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偉そうに言ってみたけど、人を頼ってしまいました。

 さて、バックパックが出来るまで、溜まってた仕事をこなしていくことにする。

 そこで、今日はアリプロフの所に足を運んでいた。

 トリキア領ではそれなりに大きな商会を一代で築き上げた男で、公爵家とも取引がある。

 行き過ぎた加虐嗜好の持ち主ではあり、全面的に信頼は出来る人間でもないが、その商才は疑うべくもない。

「はんっ。領内通貨なんて流通を管理する経費がどれだけかかると思ってるんだ。誰でも考えつくが、誰もできなかったからだよ。」

「まぁ、現実的に難しいよな。リスクも多過ぎる。そこでだ。代替通貨ならどうだ。」

「代替通貨?」

「エール券みたいなのだな。」

 この街、いや、国での貨幣経済の最大の問題点は、少額貨幣が存在しないことだ。

 庶民は少額取引の場合は物々交換をしているが、郊外であればさほど不便は無いものの、都心部、特に肉体労働者にとっては替えるものが無い者にとっては不便このうえない。

 それが、低所得者の消費の活性化を阻んでいると思われる。

 というか、俺の商売では必須だ。

「ほう。」

「アンタんトコで使えることが出来れば、公爵領全体の経済の活性化に繋がだろう。何とかして、公爵の承認を貰えれば、信用もついて使ってもらえるだろう。」

「そんなモン、利があるのは少額取引するお前んトコだけだ。」

「ああ。そこでだ。ウチの国で使われてた大口取引用の手段をアンタに教える。」

「お前らの生まれた国か。この大陸の外なんだな。」

「ああ。ここと王都のカネを動かすための仕組みがある。」

 大陸の外か。

 まぁ、嘘は吐いていない。

 アリプロフは王都にも支店を持っている。

 この2つの都市がこの国を代表する消費都市であり、莫大な商品と貨幣が流通している。

「アンタはもう商品を取り扱う商人から信用と金を取り扱う商人になるべきなんだよ。」

「カネを?」

「ああ。信用取引だ。」

「メルクの方で信用取引と言うものがあるとは聞いたことがあるが…」

 確かメルクというのは、南方の別大陸を指す。

 砂糖や香辛料などがメルクから齎されている。

 元の世界のイスラーム世界かインドかそれに近いのだろう。

 この大陸にはまだ『為替』や『手形』の概念がない。

 商品だけでなく、金銭も物理的に輸送が必要だ。

 公爵家であれば、租税も含めて王都と公爵家間の取引が必ずある。

 公爵家の信用取引をできるのであれば、それは、アリプロフの信用を高めていくことは間違いない。

 情報のやり取りは、俺が今後作る、王都〜トリキア間の定期便で賄う。

 こちらの定期便の事業については、まだ隠しているが。

 単純に流通機能だけが欲しいのであれば何もウチで無理をする必要もないが、人と情報を優先的に流したいため、最初は自前で用意するしかない。

 今日のところは簡単な概要だけを書いた物を渡しておく。

「良い返事が貰えれば、制度を設計した資料を渡すよ。」



 事務所には今日は帰らないことだけ伝えて、そのまま親父の所に向かう。

 アリプロフにはああ言ったものの、まだ為替制度の素案はまとまりきっていない。

 ここは一つ、親父に甘えてみようか。

「と言うわけなんだけど。」

 今日の話を親父に説明する。

「勝手になんかオモロそうなコトしとんなぁ。穴だらけやし、あの男の相手やから、ちょっと心配やけどな。」

「意外と乗り気だったよ。」

「せやけど、その辺はワシも得意やないからな。宗一郎にも手伝ってもらおうか。」

「そういや、参考に聞いときたいんだけど、メルクって、イスラーム世界かインドみたいなモンなんだろ?」

「どっちか言うたらインドやな。一つの国やし、黒いで。」

 しばらくして宗一郎さんは麻袋に詰められて、ラファエルさんに担がれてやってきた。

 辺りは既に暗くなっていた。

 親父の所では、魔石ランプが使われている。

 臭いも煤も出ないうえに、明るいし、火を使わないから安全だ。

 だけど、魔石という限りある資源を使っているため、コスト面だけでなく、一般化は難しいだろうな。

「すまんな。宗一郎。急に呼び出して。」

「いえいえ、どうせ暇してますから。で、為替ですか。確かに王都とこのトリキアの関係は若干、江戸〜大坂間と似ていますね。トリキアは経済的な中心と言うには若干頼りないですが。」

 俺が考えていたのは、中世イタリアで始まった証書為替に近いものらしい。

 宗一郎さんのテコ入れで原型を留めて居ない気がするが、アリプロフが主体となって運用しやすいよう、手形を使用した信用取引の草案が出来上がった。

 結局、夜が明けるまで詳細の打ち合わせをしてから戻った。

 みな寝静まっているなか、自分のベッドに入り込んだ。



「ユーキ!客が来てる!」

 マーリヤに起こされる。

「客人って誰?」

 ほぼ徹夜で打ち合わせをしていたため、気を抜いたらそのまま寝てしまいそうだ。

「アリプロフの使用人よ。」

 寝ぼけ眼を擦りながら、事務所へ降りてゆく。

 あー、目やにで目が開かない。

「アリプロフ商会から参りましたジャンです。」

 ちっとも畏まっている気配のない使者だな。

 まぁ、良いや。

「面会だろ、いつだ。」

「本日の三時課、もし可能なら六時課までにお願いしたいとのことです。」

 まだ、三時課を過ぎたところみたいだが、今からだとどれぐらい時間があるのだろうか。

 日が短い季節だと時間の単位が短くなるような、ファジーな時刻だから、俺は教会の鐘はあまりあてにしていない。

「マーリヤ。六時課までにアニキの店まで行って戻ってこれそうか?」

「ええ。」

 なら一応、親父にも声を掛けとこう。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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