表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/94

転生

しばらく、別の転生者のお話になります。

この辺りから少しだけ「エンチャンター」と交差してゆきます。

 下らねぇ人生だったな。

 盗んだ原付きを後輩に運転させ、後に乗りパトカーに追われていた。

 盗んだのは100ccを超えるものだったため、二人乗りでもそれなりの速度が出る。

 目の前のタクシーが急に減速したため、追突し、俺は投げ出される。

 まるでスローモーションのようだった。

 対抗車線まで飛び出した俺の目の前には、乗用車が迫っていた。

 走馬灯なんて見なかった。

 ただ、あっと言う間の出来事だった。



 次に気がつくと、暗い場所にいた。

 かび臭い。

 しかも、何かが腐ったような臭いと鉄臭い臭いが交じり合っている。

 そこここから湿った音が聞こえる。

 ぴちゃぴちゃ、くちゃくちゃというような音だ。

 真っ暗の穴のはずだが、俺には見えた。

 小さな赤ん坊のような魔物がいくつも這い回り、何かに集まっている。

 その何かはいくつかあり、獣のような物、そして、人間のような物もあった。

 そうだ、コイツらは人や獣の屍を喰らっているのだ。

 喰われている屍と目があってしまった。

 既に死んでおり、その光を失っていたが、その顔には恐怖の跡が残されていた。

 俺は吐き気を覚えたが、えづくだけで何も出ない。

 その這いまわる何かたちから距離を取り、穴蔵の隅で膝を抱えていたが、半日もすると空腹に耐えかねてくる。

 泣き叫ぶと、魔物が様子を見に来る。

 穴蔵の外から俺を覗くその魔物は灰緑色の皮膚をした、人に似た姿を持つ魔物、ゲームやアニメでよく見るゴブリンそのものだった。

 その辺りで這い回る者もそれを小さくしたような容姿であり、俺の手は小さくても爪を持っていた。

 俺はやっと理解した。

 魔物として生まれ変わったのだ。

 声の出づらいこの新しい身体で、何度も泣き叫んだが、現実は何一つ変わらない。

 穴蔵の中で一日も経った頃だろうか。

 飢餓感とでもいうべきものだろうか。

 それが俺の精神を蝕み始め、気がつくと、俺は人間の屍に食らいついていた。

 恐怖も嫌悪もその飢餓感が消してくれ、内臓の甘さが、血の味が俺を満たしていた。



 数日経っただろうか。

 這いまわることしかできなかった身体に力が付き、穴蔵の壁で身体を支えながらも立つことができるようになった。

 俺は穴蔵から這い出た。

 想像どおりの光景が目の前に広がっている。

 粗末な小屋を緑色のゴブリンたちが忙しなく出入りしている。

「シファ!コドモガデタ!」

 近くのゴブリンが誰かを呼ぶ。

 少し毛色の違う魔物が少し離れた小屋から出てくる。

 肌の色が緑よりも少し茶色がかっており、頭ひとつ背が高い。

 そして、その辺りのゴブリンよりも人間に近い容姿をしていた。

「ジーガ。もう歩けるようになった。」

 それは俺を抱きとめた。

 どうやら、母だったようだ。

「シファ、お前、俺の母親か?」

 声帯なり、身体ができきっていないためだろうか、声が出しにくいため、片言になっていまう。

「ええ。私が貴方の母、シファ。もう、言葉を話せるの?あの人に似たのかしら?」

「父親は?俺の。」

「ここには居ないわ。」

 シファはその場で跪き、俺に目線を合わせて言った。

「貴方は『ジーガ』。私、シファの息子よ。」



 それから、数カ月、穴蔵とシファの粗末な家を行き来する生活が続いた。

 同じ時期に生まれたゴブリンたちも同じような生活をし、そのうち穴蔵から離れていく。

 そして、また新たに生まれた赤子は穴蔵に入れられるのだ。

 シファから聞いたところ、ゴブリンはこのように集団で子育てをするため、弱い種族ながらも強い繁殖力を持ち、繁栄出来ているらしい。

 もう、駆けることもできるようになっており、シファと一緒に狩りに出るようになった。

 ゴブリンたちは基本的に、集団で獲物を追い詰めて狩ることが基本になる。

 弓などの複雑な武器を使いこなすことのできる者が少ないからだ。

 その中でも、俺はすぐに弓の使い方を覚え、獲物には苦労しなくなった。

 俺たち親子は純粋なゴブリンではないため、周りのゴブリンよりも身体が大きい。

 たった数カ月で俺の身体はゴブリンの成体程度に成長していた。

 最も特徴的だったのは、俺たち二人の知能だろう。

 俺は元々人間だったのもあるが、シファも教養というものはないものの、言葉も流暢に話すことができ、人間に近いぐらいの知能が備わっているようであった。



 身体は同年代の他のゴブリンたちよりも大きくはなった。

 ただ、俺たち親子はこの群れの中で虐げられていた。

 一対一の素手であれば遅れはとらないものの、貧しさもあり、武器を持たない俺は他のゴブリンの子供たちから虐められていた。

 『半端者』や『雑種』と罵られ、石を投げられるどころか、棍棒で殴られるのもほぼ毎日だった。



 ある日、俺が狩りから戻ってくると、雄のゴブリンの声が俺の小屋から漏れ聞こえていた。

 シファに雄のゴブリンが覆いかぶさっている。

 別の雄ゴブリンもいた。

 嫌がり逃げようとするシファの姿に俺は激昂し、雄ゴブリンに殴りかかったものの、まだ成体とは言えない俺はふっ飛ばされ、転がったところに馬乗りにされて、ひたすら殴り続けられた。

 鼻も歯も折られ、血みどろになった。

 トロールは人間と同じように歯は再生できないが、ゴブリン側の特性を受け継いだのか、折れた歯が生えてきたのは助かった。



 それから数日後、そのゴブリンの集落は人間たちに襲われて壊滅した。

 俺も人間に襲われ、殺されそうになったが、俺を狙う男にシファが背後から襲いかかり、俺たちは命からがら集落から逃げ延びることができた。

 ただ、シファは左肩に矢傷を負い、今までどおり狩りに参加することはできなくなった。

 食うに困った俺たちは、シファの産まれたトロールの集落に駆け込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ