人に任せるということも大事なのです。
テオドルの傭兵団、『銀灰の翼』は無事にノヴェルの南下を抑え、凱旋のためトリキアに戻ってきていた。
『銀灰の翼』に慰労も兼ねて宴会を予定しており、俺からも祝として肉を出すとともに、料理の手伝いに駆り出されている。
まぁ、単純な手伝いという訳ではなく、現代の料理法を知る俺たち親子の料理は知る者からすれば、不思議で美味いと評判なので呼ばれたのだ。
親父の徒党はよく若い衆に料理を振る舞ってやっており、団長のテオドルはよく相伴に預かっていたからで、テオドルからも頼まれている。
浴場の厨房で連れてきた部下に指示を出しつつ下ごしらえをしていると、傭兵団に先行して戻ってきたラファエルが顔を出してきた。
「あー、今回は本当に疲れたよ。」
「あれ?親父は?」
「カレン連合王国に渡った魔族の一団がいて、後を追っていったよ。だから、まだしばらく帰ってこないよ。その伝言を頼まれたんだ。」
「また、仲間を増やしに?」
「それはどうなるか分からないけど。」
手を動かしながら今回の働きを聞いた。
親父とラファエルは事前にノヴェルの都市ランゴスに入り、有力者と交渉を行った。
当面の魔獣や魔族を2人で退けることで、ノヴェルに留まるように説得したらしい。
どうやって説得したのか不思議だったが、どうやらラファエルは規格外の強さを見せつけたらしい。
冷静に考えるとラファエルは一軍並に強さがあるということですか?
確かにサキですら成人男性4、5人と対等に渡り合える力はあった。
そう考えると、ラファエルはそれだけの強さがあるんだろうな。
ノヴェルは一枚岩ではないため、その決定に従わない者は敵として殲滅又は捕縛により奴隷として売却しても口を挟まないこととした。
無事、目立つ大型魔獣の討伐を終え、遅れて現地に入った『銀灰の翼』と合流して残る魔獣を掃討したあと、『銀灰の翼』はパンティア王国内に侵入したノヴェルと交戦し、捕獲して凱旋。
ラファエルはしばらく魔獣が再び攻めてこないか確認してから単独で帰還したということだ。
「何だよ。こんな時に呼びつけて。」
闇市に出ていたペタルを街の事務所に呼びつけたのだ。
「ああ、少し相談したい事があってさ。」
精肉業は安定し始めており、闇市でもそれなりの収入が上がってきており、経営は軌道に乗り始めていると言えるだろう。
「事業拡大を考えててさ。精肉の方はペタルに全面的に任せたいと思ってるんだ。」
「まぁ、何とか仕事は覚えたし、大丈夫だと思うけど、闇市の方もあるしな。」
「ペタルには、自分が働くだけじゃなくて、人を使う事を覚えて欲しいんだ。」
「はぁ。闇市の方はどうしたら良いんすか?」
「誰かに任せて、ちゃんとできてるか見る。出来たら、アンナだけに頼るんじゃなくて、ヴィネフと一緒に頑張って欲しいんだけど。」
「アイツ、賢いんだけど、暗いんだよなぁ。店には向かないな。」
「俺は2人が店先に立つ必要は無いと思ってる。まぁ、お前は定期的に顔見せはしてた方が良いだろうけど。」
「大丈夫かな?」
「今の現状で言えば、精肉の方は解体場の能力からするとまだ半分ぐらいだけど、次の冬にはフル稼働するだろう。それまでに、人の回し方をちゃんと覚えておいて欲しい。」
「頑張ってみるよ。」
「別に俺もいるから頼れば良いし。」
「ああ。」
「あと、ボリスをハムとかソーセージの開発に、サムイルを支店を作るのに使いたい。」
「支店って何するんすか?」
「肉とハムとかソーセージをこの街で作って他の街で売る。そのために今よりも美味しくて長持ちするハムやソーセージを作りたい。冬の終わりには腐りかけの塩漬け豚か馬鹿高い羊肉しか手に入らないからな。その時期に旨い物を売れれば儲かる。」
まぁ、儲けだけでなく、食料事情の改善の意味合いもあるけど。
「それと、『銀灰の翼』の助力をしたいってのもある。」
「どうやって?」
「拠点と流通網を構築できれば『銀灰の翼』の兵站になる。その兵站なくして『銀灰の翼』は目標とする役割は担えないからな。その流通網を活かせば新しい商売もできるだろうしな。」
この辺りの話は親父ともしており、俺がメインで動くことになっている。
このパンティア王国での流通は、行商かそれに準じるような手段しかない。
流通網の構築は、未来では必須となる。
流通網はヒト、モノ、カネ、そして情報を流す。
それを手に入れれば、この世界で大きな力となるのは間違いない。
流通網自体、今の世情で必要とされるかは分からないが、必要となった時にノウハウを蓄えることができれば優位に立てる。
「何かデカい話してる?」
「そうだな。まだ先の話だし、人も金もまだまだ足りてないしな。」
「ボリスは腕の良い職人に預けようと思ってるけど、サムイルはしばらくはペタルが使っていてくれ。」
「分かったよ。」




