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親父は闇市に手を出すようです。(当然便乗します)

 そういえば、俺は寝る前に魔法の練習をしている。

 もう、この世界に来てすぐに練習し始めたのであるが、一年近く経ってようやく形になり始めてきたところだ。

 一般的に黒魔法スキルにある『炎の短矢オーギャン ボルノ』と『水礫ヴォーディ チャックル』ぐらいは3回に1回ぐらい発動できる。

 読みはこのパンティアの言葉だ。

 この世界の人間の大半は適性のあるジョブを取得することによって入手できる『スキル』により、詳しい魔法の使い方を熟知していなくとも魔法を発動できるようになる。

 逆に、俺達のようにスキルを取得できない者であっても、適性があれば、正しい手順を踏み魔法を発動できるのである。

 因みに親父は全く魔法に対する適正というものがないらしい。

 魔法を発動させるには、まず、正しい魔術式を目の前の中空に想起する。

 次に想起した魔術式に沿うように、魔術式を魔力で再現するように、魔力を流していくことにより、魔法が発現する。

 自分の目では、魔力が満たされて魔法が発動する瞬間、想起した魔法式が光ってみえる。

 ちょっとだけ格好良くて気に入っている。

 そもそも、別の世界から来た俺にとって、魔力というものを認識するだけでも困難であり、魔力操作もアウト・オブ・レンジを出る数日前に教わっただけであったため、少し時間がかかってしまっていたのである。

 因みにスキルが無くても魔法は使えるが、スキルを持つ人間については、魔力量などがスキルのシステムを通じて最適化され、魔法式の想起も省略できる。

 つまり、魔法の行使を念じるだけですぐに発動できるらしい。

 ただ、スキルとして取得した魔法のみしか使えないとはいえ、スキル持ちには敵わないだろう。



「こんで終いやな。」

 今日は親父が浴場を作るために借りた金を返しに事務所まで来ていた。

 今日は二人の男を連れてきている。

「よっぽど儲かるんだな。売春宿ってのは。」

 ゴブリン退治後に親父は浴場を開設するために、俺から50枚を借りたのであるが、まだ3か月しか経っていない。

「いつの時代でも、どこの国でも、男ってもんはそういうモンやからな。特にこの時代の都市部は流入してくる人間が多いから、女が圧倒的に少ないんや。それに、ワシらに楯突くモンもおらんから、市場も独り占めやしな。」

 大規模なゴブリンの集団を討伐した親父たちは、他の徒党や愚連隊から恐れられ、街の東側ではもう逆らう者はいない。

「それに、現代式の洗体サービスってもの目新しくて、客を呼べてるのもあるしな。」

 親父の浴場では、この世界では珍しい、洗体などのサービスを行っており、評判になっている。

 この洗体サービスについては、病気の感染の予防の意味合いもあるうえ、高価な石鹸を使うということで単価を上げることにもつながっている。

 今後は病気が少ないのも売りになるだろうとのことだ。

「そういえば、徒党のリーダーはイヴァイロって男になってるらしいけど。」

「ああ。助けに行ったけど、ワシが探してた子はもうおらんかったからな。探しに出たりしたいから、別の男をリーダーに据えたんや。なかなか食えん男やけど、実力はあるからな。」

「前に言ってた魔物の女の子のこと?」

「せや。」

 親父は頑なに話さないが、その女の子を助けることが、この世界に呼ばれた目的にも関係あるらしい。

 助けた女の子から聞いたのだが、その魔物の女の子は、墓地に捨てられてから、何故か凶暴化して、ゴブリンたちを殺しながら何処かへ消えていったらしい。

 はじめに200匹と言われていたゴブリンたちの数が少なかったのもそのせいとのことだ。


 親父が連れてきた男に目を遣る。

 まだ、20代前半といったところだろうか?

 どうも、粗野な愚連隊とは違う気がする。

「それで。隣の男は?」

「ああ。こいつはテオドルや。元々、ナンバー2やったんやけど、ワシの付き人にした。今日はちょっと面通しも兼ねて連れてきたんや。」

「また何か企んでるの?その辺のゴロツキには見えないけど。」

「初めまして、テオドル・パロフと申します。お見知りおきを。」

 姓がある。

 貴族か。

「まぁな。テオドルは、トラキア貴族の三男坊や。妾腹やけどな。」

「ゴロツキに交じる気も分からないでもないけど、もう少し真っ当な生き方を考えた方が良いのかも知れないよ。」

 自分とそう変わらないこともあり、つい忠告みたいな言葉が出てきてしまう。

「考えた末です。マサヤ様には新たな道を示していただき、感謝しています。」

「何をする気なんだよ。」

「ちょっと、道を示してあげただけや。」

「傭兵団を作ろうと思っています。」

「イヴァイロんとこも今後、傭兵団を立ち上げる予定なんやけど、テオドルんとこは、ちょっと毛色の違うモンにしたいと思ってな。」

「略奪をしない傭兵団を作りたいと思っています。」

「そりゃ、ウチにパトロンになれってことで良いんだな?」

「いや、別にそれは要らん。ウチの方が稼ぎがエエやろうしな。お前とは気が合いそうやから連れてきただけや。何かあったら、お互いに力になったって欲しいな。」

 ここに来て初めて知ったことではあるが、中世の傭兵に兵站なんてものもなく、略奪しながらでなければ活動することもままならない。

 現代でいう傭兵というイメージよりは、国に雇われることで、正式に略奪権を得る盗賊団と思った方が正しいのかも知れない。

 更に落ちぶれた騎士様も傭兵に混じって略奪をすることも多いと聞く。

 あの親父が裏で糸を引く積もりなんだろうから、騙す気は無いんだろうけど、目的も全く分からない。


 事の発端はテオドルに地方の貴族騎士の家柄であるドゥロ家に婿入りする縁談が持ち上がってきたことにあり、イヴァイロまでの悪行に染まりきらない彼は、愚連隊の中でも少し浮いていたようで、以前から親父に目を付けられたらしい。

 今回、この計画を親父に唆されたということらしい。

 騎士としての立場を利用して、常設軍並みの練度を持ち、略奪は行わず、騎士の立場から国家に帰属する身分を持つ傭兵騎士団の創設、また、それを支えるための領内改革及びトリキア公爵家への影響力の強化なども含めての中長期的な計画を親父から説明された。


 もう一人の男に目を遣る。

 こちらの男は30歳になったばかりぐらいだろうか。

「こっちは、ヴォイシル。」

「始めまして。ヴォイシルです。」

「ヴォイシルには闇市を任そうと思うてるんや。」

「闇市?そこまでインフレとか経済的な混乱もしてないみたいなんだけど。」

 物価統制令は厳しいものの、今のところそこまで問題になってはいないようだが。

「ああ。物価統制がキツ過ぎて、商品の流通が制限されとる。貴族階級にはあんまり関係ないんやが、世情がそれなりに長いこと安定してたこともあって、購買意欲が高まってる。高級品も廉価商品もな。」

 確かに、物価統制令のために、販売できる品目が限られており、ソーセージ類なら豚肉のほか、使用できる香辛料も限られているし、ブラッドソーセージなんかは販売できない。

 物々交換にはうるさくはないのだが。

 ちなみに、ブラッドソーセージや内臓料理は郊外や農村では普通に食べられている。

 高級品と廉価商品は物価統制のため、販売が禁止されているのが現状だ。

 あと、廉価商品に関しては、物価に対して貨幣価値が高すぎるというのも一因としてある。

 また、商品の規格化は物価統制の側面と税制の簡易化の側面を持っており、都市側としてもこれ以上の複雑化は避けたく思っているというのも理由に挙げられる。

 肉に限っての状況かもしれないが、これまで富裕層しか普段の食事には買い求めていなかったが、最近は平民層でも欲しがるぐらい都市全体の景気は良い。

「なるほど。近代的な税制が敷かれるまでは、ついてまわる問題なわけか。」

「まぁ、今のところだけの問題やと思うけど、これはビジネスチャンスやな。」


 うちでは、衛生面や冷却に気を使っていることもあり、傷みにくくて、質が良いということで、一部では評判になってはいるものの、既存の屠殺場には需要も生産量もまだまだ敵わない。

 闇取引でしか販売していないこともあり、正規の価格より若干安くなっている。

 このまま質と評判を保ち、闇市で売り上げることができれば、付加価値のある商品として、販売単価を上げることができるかも知れない。

 そして、ブラッドソーセージは内臓や混ぜものでかさを増やせば、更に廉価で販売できる可能性があり、平民層、もしかしたら貧困層まで買ってくれるかも知れない。

「景気の良いうちに、稼げるだけ稼がないとな。いつぐらいから始めるの?」

「2週間後からや。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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