人間狩り
俺たちは、人間の行商のキャラバンを襲っていた。
トロールは移動速度が遅いため、人間の集落を襲うような場合には連れて行くが、山賊行為の場合はゴブリンだけで編成していた。
警護の人間も15人いたが、ゴブリンたちだけでは手に余るが、俺の敵では無かった。
それに、魔眼の力もある。
俺の魔眼は見た者の生命力を吸い取ることができるのだ。
傷を負っても魔眼の力で回復しながら戦うことができる。
それに、生命力を吸い取るため、敵はますます弱体化していく。
ただ、普段から意識しなくても魔眼は発動し続けているため、眼帯で魔眼を隠す必要があったが、元々のステータスもかなり上がっているため、魔眼を使っていない時間もそんなに気にはならなかった。
キャラバンの警護はほぼ俺一人で片付けた。
その積み荷は、かなり魅力的なものだった。
『人間』だ。
女も魅力的ではあるが、『人間』を殺せば、かなりの経験値が手に入る。
魔獣でもかなりの経験値が手に入るが、その強さに不釣り合いなぐらい経験値が多く、非常に魅力的だ。
3台の馬車のうちの1台は、女が満載されていた。
それも、なかなかの上玉揃いだ。
「ジーガサマ。エモノハ?」
「男は餌で良い。女は俺のモンだ。頑張った奴には褒美にでもしようか。」
「ハッ!」
やっぱり、人間の女は良い。
俺を見て怯えるが、逆らわなければ命の保証はされているため、大人しく言うことを聞く。
俺の集落は規模が大きくなってきたこともあり、近くの廃村に住み替えており、その中央の屋敷を俺が使っていた。
顔の良い女を10人ほど連れて来て、俺の部屋に侍らせていた。
「お前らは、奴隷か?」
「はい。」
「何で初めてだったんだ?」
「私たちは、高級奴隷として取引される予定でしたので。」
「まぁ、良い。飽きれば部下への褒美になる。頑張れよ。」
夜な夜な、女たちを抱きながら、この世界の知識を聞く。
主に人間の国のことだが。
人間の女が手に入ってからシファへの興味は無くなった。
気が付けば、シファはどこかに消えていたが、特に気にはならなかった。
ゴブリンやトロールの集落において、人間の女の価値は高い。
褒美欲しさに、魔物どもは奮い立ち、俺の集落は周辺の集落を併合し、200を超える群れになった。
ただ、魔物たちの人間の女の扱いは荒く、褒美としてとらせた女はバタバタと死んでいき、消耗していく。
「王よ。もう褒美となる女が少なくなってきておりますな。」
なんと、ゴブリンも戦いを重ね能力と共に知力も向上するのだ。
何故か俺の側近となった、このザガンという名のゴブリンはいつの頃からか俺のことを『王』と呼ぶようになった。
とはいえ、俺は純粋なゴブリンではない。
シファ自身、ゴブリンとトロールの混血であり、俺の父親は下級の吸血鬼らしく、色々なものが混じりすぎてもはや俺の種族は何かわからない。
「王とはいうものの、雑種の王だがな。」
自嘲を浮かべながら思案する。
「人間の集落でも襲うか。大きな街なら娼婦でもいるだろうしな。」
「娼婦?ですか。」
「ああ。身体を売って金に替える女たちだ。売春宿でも見つければ、沢山の女が集まっているだろうしな。」
「沢山の、ですか。」
この側近っぽいゴブリンも欲に振り回されるただの魔物だ。
「サラ。仕事をこなせば、お前の自由は約束しよう。」
俺は捕まえた奴隷の女を娼婦として潜入させる方法を考えた。
人間の斥候が居ないのは、痛い。
俺自身も潜入なんてものには不向きだ。
「裏切れば、当然命がないのは分かってるだろうな。」
「はい。」
女は震える声で返事をした。
人間から奪った銀貨や銅貨を詰めた袋を持たせて、人間の街に女を送り出した。
その街はトリキアといい、王国の外れにあるものの、身分の高い公爵とやらが治めており、中央に城もある。
この街は北方や東方の国々との交易拠点として栄えており、売春宿も多数あるとは聞いている。
一旦戻ってきた女は、地図を俺に渡す。
「なるほどな。売春街は街の外れにあるのか。こりゃ、楽な戦になりそうだな。」
そうは言うものの、ゴブリンたちは一様に知能が低く、人間の軍隊、部隊として機能することは考えにくい。
城にはそれなりの戦力が控えている。
重装備の騎士たち相手では、ゴブリンの集団はたやすく打ち破られるだろうから、俺自身が先頭に立たないとならないだろう。
城壁の外側の貧民街しか相手にしないのであれば、騎士たちも出てこない公算が高いだろう。
それに場所も良い。
「ザガン。兵を集めろ!人間の女を狩りに行くぞ!」
「まずは、火をかける。少しは頭を使える者を集めて準備をしろ。」
「火ですか?」
「ああ。貧民街は木造だからよく燃える。混乱している間に女を奪って逃げる。抵抗する男は皆殺しだ。」
「それで、王はいかがされますか?」
「俺が先頭に立つ。号令をかければ、すぐに退却だ。分かったな!」
「はい!」
俺は最近従わせたトロールを四つん這いにさせ、その背に乗って、ゴブリンの集団を鼓舞する。
「お前ら!人間の女は欲しいか!」
「グォォ!」
ゴブリンたちは気勢を上げる。
「なら、奪え!邪魔する奴らは皆殺しだ!」
「グォォ!」
「今回は女と食料だけだ!実入りは少ないが勝ち戦にする!そうして積み重ねていくぞ!」
「ギャグォォ!」
ゴブリンたちの士気はかつてないほど上がっている。
「ついて来い!手柄を上げた奴には褒美だ!」
奇声を上げながら逸る集団を率いて俺は人間の街に攻め込んだ。
街に火をかけた効果は覿面だった。
混乱し、逃げ惑う人間たち。
男はその場で殺し、若い女はそのままゴブリンたちに捕まえられてゆく。
用心棒なり、武器を持った男たちも少しはいたが、魔眼で鈍らせ、難なく斬り殺していく。
武器はすぐに切れなくなるため、殺した相手の武器を奪いながら進んでいく。
近くの建物に這い登り、屋根から戦況を見る。
城の外縁部にかなりの人間が避難しており、衛兵たちは防火と避難の対応に手を取られている。
「今日はここまでだ!退却するぞ!」
そこからゴブリンたちに退却を指示をする。
巣に戻ってから戦果の確認をする。
混乱に乗じての急襲のうえ、ゴロツキ程度しか相手にしていなかったこともあり、こちらの被害はほとんど無かった。
捕まえた娼婦などの女は32人。
それに肉などの食料もそれなりに集まっている。
特に酒があるのが嬉しい。
ゴブリンたちは酒の醸造などの技術は持っていない。
こうして奪ってきた時しか手に入らない貴重品だ。
酒と女は一旦俺が管理し、活躍に応じて配分していく。
ただ、酒はここで2樽は戦勝の宴に供する。
人間を襲うことに味をしめてもらうことも必要だからだ。
2樽の酒はあっという間に無くなったが、バカ騒ぎは明け方まで続いていた。




