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親父は腕力にモノを言わせる気です。

「ギラン、改めて紹介するわ。ワシの息子の裕紀ゆうきや。コイツもこっちに来てもうたのもあるし、この話は受けたるわ。っていうか、受けなしゃあなくなってもうたんやけど。まぁ、アンタのことは信用できそうやし、力は貸す。」

「マサヤ、アリガトウ。」

 ギランと呼ばれた男の言葉は片言ながら日本語だ。

 ギランが俺に向き直る。

「ユーキサンですネ。ハジメマシテ。ギランです。ココ、アウト・オブ・レンジのリーダーでス。」

 四十絡みの赤毛を短く刈り込んだ頭をしており、鎧を着込んだ筋肉隆々な男がたどたどしい日本語で挨拶をしてくる。

 ラテン系に赤髪とは少し違和感のある人種だな。

「コイツには、俺からここに来た理由を説明するわ。とりあえず、貸してくれる家に案内してるくれるか?」

「ワかりました。」

 どうやら、今居るのはどこかの砦のような場所だ。

 砦といっても、城壁も無く、石造りの四角い建物が密集しているだけである。

 ギランと同様の鎧を着た人間と何人かすれ違う。

 その度に珍しそうに振り返って見られる。

 親父は歩きながらギランに話しかける。

「後で巻き込まれて来たコイツをどないするか、相談したいんやけど。」

「そうですね。『クラン』ゼンタイでソウダンがヒツヨウです。モウスグ、ソウタンはじまりマス。」

「そうか。」

 砦の外れの小さな家屋に俺たちは案内された。

「ココがネドコになりマス。」

「トイレと水は?」

「トイレとは?」

「大便や小便するとこや。」

「そこのポットです。タマッタしたらそのアタリにスててください。」

「飲み水は?」

「ムコウにカワがアリマス。そのカメにクンデください。」

 トイレがポットかよ。保育所みたいだな。

 再び、この世界に来たドアのある建物に戻ってくる。

 この建物が砦の中心らしく、一番大きな規模の集会所のような場所に案内される。

 しばらくそこで待っていると、続々と人間が集まってくる。

 肌は浅黒く、顔つきはラテン系っぽいが、ほとんど全員見事な赤毛で、稀に金髪が混じっているぐらいである。

 やっぱりラテン系に赤毛や金髪だと、何だか違和感がある。

 100人近い男女が集まったところで、ギランがお立ち台に立って、仕切り始める。

 何を言っているのか全く分からない。

「コチラにオネガイします。」

 ギランが親父をお立ち台に招く。

 何やら集まったみんなに親父を紹介しているようだ。

 何か一部でブーイングがある。

「おい、ギラン。何やアレは?何を難癖つけとんねん。」

「アナタのチカラにギモンをカンジているモノがイマス。」

「まぁ、そら分からんでもないな。」

 多分、勇者に親父が選ばれたんだろうけど、見た目だと、優男で特に大きいわけでもなく身体も細く、とても強そうには見えない。

 俺が185cmで80kg、対して親父は175cmで65kgだ。

 困ったことに、俺の方は親父に似ず祖父に似て顔が厳ついうえ、その体格なので学校では大人しくしてた筈だが、やたらと怖がられていた。

 本人は至って真面目な生徒の積りなのだが。

 話が逸れたが、この集団の平均身長は165cmぐらいだが、ギランを始め俺に並ぶ体格の人間も多少はいるため、親父に疑問を抱いたのだろう。


「ギラン、ちょっと聞きたいんやけど『破壊者』には武力が必須なんか?」

「セイカクにはどういうキジュンでエラばれるかワカリマセン。タダ、『ハカイシャ』となるチカラをユウするモノがエラばれると。」

「まぁエエわ。荒事は苦手やないしな。ワシが得意なのは喧嘩やさかい、篭手だけ貸してくれ。ただ、剣を使ってるトコなんて見たことないから、剣を使ってるところを一回見してくれへんか?」

「ケンカ?ミせるトハ?」

「俺の前に、騎士同士で試合して欲しいんや。」

「ワカリマシタ。チカラダメシ、ダイジョブですか?」

「相手はアレでエエんやろ?」

「ハイ。」

「ほな大丈夫やろ。」


 ギランが親父を睨めつけている男と別の男を呼び出し、集会所の真ん中を空けていく。

 片手剣に丸い盾を装備した二人が向き合い、ギランの掛け声で練習試合が始まった。

 親父を睨めつけていた男が相手の男をいいように痛めつけていた。

 刃引きはしてあるのだろうが、剣ってものは思ったよりも重そうである。

 二人とも頑丈な鎧で身を固めているため、殴り合いに近い様相を呈しているが、中々の迫力があり、双方が剣を振るうたびに鈍い金属音が鳴り響く。

「ふーん。」

 親父の感想はそれだけだった。

 剣だけでなく盾も相手を押したり、攻撃に使用するとは思わなかった。

 しかも、親父を睨んでいた男は俺の目から見てもかなりの使い手に見える。

 ギランに呼び出され、親父が男の前に歩み出る。

 結局、親父は左手だけに篭手を着けることにしたようだ。

「ヨロイはヒツヨウあリマセンか?」

「かまへん、コレだけで充分や。その方がエエ宣伝になるやろ。多少やったら怪我さしても大丈夫か?」

「オオケガはコマりマス。オテヤワラカニ。」

 何でギランは会ったばかりの親父のことを疑わず信用しているのだろう?

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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