フケ顔なのは自覚していますが、改めてショックを受けてしまいました。
マーリヤが気を使ってかこころさんに話しかけている。
「ココロさんはユーキと同郷なんですよね?」
「ん。でも記憶が無い。」
「故郷のですか?」
「うん。でも使徒はみんな同じ。」
「え?そうだったんですか?」
やっぱり気持ち悪い。
何がって?
俺の耳にはマーリヤはパンティアの言葉を話してるし、それを返すこころさんは日本語を話しているのが聞こえている。
それで会話が成立しているのだ。
スキルとは分かってはいるものの、やはり不自然にしか見えない。
「えーっと、ココロさんは魔法は使えないんですか?」
ペタルはスキルや魔法に興味があるようだが、男の子は仕方がない。
「ん。でもパーティーに付与魔法師はいた。」
「えっと、どんなスキルを持ってますか?」
「『薬草師』だから戦うためのスキルは無い。」
「あの、パーティー組んでたんですよね?男の子はいたの?」
アンナだ。
まぁ、女の子はその辺気になるよな。
「女子3人、男子1人。」
「えー!その人、格好いいんですか?」
「その人、何歳ですか?」
「優は14歳、いやもう15歳かな?」
14歳といえば、マーリヤとヴィネフは同じ歳だな。
そういや、アイツは何で一緒に暮らさないって言ってたんだろ。
もしかして、女でもいてたのかな?
後でマーリヤに聞いてみよう。
「ココロさんは年下は嫌いですか?」
女子で盛り上がっているうえ、ニカ国語が入り乱れる中でどう話せば良いか分からなくて、俺はあまり話せなかった。
「食事中、何でずっと黙ってたんですか?」
何で俺がマーリヤに説教されてるんだよ?
食事が終わって納屋で身体を拭いていると、マーリヤが来たのだ。
「あのな、お前らは気が付いてないかも知れないんだけど、お前らはパンティアの言葉を話してるんだけど、こころさんは俺の故郷の言葉を話してるんだ。」
「それで?」
「なまじ両方の言葉が分かってしまうから、聞くのも疲れるし、どっちの言葉で話したら良いか迷うんだよ。」
マーリヤが少し呆れた顔で見てくる。
「たたでさえ人相が悪いんだから、好印象を持ってもらわないと逃げられますよ。向こうも人付き合いが苦手みたいですし。」
「悪かったな。」
「そもそも、なんで『さん』付けなんですか?」
「年上だろうからな。後で歳を聞いといてくれるかな?」
「えっ?また今度聞いときますけど。」
まぁ、大半の東洋人、日本人はスラブ系に似ているパンティア王国の人間より若く見えるからな。
俺以外は。
「ああ。頼むよ。あ、それとこころさんと2人の時は普通に話してるから、大丈夫だよ。」
あれ、ちょっと拗ねてる?
「あ、今更聞くんだけど、ヴィネフって、女がいるから別に住むことにしたのか?」
また呆れた顔に戻られる。
「そうですけど、分かってなかったんですか?」
仲間が減るのが怖いのもあったから、詮索してなかっただけだ。
「何となくは察してたけど、わざわざ確かめる気もしなかっただけだよ。それでわざわざ聞いたのは、結婚式みたいなのするんだったら、宴会でもしてやろうかと思ってさ。」
「お貴族様みたいにですか?」
「こっちではあんまりしないか。」
「ええ。敬虔なルース教の信徒か顔見世をしないといけない貴族以外は。」
「そっか。お祝とかの風習もないか。」
「ええ。」
「一つ聞いときたいんだけど、子どもが産まれた時のお祝ってないよな。」
「ええ。そうですけど、ユーキの故郷ではそんなのがあったんですね。」
「うん。子どもの死亡率がすごく低いってのもあったんだろうな。今後は、もしウチの人間で連れ合いが出来たり、こどもが出来たりしたら、お祝いをしような。お前もだぞ。」
「優しいのも良いですけど、誰にでもそうだと、知らずに誰かを傷付けてるかも知れないのは気を付けてくださいね。」
そう言うと、マーリヤは母屋に戻っていった。
俺って鈍かったんだな。
こんなこと、あの子に言わせるなんて、駄目だな。
初めて会った時とは、栄養状態も全然違うし、随分成長している。
絶世の美女までは言えないものの、それなりに可愛い。
もう少し大きくなれば、もっと美人になると思う。
元の日本に連れて帰っても、それなりにはモテる容姿であるとは思う。
でも、正直なところ、14歳の女の子を女としては見れないし。
既に家族みたいになっちゃってるのもあるしな。
それに、いつか向こうに戻りたいと思っているのも、こちら側で女に近寄らない理由でもある。
でもなぁ、俺も男の子だしな…
翌朝はこころさんと試作用の作業場に向かう。
「昨日はすみません。両方の言葉が分かるんですけど、日本語で話し返しそうになるし、日本語だと他のみんなが分からないんで、なんか話しづらかったんですよ。」
「ごめん。」
「いや、別に謝ってもらうような事でもないですよ。」
「なんで、裕紀くんは敬語?」
「敬語ってほどでもないと思いますけど、年上みたいなんで。」
「え?」
「あの、18歳になったところです。」
「…。」
いや、分かってたけど、固まられるとショックだな。
「老け顔なのは分かってますから、気にしないでください。」
「こころは多分21歳。」
そういえば、この世界に来る前の記憶がほとんど無いって言ってたよな。
ってか、一人称が自分の名前か。
クラスにそういう女子が一人だけいてたな。
「ね。そういうことなんですよ。」
「敬語はイヤ。」
「いや、でも…」
「裕紀くんは雇い主。だからタメ口。」
「分かったよ。これでいい?」
「ん。」
そろそろ仕事の話に戻らないとな。
「役に立ちそうなハーブっていってましたけど、ハーブ以外のものでも良いんだけど、何か思いつくかな?」
「例えば?」
「樹皮や根とか漢方に使いそうなのとか。」
「ああ。」
「ハムやソーセージに使うから、邪魔にならない味のものが必要だけど。」
「心当たり森にある。」
「味は?」
「分からない。」
「実際に採取してみてからってことか。」
「ん。いくつか手持ち見る?」
「はい。まずは手持ちから確認させてください。」
「殺菌効果があるもの。」
そう言ってこころさんが取り出した小瓶の中身の匂いと味を確かめていった。
まぁ、揃いも揃って、苦い、臭いときていた。
「そういや、これって口にしても大丈夫だよね。」
「よくない。」
「ダメじゃん。」
「ヒックルは大丈夫。」
「コレって一番苦いやつじゃん。しかも黄色の色がでるし。っていうか、味見しちゃったよ。」
「少量なら大丈夫。薬効が出る量を続けて摂れば危ない。」
「それで、このヒックルとやらはこの辺りで栽培できるの?」
「パンティア南部の海岸に自生。ここは寒すぎ。」
「南部の海岸って、ここからだと、南の森を迂回しないといけないから、歩いて3週間ぐらいかかるよ。やっぱり、森に入るしかないかな。」




