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とても大事な事をようやく思い出しました。

 マーリヤが用意してくれた昼食を店にいるメンバーと摂り、再び事務所の作業台に戻る。

「それで、森での心当たりって、どんなのなの?」

「ライコス。ユリ科の木。」

「いや、なんでユリ科なのに木なの?」

「そういうもの。桜と林檎もバラ科だけど苺もバラ科。マメ科の木もある。形成層の有無で変わるだけ。」

 うん。そんなに興味もないし、話を進めよう。

「木というからには、この季節でも探しにいけるんだよね。それはどんな所に生えてるの?」

「森の中で植生が豊かな部分。」

「切れ目とか低木があるところかな?」

「だいたいそう。」

「とりあえず、地図を見ながら当たりをつけるか。」

「ん。」

 作業台に周辺の地図を広げ、2人で見ていく。

「どこまで探しに行くか。」

 トリキアの東側には南北に伸びるピレル山脈があり、魔境との境界となっている。

 その山脈の南部から伸びるようにトリキアの東南部には広大な低山・森林地帯がある。

 その森林地帯はパンティア王国の国土の60%を占めている。

 深部まで進めば、帰ってこれる技術もない。

 こういう時にカレンのように冒険者ギルドみたいなものがあれば便利なんだが、そんなものはカレン以外にはない。

 そもそも、俺とこころさん2人なんてのは無いだろう。

「まずは、日帰りで周辺を探索してみよう。遠くへ行くには、慣れてからだな。」

「ん。」

 まだ春先になったばかりで、防寒もそれなりに必要だし。

 準備もいろいろ考えないとな。



 翌日、再び森の探索について、こころさんと話をする。

 2人だけではゴブリンと遭遇した場合、対応が難しくなることも考えられるため、ヴィネフを連れて行くことにし、今日はヴィネフも同席している。

 ヴィネフも少しは体も大きくなり、ゴブリンに追われても、逃げるぐらいのことはできるだろう。

 日帰りで帰れる場所を中心に探索場所をリストアップしていく。

「なぁ、アニキ。ここって、ゴブリンの巣があったところだろ?」

 ヴィネフがリストアップした地図を指して言う。

 前にゴブリンの討伐を行った場所だ。

 仔が残らないよう巣は焼き払ったが、枯れ枝と藁で作られた小屋だけでなく、大岩の下に掘られた穴蔵はがあったと聞いている。

 それは残っているだろう。

 あれから数か月経つため、新たにゴブリンが住み着いてもおかしくはない。

「まぁ、新たにゴブリンが住み着いていたとしても、数は少ないだろう。」

「ココロさんは前に魔物討伐をしてたって言ってたけど、何か戦う手段があるんですか?」

「無い。戦う前に毒で弱らせるとかぐらい。」

「聞いても大丈夫なら聞きたいんだけど、前のパーティーってどんな感じで戦ってたの?」

「こころは回復。優が付与魔術師が身体と武器強化。商人の陽菜と鍛冶師の美羽が戦う。」

 ん?

 何だそのパーティーは?

 前衛どころか戦闘は女子二人かよ。

 その優って奴も歯がゆいだろうな。

「あれ?弓矢とか使えないのに、どうやって毒で攻撃するの?」

 ヴィネフは良いところに気が付いたな。

「煙。」

「火を焚くのか?」

 思わず聞いてしまう。

「それもある。でも高いけど麻痺煙幕の発煙筒。これ良い。」

「発煙筒!?」

「麻痺毒の煙が出る。」

「発煙筒なんて、どうやって作ったの?」

「錬金術師に都合してもらった。」

「作ってもらったの?」

「作ったのはこころ。硝酸カリウムを都合してもらった。」

「材料を都合してもらって作ったんだ。」

「作り方も教えてもらった。」

「硝酸カリウムから…」

 何か引っ掛かる。

 何だろ?

 何か大事なことを思い出しそうなんだが。

 もう少しで出てきそう。

「あっ!ソルトピーター!」

 何かのピースが頭の中で嵌まったような感覚があった。

 何で今まで忘れてたんだよ!?

「ソルトピーターと硝酸塩?亜硝酸だったか?塩だ!だからべセリンの肉屋が美味いのか!」

 塩に含まれる硝酸塩が最近の働きで亜硝酸になるんだったか?

 ともかく塩の種類が違うんだ。

 思い出したら、関連する記憶がどんどん溢れてくる。

「こころさん。ごめん、ちょっと確認しないといけない事が出来た。また、話も聞きたいけど、後でね。」

 そう言いながら、俺は事務所を飛び出して工房に飛び込み、塩の入った袋を掴んで駆け出していた。

 確かめないといけないことがある。

 俺はべセリンさんの店に向かって全力で走り、飛び込んだ。

「べセリンさん!使ってる塩を見せてください!」

 全力で店に飛び込んだ俺を見てべセリンさんは驚いている。

 しかし、今はそれどころではない。

「おいおい、どうしたんだ?」

「塩です!塩!」

「ああ、これだが。」

 べセリンさんが袋に入れられた岩塩を出してくれる。

 色はそんなに変わらない。

 舐めてみた。

 微妙に味が違う。

 味で良し悪しは分からないが、やはり産地が違うのだ。

「親父や爺さんの代から、マーリルの商人と付き合いがあってな、そこのを使ってる。」

 やっぱりそういう事だったんだ。

 この街で一番美味い理由のひとつだったんだ。

「それです!それが大事だったんです!」

「良いから落ち着け。」

 これが落ち着けるかって気分だったが、説明してないべセリンさんには意味がわからないか。

 とりあえず、落ち着こう。

 少しだけ深呼吸してから話し始める。

「もう大丈夫です。肉の保存と味を良くするために必要なもの。それは、塩に含まれる成分だったんですよ。」

「成分?」

「産地が違えば含まれる成分が違う。塩以外に含まれる成分です。良い物を探せばもっと美味しくて、保存が効くものが作れます。それに、保存を良くする薬も見つけれそうです。」

「そうなのか?」

「はい。まずは塩だけでも試してみれば分かりますよ。ウチで使ってた塩とで比べてみてください。」

「ああ。一回試してみるか。」

「ええ。違いが分かればいくつかの産地の物を比べてみましょう。」

「分かった。」

「すみません。急に無理いっちゃいまして。」

「ボリスの練習も兼ねてやらせてみるよ。」

「ありがとうございます。」


 帰り道、歩いていると、忘れていた記憶がどんどん蘇る。

 確かハムやソーセージには亜硝酸と硝酸カリウムを添加剤として入れていた筈だ。

 発色と風味、それに保存性。

 亜硝酸がボツリヌス菌を抑制する役割を担っていた筈だ。

 亜硝酸は岩塩に含まれる硝酸塩が微生物の働きにより生じるんだったと思う。

 あと必要な硝酸カリウムとは硝石だ。

 多分、親父が作ってそうな気がする。

 いや、絶対やってるだろ。

 このまま、親父のところに向かおうと思ったが、こころさんを置きっぱなしにしていたのを思い出した。

 一旦、戻らないとな。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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