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スキルシステムの恩恵は凄まじいです。

「ラファエルには、テオドルと一緒に傭兵団を立ち上げを手伝ってもらおう思うとるんやけど、サキにはこの街で間諜や魔族との調整をしてもらおうと思ってるんや。」

「サキさんの魔族との調整って、魔族を味方にするのか?」

「おんなじ人間やねんから、仲良うしたいだけや。」

「もう、魔族とコネクションがあるのか?」

「まぁ、多少はな。」

「それと今日来たんは、サキにステータスのシステムの凄さを教えて貰おうと思ってな。」

 そう言って、親父は席を立った。


 裏庭の稽古場に連れてこられる。

「サキュバスの身体能力自体は、元々人間とそう変わらん。サキの力を見たら、ステータスのシステムの凄さを実感できるやろ。」

 裏庭でサキと木剣を持って対峙している。

 サキは片手でだらしなく木剣を携えているだけで、型もなにもない。

「じゃ、サキさん。行きますよ。」

 そう言って剣を振りかぶり、斬りかかるが、彼女は微動だにしなかった。

 ガッ!

 彼女の肩口に木剣が叩きつけられる。

 当たる瞬間、避けようともしなかったため、止めようとしたのだが、間に合わなかったのだ。

 しかし、彼女は表情すら動かさなかった。

「アタシのレベルになったら、それぐらいで傷も付けられないから、安心しておいで。」

 微笑みながら言う。

「女の子には甘いから、サキの方からいったらんと、よう戦えんと思うわ。行ったってくれ。」

「了解。昌也。」

 そう言うと、恐ろしい速度でサキが踏み込んでくる。

 横薙の木剣を下から掬うものの、とんでもない衝撃に体制を崩しそうになる。

 その木剣を振るフォームは素人丸だしなのだが、どこからこんな力が出ているのだ?

 片手で無茶苦茶に振り回す木剣はそれぞれが必殺の威力を持っている。

 あまりの剣圧に負け、剣を弾くとともに、腰の辺りを加減せず蹴ってしまう。

 しかし、その足に返ってきた感触は想像を超えて硬く重いものだった。

 咄嗟に押し返される力で身体を後ろに飛ばし、距離をとる。

「ありがとうな。サキ。」

 そう言って、親父が試合を止めた。

「どや。これがステータスのシステムによる強化の力や。人間でも魔族でも強大な力を持ってるんは、種族のせいやなくて、ステータスのシステムのせいなんや。」

「ああ。」

「まぁ、特に魔境は魔物も多いし、それを狩って生きるモンも多い、更に乱世っちゅう厳しい環境やから、この子らみたいに人と比べたら力を持ってることが多い。けど、おんなじ人間やっちゅうのは忘れんといてくれ。」

「親父の言いたいことは分かったよ。」

 こうして、普通に話す機会を最初から与えられれば、そう思えるのだろうが、人間と魔族が争い続けているこの世界の情勢を考えると、難しいと言わざるを得ないのかも知れない。

 俺の場合は更に同郷なのも大きいんだろうけど。

「改めて、芦屋祐希です。宜しくお願いします。」

 二人に向き合い、手を差し出した。



「おい、ドーテー。」

 サキュバスのサキが俺を呼び止める。

 サキさんと連絡を取るために、親父の売春宿に足を運んできたのだ。

 サキさんは、サキュバスながら、何故か俺には手を出さない。

 まぁ、来られても拒むとは思うけど。

「その呼び方は止めてくれよ。」

 先日、話をしていて童貞なのがバレたのと、しばらく女と付き合う気が無いと言ったのが原因みたいだ。

 因みに、サキは前世の本名らしい。

 身体年齢の24歳に中身の分はプラス36歳だ。

 人生経験だけで言えば、かなりのものだが、話をしていても年相応にしか思えず若々しい。

 肉体と精神は釣り合ってくるものなのだろうか?

 サキさんは、売春宿に落ち着くことになったが、管理者としてだ。

 彼女の持つ避妊のスキルを使いたいというのもあったんだろうけど。

 避妊具なんてまだ存在しないこの世界では重宝する能力だ。

「昌也さんから、連絡が来てたよ。」

 そう言って、金属の筒に入った手紙を渡してくれた。

「へぇ。」

 手紙を開くと、日本語で書かれた文字が目に入る。

「サキさんはもう読んだ?」

「ええ。もう読んだわよ。」

 手紙の内容は、今、カレン連合王国にいることと、テオドルの結婚式の日取りと場所であった。

 貴族でもない俺たちは結婚式自体には参列できないが。

 非公式な形でも、祝の品でも送ることにしておこう。

 テオドルは一旦実家に戻り、トリキア辺境伯領に接するフリズア侯爵家の次女との縁談に乗ったのだ。

「侯爵家との縁談なんてすごいけど、急な話だな。」

「さすが昌也さん。どんな手を使ったのやら?」

「え?」

「何もなく下級貴族にそんな縁談が転がり込んでくることなんてないでしょ。」

「そういや、エリナさんも貴族との結婚が決まったって言ってたよな。」

「そっちはエリナの努力かしら。まぁ、ウチとしても有り難い話だけどね。」

「そう言えば、こっちでも、ジューンブライドみたいなのがあるんでしたよね。だから、エリナさんの結婚式も来月なんですよね?」

「ええ、でもこの辺りだと、牧畜が盛んなのもあって、そこまで重要視されてないのと、相手は未亡人なのもあるから、ささやかにってのもあると思うわ。」

「あ、気候と季節柄のものだけだと思ってましたが、農作業との兼ね合いもあったんですね。でも、この急ぎ具合って、もしかしてテオドルの騎士団を動かす前にってことですよね。」

「そうよ。聞いてなかった?」

「聞いてなかった。そう言えば、前々から聞きたかったことがあるんだけど。」

「何よ改まって。」

「どうやって親父はサキさんたちを見つけたんだろうかって。転生者は言葉も勝手に変換されるらしいし、見た目だけで元日本人なんて判別はできないし。」

「ああ、そのことね。別に隠すようなことじゃないわよ。アニメソングよ。」

「アニメソング?」

「前の世界のアニメの主題歌なんて聞いちゃったら、前の世界から来た人間だって嫌でも分かるわよ。」

「翻訳のスキルが効いていようがいまいが、そりゃ分かるよな。」

「しかし、魔族の一団の前にたった一人で踊り出てアニメの主題歌をがなる昌也さんの姿にはほとほと困惑したわ。私が出て行ったら、そのまま丸め込まれて連れてこられたってところかな。」

 まさか、魔族の中から転生者を見つけ出す方法がアニメソングとは、何だか微妙だな。

「ワタシがいなかったらそのまま集団に襲われてたわね。」

「ん?もしかして親父はそんな事を魔境で繰り返してたのか?」

「そうなるわね。ラファエルが先に昌也さんに会ったんだけど、それ以前は一人で魔境にいてたって言ってたわ。」

「よく生きて帰ってきたな。」

「そうよね。だからこそ、説得力があったのよ。ラファエルに手伝わせれば良いのにまた一人でどこかに向かう気よ。」

 何故そこまで独りでやろうとするのだろう?

 聞いてみても答えないと思うともどかしくて仕方がない。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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