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ゴブリン退治。蓋を開けると一方的でした。

 それから2週間、親父は顔を見せなかったが、唐突に親父が事務所に来た。

 中綿の少ない安物のソファで顔をつき合わせている。

「すまんが、5・6人体力のあるのを貸してほしいんや。危険な目には遭わせへんから。」

「いったい、何をする積もりなんだよ。」

「ゴブリン討伐の荷物運びに使いたいんや。」

「何でゴブリン討伐なんかするんだよ。」

「ゴブリンを殲滅して、取り返してきた女たちを使って売春宿を開こう思うてる。」

「売春宿?」

「ゴブリンに捕まってた娼婦は30人ぐらいや。それだけおれば、商売を始めるのは十分やからな。」

「何でそんなことが分かるんだよ。」

「見てきたからな。」

「は?」

「ゴブリンの巣にちょっと行ってきたんや。お前から借りたいのは、油と予備の武器の運搬をする人手を借りたいんや。」

「相手は200匹もいるんだろ?どうするんだよ。」

「こっちは、30人も集まったからな。地形も巣も把握してるから、勝算は十分や。」

「本気かよ!?」

「ワシがしょうもない冗談でも言うと思うか。」

「それで、いつ仕掛ける気なんだよ。」

「明後日やな。」

「俺もついていく。」

「構わんで。」



 決行当日、肉屋はペタルに任せ、俺もついていくことにした。

 ほとんど豚の入荷のない閑散期であるため、人手は余っている。

 肉屋からは5人の人手を出し、二人組みで大きなリヤカーを2台引き、残りの人間で交代しつつ、親父の愚連隊の行軍についていく。

 今日のところは晴れているものの、数日降り続いた雪は森に続く草原を真っ白に覆い隠されていた。

 まだ5センチ程度しか積もっていないため、そこまで苦労することはないと高を括っていたが、雪で隠された草が深い場所に入り込み、何度か右往左往することがあった。

 親父たちの方でも、別に2台のリヤカーを引いてきている。

 それぞれ、こぶし大の石と、長い棒に包丁やナイフを括りつけた即席の槍が満載されている。

 それを森の前で30メートルほどの間隔で森の一角を中心に囲うように並べていく。

 森をよく見ると、こちらの平原から一段高くなっており、扇状に開けた平地の中心部分から森の奥に続くような獣道がある地形となっている。

「お前らは、少し離れて待機や。危なくなったら躊躇わんと街まで逃げるんや。」

 そう言うと、今度は親父は先頭に立ち、指示を出す。

「よーし!先発隊はワシと一緒に来い!燻り出すぞ!残りのモンは、投石の準備をしとけ!」

 そう言うと親父は何やら壷を抱えて5人の男を引き連れて森の中へ入っていく。

 しばらくすると、森から煙が上がり、 10匹ぐらいのゴブリンを引き連れて 親父たちが走り出てくる。

 更に親父を追う集団から遅れ、ゴブリンの集団が森から這い出てくる。

 ただし、森から平原に上がる坂道はそこまで広くなく、ゴブリンたちは列を成している。

 ゴブリンのその姿は、まるで餓鬼のようで、腹が膨らみ足は短い。

 餓鬼と異なるのは、短い角と長くて太い腕、それと凶悪な面構えだ。

 足はそこまで速いわけではないらしいのと、成人男性より小柄な体型は雪に足を取られており、親父たちは引き離して俺たちの下に戻ってきた。

「投石開始や!」

 既にコブリンたちを囲い込むように配置された愚連隊たちが麻縄で編んだ投石用のスリングを振り回して投石を始める。

 寒さと雪に足を取られ、足の鈍っている集団は格好の標的となる。

 命まで奪うことができた数はそこまで多くないが、こぶし大の石は確実にコブリンの集団にダメージを与えていく。

 投石に怯みながらも、ゴブリンの集団は奇声を上げて迫ってくる。

 見るからに100匹を超えそうな集団のため、後列のゴブリンにはダメージを受けていないものも見受けられる。

「槍を構えろ!」

 親父の号令に従って愚連隊たちがリヤカーから槍を掴み出して構える。

 三人一組で二人が槍を持ち、一人はそのままスリングを持っている。

 確かに、槍だと距離もとれ、恐怖心が和らぐ。

 また、ゴブリンは飛び道具を使わないため、比較的安心して槍を持った男たちが迫るゴブリンを突いていく。

 槍を持たない者は距離がある場合は投石を行い、距離が詰まってくると、槍を持つ男たちを守るように剣でゴブリンたちを斬っているり

 槍や剣が行き渡らなかった者たちは、専ら投石をしている。

 一方的な蹂躙だった。

 一時間ほどしか経っていないが、もう既に立っているゴブリンは数少なく、掃討戦の様相を呈している。

「そろそろ、巣に向かうぞ!」

 親父は手勢の中から精鋭を選び、ゴブリンの巣に入るために、森に向かっていく。

 親父の武器を見ると、剣に刀身と同じぐらいの長さの柄をつけている。

 長巻の代わりだろう。

 棍のように振り回したり、斬りつけたり、自在に操っている。

 俺たちは、親父が帰ってくるのをリヤカーのところで待つことにした。

 愚連隊の一部は、ゴブリンの死体を切り裂いている。

 魔物には『魔核』と呼ばれるものが存在し、それに魔力を込めると、『魔石』になるのだという。

 『魔石』はこの世界では灯火や魔道具と呼ばれる道具類などに使用するエネルギー資源となっているほか、回復薬などの薬品の原料にもなるらしい。

 また、この『魔核』は、討伐の証にもなる。

 恐らくそれを集めているのだ。


 親父がゴブリンの巣に行ってから何人かの女を連れて戻ってきた。

 歩くのも困難な者もいるらしく、一台のリヤカーを引いて巣に再び向かう。

 助け出した女は25人。

 既に腹の大きくなった女もいた。

 ゴブリンは人間の女に子を孕ませることができるらしい。

 こうして、昼下がりから始まったゴブリン討伐は日が傾く前にすべて片付いた。


 ゴブリン討伐のあと、親父たちは連れ帰った女たちを使って、浴場を経営し始めた。

 浴場といっても、二人が入れる木桶のような浴槽が並んでいるものだ。

 その浴槽で飯と酒を楽しむことができるようになっており、そのまま遊ぶこともできるが、部屋も準備されている。

 間違いなく完全な売春宿だ。

 アウトローの集団ではあるが、大量のゴブリンを退治した功績で街では一端の英雄としてももてはやされるようになった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『エンチャンター(戦闘は女の子頼みです)』 を隔日・交互に掲載しています。 こちらもよろしくお願いします。


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