第三話 初めての夜(意味浅)
魔法練習場を案内してもらった後は家の塀を一周してきた。
疲れ…てないな。
あ、そうか。人形だからそもそも肉体的な疲労が無いのか。
その後はオフィーリアが夕食を作るのを手伝って、一緒に食べて、食器を片付けた。
オフィーリアはする事があると言って私室に戻ったので、俺は自分の部屋で待機だ。
正直言えばこの家の中も色々なファンタジー要素がありそうで探検してみたいが、俺の命はご主人様に握られている。迂闊な事をして機嫌を損ねるわけにはいかない。
なのでひとまず自分の部屋の中を確認してみる。
部屋にあるのはベッド、クローゼット、机と椅子。
簡素ながら過不足無い、使用人の部屋となればこんなもんだろう。むしろ今日の様子だと、必要なものなら頼めば用意してくれそうな雰囲気ですらあった。
「せめて小説とか読むものは欲しいな」
異世界に来たからって、オタクの二次元離れは容易くないのだよ。
「まずこっちの世界の文字覚えねぇと」
あんまり英語は得意じゃなかったけど、娯楽のためには頑張るか。
「さて、何か入ってるのかな」
クローゼットの開けてみるとそこには同じ服がずらりと並んでいた。沢山のメイド服だった。
まぁ、ご主人様ったらなんて用意がいいんでしょ。
嬉しすぎて目頭が熱くなってきたぜ。涙出ねぇけど。
下の引き出しには、わーい、セクシーな下着がぎっしりだ!
前世だったら宝の山だぞ!
今世の俺が着るんだけどな!
絶望に打ちひしがれていると、部屋の扉がノックされた。
誰がなんて言うまでも無い。
「ナタリア、お風呂に入るからその辺りの事も教えるわね。替えの下着を持っていらっしゃい」
「はい、ただいま」
ああ、風呂か。
人形でも入れるんだな。
クローゼットから上下セットの下着を取り出す。上下セットの。これ重要。
俺はまだ女の子に幻想を抱いていたいんだ。自分でそれを壊すわけにはいかない。
脱衣所に行くと、オフィーリアが待っていた。
「衣服はここで脱いで籠に入れておくのよ。洗濯は翌日でいいわ」
「はい」
俺の仕事ですねわかります。
「何してるの、脱ぎなさい」
「へ、あ、はい」
俺は慌ててメイド服を脱ぐ。人工美少女の裸体が再び露わになった。
自分の体、しかも人形だとわかっていても緊張する。
「その扉の先が浴室になっているわ」
「は、はい」
扉を潜ると、真っ白な湯気に包まれた。
浴室は旅館のそれのように広く、浴槽も大人三人くらいは入れそうだ。張られているお湯はピンク色で、入浴剤だろうか、仄かに薔薇の香りがする。
浴槽の脇にはシャワーがある。
うん、もう驚かんぞ。
「このお風呂は家を建てるときに特に拘ったところでね、なかなか自慢なのよ」
「そうだったんで、っ!?」
振り向いた俺の目に飛び込んできたのは、結っていた髪を下ろした一糸纏わぬオフィーリアだった。スタイル抜群の美女が、無防備にその素肌を晒していたのだ。
「どうしたの?」
わかっていたけど、ご主人様は素晴らしいものをお持ちでした。
「いえ、なんでもありません」
罪悪感に苛まれながらも、たわわに実った果実は目に焼きついてしまった。
「じゃあ、使い方を説明するわよ。まずこっちの蛇口を捻って」
「はい」
落ち着け、俺。ガン見してたら変に思われる。
それにあまり取り乱しては童貞丸出しだ。
ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!
心を鎮めろ。精神統一だ。
己の心を細くせよ。
川は板を破壊できぬ。
水滴のみが板に穴を穿つ。
「浴槽に入る前に体を洗うのよ」
「はい」
俺は人形。俺は人形。
オフィーリアがしゃがんで谷間が強調されても動じない。
「どう? 何か違和感とかはない?」
「いいえ、大丈夫です」
俺は人形。俺は人形。
俺は人形。俺は人形。
オフィーリアが俺の体を洗ってくれても動じない。
「いいお湯」
「はい」
俺は人形。俺は人形。
俺は人形。俺は人形。
俺は人形。俺は人形。
オフィーリアのおっぱいが湯船に浮かんでても動じない。
「ふぅ、気持ちよかったわね」
「はい」
はっ、いつの間にか脱衣所に上がってた。
勿体無かった気もするが、あんな嬉恥ずかし天国地獄をまともな精神で乗り越えられるわけが無い!
「ナタリア、少し腕を上げて」
「はい」
あ、体を拭いてもらうの気持ちいい。
その次は下着を着なきゃいけないわけだが。
もう諦めよう。
「よいしょ」
オフィーリアが長い黒髪を襟から出す。
おお、薄紫のネグリジェが艶やかでよく似合う。
「貴女のはこっちよ」
俺もネグリジェですか……
ドライヤーで髪を乾かしてもらって(これも超気持ちよかった)から、この日は寝床に就いた。




