこで、またまた鹿を見かけたが、それだけだった。



 4日目に入り森の外縁を目指して小川を下ってゆく。

 途中から川幅が広くなり、岩が多くなってきたため、歩みが遅くなっていた。

 とは言うものの、水には困らないという安心感もある。

「あ、牛だ。」

 ヴィネフが川下を指差しながら言う。

 そうか、牛だって野生のものがいるはずだよな。

 どうも、野生の牛だとバッファローが浮かんで、荒野の生き物というイメージだったが、こっちでは森にいるのか。

 牛はこちらの世界に来てから一度も食べてないから、少し欲しい気はするけど、1頭持って帰るのは無理だよな。

 音を立てないようにして、しばらく牛を観察する。

 その影は相当大きな個体ではあったが、その巨体を軽々と森の中から川べりへ運び出す。

 日のもとに現れたその身体は想像していたよりも遥かに大きかった。

 熊より大きくないか?

 それに、この威圧感は何だ?

「ただの牛じゃねえよ、こりゃ。」

 毛はなく光沢を持った皮膚を持つ、巨大な牛は一つしか無い目を俺に向けてきた。

 そう、一つ目の巨大な牛なのだ。

「ヴィネフ、アレは何という魔物か知ってるか?」

「ス、ストーンカ、ストーンカだ…」

 こちらが気になるのか、ストーンカが近づいてきている。

「で、どんな魔物なんだ?」

 ヴィネフはその場でへたり込みそうになっているし、こころさんも青い顔のままフリーズしている。

 長巻の柄には手を掛けておくが、抜かない。

 正面から戦って勝てる気はしないな。

 戦闘のプロでもないので、2人を庇いながら戦うような器用な真似もできない。

 牛なので角を使うか踏みつけが攻撃手段になるだろうから、避ければ何とかなるかも知れない。

 攻撃を避け続けて、矢面に立てば2人を逃がすことはできそうだ。

 ただ、倒す手段は思いつかないから、2人を逃した後はノープランだけど、やるしかないか。

「ヴィネフ。交戦したら、こころさんを連れて逃げろ。俺が引きつけておく。」

 魔法を勉強し始めて魔力というものを感じれるようになったのだけど、目の前の魔物からは途方もない量の魔力を感じるので、魔法を使われると厄介かも知れない。

 と言うか、魔法を使われると生きて帰れる気がしないな…。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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