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侵攻

 カレン連合王国は複数の島から成る。

 最大の島、ブリューニ島に王国府があり、次に大きなハイベル島に幾ばくかの王国軍が配備されている。

 カレン連合王国へ攻め入る際に、直接ブリューニ島から攻めだ場合、一旦脱出され、体制を整えられたりすれば、かなり面倒な事になる。

 海軍兵力が充実しているのもあり、一気に叩ききれなかった場合、島で孤立する危険もある。

 それなりに海軍を疲弊させる必要もあることから、ハイベル島を占領後に戦力を削ってから王国府を攻める方が良いだろう。

 そう判断し、ハイベル島から侵略することにした。

 4つの部隊に分け、それぞれ別の場所から上陸し、最大都市ウィズポートを目指す。

 当然、略奪を繰り返しながらになるが。

 それに、難しい作戦を立てた所で、そのとおりに動いてくれるだけの知能も足りていないだろう。


 特に俺のいる部隊はハイベル島に土着のゴブリンを含めた魔物を従え、その数を増やしながら、北端からウィズポートへ向かっていた。

 増えた部隊は、元からいる者に指揮権を与え、異なるルートを指示している。

 俺たちは側近のみで行軍している。

 トロールの行軍速度に合わせる必要があることがあり、俺は輿を作らせ、それを担がせて行軍していた。

 普通に歩いて行軍するだけだと、ゴブリンとトロールで差が出てしまい、バラけてしまうのだ。

 ちなみに、別にした部隊は身軽で先に進みそうだが、略奪に精を出すため、俺たちの部隊より先に進むことはない。

 また、途中で捕まえた人間を拷問して情報収集も怠らない。

 それによると、まだ、魔物の大量発生程度の認識しか無く、俺たちを迎え撃つような戦力の編成はされていないらしい。

 ウィズポートまであと数日ぐらいのところまで進んできたが、かなり都合の良い展開になっているようだ。


 その夜、夜通しの行軍の最中にザウナーが声をかけてくる。

 まぁ、基本的にコイツらは夜行性だから、夜の行動が中心で、休憩は中天だ。

「王よ、人間の臭いがします。」

「村でも近くにあるのか?」

「いえ、数名が潜んでいるものと。」

「冒険者ギルドが情報収集のために人間をばら撒いてるらしいよな。それか。」

「恐らくは。」

「俺らを見られるのも面倒だから、さっさと片付けてこい。」

「はっ。ただ、雌もいるようなのですが、いかが致しましょう?」

「女は捕まえてこい。上玉なら俺が貰う。大したことなけりゃ、頑張った奴に褒美にやろう。」

「はっ。」

 そう言いながら、俺は『梟の目』のスキルを起動する。

 目視できる距離は『鷹の目』には敵わないものの、暗視ができる。

 遠視プラス暗視のスキルだ。

 そもそも、俺たちは夜目が利くとはいえ、やはり暗さで遠くまでは見えなくなる。

 夜間の奇襲やその戦況把握には非常に役に立つスキルだ。

 『暗視』と『鷹の目』を習熟することで取得できたものだ。

 『鷹の目』と『鑑定』を合わせたようなスキルがないか、期待はしているが、残念ながら今の所聞いたことはない。


 人間たちは少し低くなっている小川の川岸に身を潜めているため、その姿は確認できなかったが、ゴブリンたちの展開する状況からその場所にあたりを付ける。

 ゴブリンたちがメインなのは、トロールたちは性欲より食欲が優先で、喰えないなら女には興味が無いからだ。

 そもそも、身体の大きさが違いすぎるため、人間の女が相手をしても、どれぐらい持つか分からない。

 包囲を終えそうな状況になった時、ようやく人間たちが動き始めた。

 小川から火の着いた何かが投げられるのが見える。

「発煙筒?」

 思わず呟いてしまうが、この世界でそんな文明的な物を目にするとは思わなかった。

 次々とそれは投げられ、辺りを照らすとともに濃い煙が包囲したゴブリンたちを飲み込んでいく。

 どうもゴブリンたちの動きが鈍い。

 毒か。

「まんまと嵌められたな。あの煙は毒だな。」

「なんと!」

「風下に向かって逃げるだろうから、回り込ませろ。煙を避けてな。」

「王の仰るとおりですな。トロールも使いますよ。」

「構わん。」

 そう言いながら、輿を担ぐトロールたちに風下に向かうように指示する。

 煙の中からゴブリンたちの悲鳴が聞こえ始める。

 バカが。

 真っ直ぐ煙の中に突っ込みやがって。

 風下に向かった奴らの中からも煙に突っ込むバカが見える。

 輿の上から状況を見ていると、トロールでさえも何体か殺られている。

 毒で鈍っていたとしてもトロールは硬い。

 それを倒せるということは、それなりには使えるってことか。

 ただ、俺の脅威にはならない程度だろうが。

 煙は少しずつ薄くなってゆくが、まだ人間たちは捕まらない。

 それどころか見ている間に被害は拡がってゆく。

 煙に気を付けろと言ったのに、まだ煙に突っ込むバカが見える。

「お前ら、俺が言った事ぐらい守れよ!このノータリンどもが!」

 煙の合間から、人間たちが見えた。

 まだガキにしか見えない身体つきの女と男が3匹だ。

 こんなガキにしてやられるなんて、俺の部下も情けない。

 思わず立ち上がって声を荒げてしまう。

「何だ、ガキじゃねぇか。ガキ相手にいいようにされやがって!」

「王よ申し訳無い!」

 ザウナーが足元で申し訳なさそうな声をあげる。

 このままでは逃げられる。

 逃げられるということは、獲物を逃がすというだけではない。

 気付かれずに街まで近寄れるというせっかくのチャンスをふいにされてしまうかも知れない。

 立ち上がったままトロールの頭を蹴り、風下に急がせた。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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