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丸投げではないんです。任せるということも大事なんです。

「はんっ。やっぱりアンタが裏にいたのか。」

「今回はオモロそうやから、いっちょ噛みしたったんや。失敗が許されるようなモンでもないしな。」

 結局、親父とヴォイシルが付いてきてくれることになった。

 この件で内容を理解して動けるのは、俺と親父だけだ。

 能力的には、宗一郎さんが適任ではあるが、アンデッドの彼を公の場所に出すことはできない。

 親父からは、流通網の整備を優先するように言われ、この件は親父が主体的に動いてくれることになった。

 どっちかと言うと、為替の件自体に割く労力が減るのはありがたい。

 親父はもう話しながら資料を応接テーブルに広げ始めるが、アリプロフも何も言わない。

「それに、ワシが噛みたい理由もあるしな。」

 ヴォイシルがいるのは、金貸しに関連するからだ。

「ヴォイシルを連れてきたのは、履行が出来なかった場合の取り立てか?」

「ご名答。そろそろ向こうへの進出も考える時期やからな。」

「ふんっ。まだこの街に来てたった一年だろ。早過ぎはしねぇか?しかし、向こうでもそれなりの力を見せてくれなきゃ、こっちは乗らねぇぜ。」

「それも織り込み済みや当分はワシが向こうに行くで。」

「確かに、来てくれた方が楽だが、アンタに利が多いな。」

「利や言うたかて、儲ける銭はお前のモンやろ?」

「けっ。惚けやがって。当初に声を掛ける大口のパイプはデカいぞ。」

「安心しぃ。そんなモン気にならんぐらいの大仕事になるって。ほな、為替手形の運用について説明するぞ。」

「ふんっ。早くしろ。」



 親父と俺が交互に説明し、分からない部分や詳細な所について、アリプロフが質問をしてくる。

 かなり長い時間の打ち合わせになった。

 もう昼はとっくに過ぎていたが、そのまま打ち合わせは続けられていた。

「まだ何か企んでいるだろ。」

 帰り際にアリプロフが聞いてくる。

「そりゃね。アンタに利のある話もあるけどね。今はまだ言えないよ。」

「あっても無いと言っとけ、馬鹿。前にウチに来いといったが、今度は丁稚としてだ。どうだ?」

「そっちの方が金は手に入るだろうけど、好き勝手したいから断っとくよ。」

「ふんっ。この商売が上手くいくまで、コケるなよ。」


 アリプロフの屋敷を出てから、親父は一足先に戻るといって、足早に戻っていった。

 何故かヴォイシルはウチまで送ってくれると言ってきたので、一緒に歩いて戻っている。

「何故か気に入られてましたね。」

「親父と繋がりが欲しいからだろ?」

「まぁ、それも多少はあるみたいですが。ユーキの商売に対する姿勢が気になっているみたいですね。」

「この世界の常識とは相容れないところもあるだろう。」

「彼は多様性を求めてるのかも知れませんね。」

「面白そうだから、観察してみたいのかもね。」

「ソレですね。私もそうですから。」

 そうなのかよ。

「商人というのは、品物を横流しするだけで利を貪る、困っている人間の足元を見ると批判的な目でみられがちです。」

 まぁ、ぶっちゃけそうなんだが。

「ユーキのような考え方が珍しいんですよ。」

「民族性かな。俺らの故郷はそんな国だったからな。とりあえず、上辺は。」

 古くから日本人は商売が下手だと言われ続けていた。

 だからこそ、信用や義理人情を武器にして戦ってきたのかも知れないな。

「ああ、そうだ。この話が上手く行って、代替貨幣が回り始めたら、またそっちが儲かりそうだな。」

「ほう。」

「今まで以上に日雇いや肉体労働者も足らない日銭を借りに来るようになる。借入額が小さくなるから、敷居が下がる。」

「そうやって、また人を動かす。まぁ、こちらとしては、飯の種が増えるから良いんですが。」

 金貸しは基本的に売春宿には欠かせない商売で、ヴォイシル自身も楽しんでやっている訳では無いだろうし。

 ヴォイシルが言いたいように、手を汚したく無いのもあるけど。

 受けてくれれば、両替まで任せたいところではある。

「単純に手が足りないだけだよ。故郷には餅屋は餅屋って言葉があってさ、本業の人間に任せた方が上手くいくもんなんだよ。得手不得手があるしさ。」

「まぁ、アナタらしくて良いんですけどね。」



 事務所に戻ってから、サムイルを呼んで、打ち合わせに入る。

 森にはとりあえず1週間ほど篭もる予定である。

 アリプロフの為替業の開始が早くなりそうなので、定期便事業の開始も急ぐ必要があるため、俺のいない間に準備を進めてもらうことにする。

 まだ12 歳のサムイルを交渉にやったとしても、足下を見られるだろうから、手配する馬の下見とリストアップを急いでもらうことになった。

 王都まで徒歩で15から16日ぐらいかかる。

 通常であれば荷馬車の移動速度も徒歩とはそう変わらない。

 馬にかかる負荷、馬の世話や手入れに掛かる時間があるからだ。

 一日ごとに宿場を設けで馬を交換させることによって、負荷を下げて移動距離を増やしていけば、王都までの時間を半分近く短縮できると考えている。

 そうすると、予備の馬も含めて、最終的には20頭以上の馬が必要と考えている。

 値もそうだが、それだけの数を揃えるのは、一苦労だろう。

 それと、各宿場での馬の保管と飼育も必要なため、それにかかる賃料や人件費など、莫大な初期投資が必要だ。

 それというのも、宿場町のようなものがあるのは、パンティアとガルディアから神聖国ルースへ向かうための巡礼者用のルートだけだ。

 あとは、交易が盛んなルートに一部商人ギルド関係者の使うものが散在している程度だ。

 魔物も出るこの世界、長距離の行商はキャラバンでもないと困難なため、行商人は近距離しか存在しない。

 そういった整備により、商機を求める商人たちが挙って動き出せば、経済が大きく動き出すんじゃないだろうか。

 まぁ、開業時はそこまで需要もないだろうから、半分程度まで抑えてやり繰りしながら運用していく積もりだ。

「アニキ。どこまで話を進めておいたら良い?」

「できるとこまでて良いよ。」

「なら、契約まで済ませておいていいよな。」

「うーん、どうしようかな?」

 サムイルのために、馬と宿場で借りる馬小屋の賃料について、希望と譲歩できる最低限の条件の資料作ってを渡すことにした。

「いろいろ考えてやってみるよ。」

「ああ。でも、無理はしなくて良いぞ。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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