いつもの日常
こんにちは。
慣れない恋愛を始めます。
よろしくお願いします。
「なぁ?このラノベ、面白いだろ?」
「うんうん!特に後半はとても感動したわ!」
学校の下校中に仲良くラノベの話で盛り上がっている男女。この二人は付き合っているわけではない。
二人は幼稚園からの知り合いで、いわゆる“幼馴染”である。
「・・・・あそこで勇者が・・・・で・・・敵が・・・」
勇者の事に対して目を輝かせて話している17歳の少年の名は『糟柄 ひろき』と言い、見た目は格好よくないが不細工というわけでもなく、普通の標準的な少年である。
上下の黒の学ランに、ボサボサで少し長い茶色い髪を時折風に靡かせながら、まるで無邪気な子供を思わせる表情で手話のように手を動かしながら熱く語っていた。
そのひろきの話を「うんうん・・・うんうん・・・」と首を縦に動かしながら聞いている17歳の少女。
彼女の名は『渦宇志 美恋』と言い、黒い前髪をぱっつんにしており、両耳の前にあるお下げは胸近くまで垂らしている。
少しだけ度が入っている丸い眼鏡をかけており、恋をしているのか、思春期だからか、地味ながらもどこかお洒落には気を付けているようだ。
ひろきの話を聞いている彼女の頬が少し赤い。どうやら恋をしている方が正解のようだ。
「なぁ、美恋。あの次の王国に行く話はどうだった?」
「とても素敵だったわ・・・。勇者がお姫様を救って・・・。ああ、もう!あのシーンは女性にとっては憧れだわ!」
美恋は妄想で勇者をひろきに、お姫様を自分に置き換えて勝手に憧れていた。
「・・・・っで・・・が・・・だと・・・」
ひろきが熱く語っているなか、美恋はまだ妄想のなかにいた。
ー(幕間)ー
「美恋・・・。おい!美恋ってば!」
「ふぁっ!?・・・えっ?・・・ここは!?」
ひろきが美恋の両肩を揺さぶり、美恋が素敵な妄想から帰ってくると、そこはひろきと別れる別れ道であった。
「美恋。ボケ~っとしてると危ないぞ?」
ひろきは美恋の事を心配して顔を近づける。
その時、美恋の心臓がドキリ!と鳴り顔が赤くなる。しかし、ひろきの表情は普通である。
「よし!これで大丈夫!じゃあ、また明日なー!」
ひろきはけっこう離れた場所まで走り、振り返って大袈裟に手を振り大声で美恋に叫んでいた。
「あ・・・。う、うん・・・」
美恋はきょとんとしたまま、小さく手を振りひろきが見えなくなるまで見送っていた。