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メイド人形はじめました  作者: 静紅
魔法学校
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第四十三話 上級貴族なんかと絡んで←フラグ

 昼食後、明日から本格的に始まる授業に備えて予習すると言うオリビアとは別れて職員室へと赴いていた。

「それで、私に何の用だ?」

 暗橙色の髪に切れ長の瞳と言う、温かみと鋭さを絶妙なバランスで備えた男性、Aクラスの担任であるダームエルは椅子に座ったまま俺に向き直る。

「実は折り入ってお願いがあるのです」

 一瞬ダームエルの表情が険しくなる。

「先程の実技テストで使用していた練習場を使わせていただきたいのです」

「そっちか」

「そっちとは?」

「あ、いや」

 尋ねるとダームエルは決まりが悪そうに頭を掻いた。

「オリビアの母親がここの卒業生で、校長が当時の担任だったと聞いたので、それで便宜を図るように頼みに来たのかと」

 ああ、今日のオリビアの成績があれだったから、コネを利用して贔屓させようとしているように思われたのか。

「すまない」

「いえ、こちらこそ配慮が足りませんでした」

 ダームエルの立場からしたらこのタイミングだとそう思っても仕方ないよな。

 俺達は互いに頭を下げ合った。

「それで練習場だが、君が生徒でない以上許可出来ない」

 ですよねー。

 まぁ、予想はしてた。

「そうですか。そう言われては仕方ありませんので、諦めます」

 あちらが正論である以上、ここで食い下がる意味は無い。

 そもそも冷静になってみればいきなりこんな事を頼むのが無茶だった。

「しかし意外だな。メイドが練習場の使用許可を求めるなど、初めて聞いたぞ」

「お嬢様をお守りするのに必要ですから」

 普通のメイドなら戦闘技術は必要無いだろうが、魔法や戦闘はオフィーリアから教わった大切な技術だ。今後も錆付かせたくはない。

 それに上位冒険者を目指すオリビアを守るなら、俺はまだまだ強くならないといけない。

「なら冒険者ギルドの練習場を利用してはどうだ? この街のギルドかなりの規模で、練習施設も充実しているぞ」

「情報感謝します」

 ダームエルに深く礼をして職員室を後にした。

 しかし冒険者ギルドか。また場所を確認する必要があるな。

 近場で練習出来るのがベストだが、しょうがない。

 帰り道、練習場の前を通り掛かった。

 新学期早々という事もあってか、練習場には誰もいない。

 だが誰かが使った後なのか、的が一つ、ポツリと立っている。

「おいおい、誰だよ。使ったら戻さなきゃ駄目だろ」

 でも俺は生徒じゃないからな、石盤操作しちゃいけないしなぁ。

 でもこのまま通り過ぎるのもなぁ。

 ブラックホークが収納空間から出てきた。

 バメルを出てからもう一週間以上経つが、道中は樹海沿いを避けて安全な道を選んだ為、ブラックホークを撃つ機会が無かった。こんなに長く撃たなかったのは転生して初めてだ。

 手に握るブラックホークの重みも久しぶりだ。

「よぉ、相棒。お前も退屈だったろ?」

 うん、これは目の前に落ちてるゴミを拾うようなものだよ。

 誰かさんの崩し忘れも処理出来て、俺は練習出来て、相棒も久しぶりに暴れられる。

 Win-Winじゃん。

 土塊の的に狙いを定めて引き金を引くと、魔力の弾が小気味良い音を立てて的に穴を穿った。

 それを只管(ひたすら)繰り返す。

 ははは、銃撃つのたぁのしぃぃい!

「……」

「?」

 視線を感じて振り返るが、誰もいない。

「気のせいか」

 的が崩れ落ちるまで続けたが、先の視線が戻ってくる事は無かった。







 翌朝、早起きして寮の食堂が開く前に作っておいた弁当をオリビアに持たせようとすると『お昼はナタリアも学校の食堂に来て一緒に食べようよ』と言い出した。

 それ自体は一向に構わないのだ。

 寮にいても部屋の掃除と洗濯を終えれば、家から持ってきた魔道具や素材の整理、魔法や錬金術の練習くらいしかする事が無い。

 ……案外多いな。

 それはそれとして、昼食をオリビアと一緒に食べるのに異論は無い。

 時間通り食堂に向かうとエイミーも合流しており、オリビアは昨日と同じ状態になっていた。

「こりゃまた酷い状態だね」

「ええ」

 今日から本格的な授業が始まったのだが、最初とあって魔法の基礎的な仕組みについてだったらしい。聞けば本当に基礎の基礎で、俺がオフィーリアに教わった内容を多少子供向けに噛み砕いた内容だった。実際に魔法を撃てるなら理解していて当然と言えるものだ。

 先生が時折生徒達を指名して問題を出したが、流石はAクラスだけあって誰一人間違える事無く答えていった。

 うちのお嬢様はと言うと、お察しください。

「お嬢様、顔を上げてください」

「ナタリアぁ、ごめんねぇ」

 顔だけこちらに向けて涙を流すオリビアに軽く引きながらも、カトラリーで料理を切り分ける。

「お嬢様、元気を出してください。食べさせてあげますから」

「元気になりました! ナタリア大好きー!」

 即座に顔を上げて喜ぶオリビア。本当に現金だ。

「ナタリアさんてオリビアに甘いよね」

 まぁ、母親が死んで間もないし、最近まで離れていたからつい甘やかしたくなるというか。

「はぁ、毎日ナタリアが食べさせてくれるのならこのままでいいかも」

「何を言い出すのですか。それではご主人様に合わせる顔がありませんよ」

「それを言われると…」

 こんな言い方は俺としても不本意だが、オフィーリアの事を出されてオリビアの目線が泳ぐ。

「お嬢様、私も可能な限りお手伝いいたしますから、せめて恥ずかしくない程度の成績は取ってください」

「はい…」

 ガクリと項垂れるオリビア。

 勉強を避けたいという気持ちは解るが、魔法学校(ここ)への進学はオリビアが夢に近付く実力を着けるためのものだ。師事出来る身近な人(オフィーリア)が亡くなった以上、他の誰かに教わるしかないのだから。

 にしても入試の成績でクラス分けされた筈なのに、どうしてオリビアはこれでAクラスなんだ?

「見付けたぞ! オリビア・エトー・ガーデランド!」

「あぁっ、お待ちください、マティアス様」

 声の方に目を向けると、仁王立ちする虎半獣人の男の子と、その後ろから追い縋るようなリス獣人の女の子がいた。昨日の実技小テストで好成績を出してた二人か。

「お嬢様、クラスメイトがおいでですよ」

「ん? えーと、同じクラスなのは覚えてるけど、話した事無いよね?」

「その通りだ。私の名はマティアス・フーヤード」

「あ、はい。オリビア・エトー・ガーデランドです」

 名乗るトラミミ少年と、それに応えるオリビア。

 リス娘はここまで走ってきたのか、胸を押さえて乱れた息を整えようとしている。

「昨日からの君の成績、あまりにも酷すぎるぞ!」

「うっ」

 痛いところを突かれたオリビアが歯噛みしながら険しい表情になる。

「失礼とは思ったが少し調べさせてもらった。君の母親はここの卒業生で、有名な冒険者だそうだな」

「そうだけど…」

「あんな成績で、母親に恥ずかしくないのか!」

「ぐっ」

「あの、マティアス様、入学早々騒ぎを起こすのは…」

 マティアスの叱責に、オリビアは反論出来ず唸る事しかない。しかもオフィーリアの事まで持ち出されては尚更悔しいだろうな。

 リス獣人の娘は止めようとしているが、マティアスは聞く耳を持っていない。

「ナタリアさん、止めなくていいの?」

「お嬢様の成績が悪いのは事実ですので、常識の範疇ならお嬢様は甘んじて受けるべきです」

「へぇ、甘やかすだけじゃないのね」

「勿論です。ただ甘やかしているだけでは、私が創造(つく)られた意味がありません」

 オフィーリアが魔導人形(おれ)を創造ったのはオリビアの世話をさせる為だが、決して堕落させる為ではない筈だ。

「全く、君がこんなのでは、母親も実は大した事はないのではないか?」


 ピタッ


 いやいや、落ち着け。

 これはオリビアを叱る上でつい勢いが付いてしまっただけだろう。

 きっと悪気は無い筈だ。

「マティアス、私の事は何を言ってもいいけど、お母様の事を侮辱するのは許さないわ」

 オリビアの声にも怒気が滲む。

「だったらあの醜態はなんだ? それともその母親が賄賂でも渡したのか?」

 マティアスの言葉は俺の限界を軽々と踏み越えた。


 ガンッ


 気が付けば俺は椅子を蹴倒すように立ち上がっていた。

 周囲の視線が俺に集まるが知った事か。

「お嬢様の成績に関してはご本人の責任なので私も口を噤みましょう。ですが、ご主人様への侮辱はお門違いの筈です。取り消してください」

「そ、そうですよ、マティアス様」

「ふん、確か魔導人形のメイドだったか。随分と作法がなっていないようだが、なるほど、粗悪品か」

「あら、言ってくれるわね」

 マティアスの言葉に、オリビアが席を立って口角を吊り上げた。

 その表情を、俺はかつて見た事がある。今のオリビアはオフィーリアが本気で怒った瞬間を髣髴させた。

「そのまま言い放題で終わりだなんて思ってないわよね?」

「だったらどうする?」

「マティアス、貴方に決闘を申し込むわ」

「受けて立つ!」

 静かに燃えるオリビアにマティアスが牙を剥いて吼える。

「時間は今日の放課後、場所は校庭。いいわね?」

「いいだろう。君がAクラスに相応しいか否か、私自身が見極めてやる」

 そう言うとマティアスは、用は済んだとばかりに踵を返し、食堂から去った。リス娘は申し訳なさそうな顔で俺達に頭を下げ、マティアスの後を追って行った。

 後に残されたのは怒りに燃えるナタリアと、騒然となった部外者一同だった。

 えーと、これを治めるのも俺の仕事……かな?

「皆様、お騒がせしました。引き続き食事をお楽しみくださいませ」

 とりあえずそれっぽい事を言って席に着く。

 すみません。これが俺の精一杯です。

「何なのあいつは」

 ドカリと椅子に腰を落としたオリビアがフォークを噛む。

「お嬢様、お気持ちは良く解りますがお行儀が悪いですよ」

 少しでも宥めようと、餌やりを再開する。

「うぅ、おりがと」

 差し出されたおかずに齧り付くオリビアは、ほんの少し眉が下がったようだった。

「久しぶりにオリビアのケンカが見れるねぇ。ちょっと楽しみかも」

「もう、絶対に許さないんだから」

 そう言えば前の学校でもしょっちゅう男子とケンカしてるって言っていたっけ。けれど今回は魔法が主軸になりそうだし、子供のケンカでは済まなさそうなのは心配だ。

「その為にもまず午後の授業を乗り切らないとね」


 バタッ


 あ、轟沈した。

ナタリアが銃を乱射している頃

オリビア(ナタリアが寝てるベッド、ナタリアの服が詰まったクローゼット…勉強に集中出来ないっ!)

同室で生活するようになって今まで以上に意識するようになってしまったお嬢様でした。

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